好き tukushi ***
いつからだったのだろう。
誕生日に買ってもらった椅子に座ってると
必ず類の視線を全身に受けてることに気づいたのは・・・・・・
あたしは、類の部屋でこの場所が一番好き。
この大きな窓から、いっぱいの風が吹き込む真正面。
春の香り、夏の香り、雨の香り。
風が運んできてくれる、いろんなことを感じられる場所。
椅子を買ってもらったときに、置くならこの場所だ、って絶対譲らなかった。
かなり邪魔だって分かってる。
だから、あたしがいないときは端に寄せといていいよ、って言ったのに。
なぜか、それはいつもここにある。
あたしの代わりに、書類が置いてあったり。
類のメガネと読みかけの本が置いてあったりしてるけれど。
何度か類に聞いたけど・・・・・・
ワケのわかんない返事をするばかりで。
あたしにはちっとも分からない。
そして、今日も・・・
あたしのいない、あたしの椅子?
あたしを、想像してるってこと?
・・・・・・んー。
そう考えると、ちょっとうれしいかも。
椅子をみて、あたしを思い出してくれるんでしょ?
あたしが、類の香りが染み付いたシーツや、類のクセのある字で書かれた走り書きで類を思い出すみたいに。
家にある、類が触れていった全てのもので類を思い出すみたいに。
そっと伸ばされる、類の指。
類?
どうしてそんなに優しく触れるの?
そっと人差し指を伝う、それ。
なんだか、泣きたくなるじゃん。
大事にされてるのを、実感すればするほど泣きたくなるんだよ。
あたしの全部が類で埋まって。
心も、体も類のことしか考えられなくて。
こんなに好きになっちゃって、どうしようって。
ふわりと、類の髪が浮いて、ゆっくりと今までとは違う場所に収まる。
あたしは、そっと類の髪を梳く。
あっさりと通り過ぎた風。
あたしの瞳を少し細めたのと、類の髪を乱していっただけ。
けれども、確実に何かが変わってる。
類の瞳にさっきまでなかった熱が篭ってるのが分かる。
類のキレイなグリーンの瞳に映るあたしは、ちゃんとしてる?
ちゃんと類を幸せにしてあげれてる?
そっと、体をベットに沈み込ませながら
そっと、類の薄茶の髪に指を通しながら
あたしの胸に触れる類の掌に、自分の掌を重ねてみる。
優しく包み込むようにふれるそれは、左側。
あたしの鼓動。
とくん、とくん、とくん、とくん
好き、好き、好き、好き
類が不思議そうな顔で覗き込む。
あはは、中断させてごめんね。
でも、何度好きって言っても足りないから。
全然、足りないから。
あたしが生きてる限り、この鼓動に乗せて届けるよ。
類が好きだってことを。
あたしが生きている鼓動を刻むたびに、一緒に送るの。
好き、好き、好き、好き。
甘い時間を、類のお気に入りのベットで過ごしたあと
ふいに類がそっと何も身に着けていないあたしの胸に耳を寄せる。
「なんか・・・聞こえた?」
「ん。なんか、あんたの鼓動って優しい気がする。ずっと聞いてたい・・・・・・」
途端に、早まった好きのスピード。
いつもより、もっともっと
好きだって、伝えてるの気付いた?
おしまい
2004,2,14 momota
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