*******夢じゃない******** ・・・・・・ 俺はゆっくり目を開ける。 「・・・ここは・・・?」 目の前に広がるのは、一面の海。 蒼く澄んだ水は、見ているものにある種の恐怖心を抱かせる。 「目、覚ました?」 声をかけられ、驚いて隣を見る。 「水に入って遊ぼうって約束したのに、類ったら着くなり昼寝し始めるんだもん・・・」 キャミソール型の、可愛らしい水着に身を包んだ牧野が、頬を膨らまし、少し拗ねた風に言う。 海? 遊ぶ? 昼寝・・・? 寝ぼけた頭で状況を整理する・・・・ 「えっと・・・牧野が・・・」 「・・・牧野?」 俺の顔を覗き込み、楽しそうに笑う。 「牧野って呼び方・・・久しぶりに聞いたよ。類、夢でも見てたの?」 寝ぼけちゃだめだよ・・・と、俺の額をぴしゃっと叩く。 未だ状況把握を出来ずにいる俺に、牧野が言う。 「あたしたち、新婚旅行に来たんでしょ?フィジーのプライベートビーチ貸切で。 仕事忙しかったから仕方ないんだけどさ、類ったら飛行機の中でも、ホテル着いてからも 時間さえあればずっと寝てて、あたし淋しかったんだからね・・・・・」 淋しそうな顔をして、俺の首に腕を回す。 「・・・ごめんね」 牧野をそっと抱きしめる。 「・・・許す」 派手な音をたてて、俺の頬にキスをした。 そうか・・・・ いつの間にか、たった一つ欲しかったもの、手に入れてたんだ・・・ あきらめかけていた夢。 たった一つの願い。 ねえ神様、これは夢じゃないですよね? 夢じゃありませんように・・・ もし夢ならば、どうかこの夢が覚めることがありませんように・・・・・ 次のページへ