ACT3.日曜日、午後の天神で


「・・・あれ?直井?」

「あ、三輪じゃん。何してんの?こんなとこで」

「ん?買い物。お前は?」

「じゃ、俺も買い物」

「なに、その『じゃ』って」

「いや、買い物だから・・・」

「へえ・・・でも意外。シルバーアクセに興味あるなんて。そういうのは俺の専売特許だと思ってたのに」

「・・・意味わかんねえよ、専売特許とか。っつか、こういうのもたまにはいいな・・・なんて」

「俺お勧めのやつ、教えてやろうか?ごついけど結構良くてさ・・・って、お前、見てるとこ違うよ、ここ女の子用の細いリングしか置いてないコーナーだよ」

「・・・まあ、それで間違いないっつうか・・・」

「いや、男がこの細さはめたら、ちょっと似合わないっつーか、きもいっつーか・・・」

「・・・・・」

「・・・・・」

「・・・・・」

「女の子・・・に?」

「・・・・まあ」

「えーっ!!誰に?なあ、誰にあげるの?」

「それは・・・・」

「いいじゃん、ここで会ったのも何かの縁。YOU、はいちゃいなYO!」

「・・・三輪、バカっぽいぞ」

「いいの、俺バカだから。っつか、教えろよ。そしたら俺も教えてやるから」

「何を?」

「買い物の理由を」

「どうせ藤原さんへの貢物だろ?」

「貢物言うな!!・・・まあ、ホワイトデーのお返しってやつ?バレンタインに素敵なチョコレートもらっちゃったから」

「お徳用チロルの食べかけね」

「そう、ステキな食べ・・・って、何で知ってんの」

「ん?聞いたから」

「誰に?」

「・・・・・さ、ぼ、僕帰ろうかな・・・じゃあね、三輪くん」

「いや、帰らせやしねぇぜ」

「は、離せよ」

「嫌だ。お前が吐くまで離さない」

「やだよ、何でシルバーリングの前で、男同士腕をにぎにぎしなきゃいけないんだよ。きもいって」

「きもくても何でもオッケー。どうして食べかけっていう悲しい事実を知っちゃってるわけ?」

「だから聞いたからだって」

「誰に?」

「それは言えない」

「じゃあ・・・抱きつく。言うまで離さない」

「それは勘弁してくれ・・・」

「じゃあ吐け」

「う・・・」

「さあさあ」

「・・・・」

「おらおら」

「・・・・」

「・・・あと10数えるうちに吐かなかったら、思いっきり抱きつく。10・・・」

「あやのっち!!」

「・・・口割るの、はやっ!」

「だって抱きつく言うから・・・」

「ってか、あやのっちって・・・辻さん?」

「・・・う、まあ・・・」

「あの優等生の?」

「・・・そうかな?」

「お前とはつりあわなさそうな?」

「それは言ってはいけない」

「だってつりあわないもん。絶対に」

「そんなこと言ったら、お前だって藤原さんとはぜーんぜんつりあわないぞ」

「いいの。だってユカちゃんだもん」

「意味わかんねーぞ」

「ユカちゃんは、可愛すぎて可愛すぎて可愛すぎて、誰にもつりあわないから」

「・・・そうですか」

「でさ、そんなユカちゃんに、ホワイトデー何が欲しい?って聞いたんだけど、何だかへんてこりんな返事しかくれなくてさ・・・」

「何て?」

「んー・・・『今すぐ手に入れられるものじゃない』だって」

「・・・なんだそりゃ」

「分かんない」

「金がかかるって事か?」

「んー・・・」

「っつかさ、あやのっちも変なこと言ってたんだよ。『お金じゃ買えないもの』とかって」

「それも意味不明だな」

「だろ?」

「んー・・・」

「んー・・・」

「マジわかんねーな」

「でもさ・・・」

「何よ?」

「もしかしたら・・・って思うものもあるんだけどさ・・・」

「何?」

「いや。でもな・・・」

「言えよ」

「違ってたら恥ずかしい」

「そんな、聞けると思って聞けない俺の身にもなれよ。つか、言いかけたんなら言えよ」
「だから、違ってたら恥ずかしい」

「間違ったこと言って恥ずかしいのと、ここで俺に抱きつかれて恥ずかしいのと、どっち・・・」

「金で買えないっつったら形のないもの!」

「相変わらず、口割るの早っ!」

「だから、それだけお前に抱きつかれるのが嫌なんだって」

「で、形のないもの?」

「っつーか・・・愛?」

「愛・・・か」

「・・・」

「・・・そいえば、ユカちゃんの『今すぐに手に入れられるものじゃない』って、もしかして・・・」

「何?」

「ほら、俺まだ17歳だから・・・」

「・・・そうか、俺もまだ17だ。でも、あやのっちや藤原さんも17で・・・」

「・・・・・」

「・・・・・」

「・・・行く?」

「・・・休みの日でも開いてんのかな」

「多分」

「でも、俺恥ずかしいぞ?」

「俺も恥ずかしい。でも、ユカちゃんの変わらぬ愛を手に入れるためには、是が非でも行かなきゃ行けないような気がする」

「・・・俺も、あやのっちの『永遠の愛』欲しいかも」

「行くか?」

「行く」

「じゃあ、そうしよう」

「2人で行こう」


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