好き rui ***
ねぇ、牧野。
好きって、どんモノなんだろう。
目に見えないものだからこそ、見てみたいって思わない?
触れることができないからこそ、触ってみたいって思わない?
俺の部屋で、唯一置かれている牧野のもの。
それは
牧野の為に買った椅子。
誕生日に何が欲しい?と尋ねたら
「椅子」と返ってきた。
それと
「類の部屋ベットしか座るところないんだもん」
との文句も一緒に。
ベットに座ればいいじゃん、と返すと・・・・・・
「いつも・・・・・・ベットに座るだけじゃすまなくなるでしょ」
ごもっとも。
誕生日に買った椅子に深めに座り、足をぶらぶらと遊ばせている牧野は
だいぶ幼く見えるくせに・・・・・・
ふわりと舞い込んだ風に目を細めるところなんかは
こちらがドキリとするほど、女を感じる。
牧野の椅子は、いつも窓に向かって部屋の真ん中に置いてある。
それは、牧野が俺の部屋でのお気に入りの場所で。
俺にはよく分からないけど、風の香りを楽しむことができるんだそうだ。
椅子は、なるべく部屋の雰囲気に合ったものを選んだつもりだったけど
やっぱりどこかちょっと違っていて。
まぁ、それは見慣れないせいもあるのだろうけど。
第一、椅子だけを見てる時間のほうが断然長かったりするわけで。
椅子に座る牧野は、なおさらこの部屋には合わなかったりする。
けれど
牧野がいないときも、俺はその椅子を動かさない。
なぜならそれは、牧野がそこに座っている様子を想像するのが好きだから。
幼い牧野も。
大人な牧野も。
今日みたいに、風が舞い込んで
おでこをたっぷりと見せびらかして
目を細めながら
それでも、窓に向かって座る牧野を想像(おも)う。
それだけで、俺は────
暖かくなれるんだ。
「何見てるの?」
いつの間にか、俺が寝転んでいたベットまで来て、ふわりと俺の横に腰を下ろす。
牧野の重みで、少し体が傾くのすらうれしい。
一人じゃないって。
牧野が傍にいるんだ、って感じられるから。
「牧野がいないときの、牧野の椅子」
視線を椅子から、牧野へと向けると
ワケの分からない説明に、牧野の顔が固まるのが見える。
くくくくっ。
なんだよ、その顔。
思わず声に出てしまった笑い。
鼻を思いっきり摘まれた。
そっと、牧野の重みが背中に乗る。
牧野を感じることで改めて確認する
好きだ、という想い。
背中にある、牧野の頭の重みや
何にもない部屋での、牧野の椅子
牧野の残していった、残り香にでさえ俺は思い知らされるんだ。
──────こんなにも、こいつを好きだと言うことを。
ゆっくりと起き上がると、そっと牧野の指に触れた。
白い、指。
細い、腕。
人差し指で、牧野の同じ指をなぞる。
ピクリ、と動いた牧野の指。
途端に俺の指に伝わる緊張。
きっと真っ赤になってるんでしょ、あんた。
見なくても、わかる。
好きの形は、牧野の形。
幸せの形も、牧野の形。
「こちらにきたってことは、・・・・・・いいってこと?」
「・・・・・・なにが?」
精一杯の強がり?
ツン、と横を向いた赤い顔。
いいの?そんな口聞いてると、知らないよ?俺。
再び、優しく舞い込んできた風に目を細める牧野。
そっと俺の乱れた髪を、直す指。
そうゆう仕草が、俺をおかしくさせるんだ。
いつも
いつも。
好きの、形。
牧野の、形。
好きなのは、牧野。
牧野、だけ。
俺は、自分でも驚くくらいそっと
目の前に座る、「好き」に触れる。
そうすると、その「好き」が優しさを零しながら微笑んでくれるのを知ってるから。
好き、だけじゃなく優しさにも、触れることができる瞬間────
俺は、牧野を抱きしめる。
好きって気持ちは見ることできないけど
俺は、牧野を見ることができる。
好きってものに触れることはできないけど
俺は、牧野に触れることができる。
あまりにも、近すぎて────
あまりにも、愛しすぎて気づかなかったよ。
ゆっくり体を離すと、そっと牧野の少し潤み始めた瞳を覗きこむ。
そこには俺しか映ってなくて。
うれしくて、うれしくて。
結局、牧野をそのまま押し倒した。
ねぇ牧野?
俺気付いちゃった。
あきれるほど、あんたのことが好きな自分に。
2004,2,14 momota
おまけ
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