ホント、この女は急に何言い出すか分かんねぇ
なんで俺が自分の家の庭で昼飯食わなくちゃなんねーんだ?

天気がいいからと言うつくしに押し切られて、内心ブチブチと文句を垂れながらも
道明寺邸の広い庭の片隅で彼女お手製のお弁当を平らげる司。
もうお腹いっぱいと横になってしまったつくしを横目に司は食後のお茶を飲んでいた。
司にしてみれば、彼女とならどこで食事しても楽しいのだが、やっぱり滅多に食べれ
ないだろう、豪華なランチでもご馳走してやりたいのが男の見栄である。

まぁ、それがこいつのいいところなんだけどな

司は仕方なく自分を納得させて、話の本題を切り出す。

「なぁ牧野。今までいろいろあったけどよ、晴れておおぴらに付き合えるようになった訳
 だし、なんつーか・・・もうちょっと俺達も進展してもいいよな?」

「う・・・ん・・」

「だから・・だから今度の週末にでも遠出っていうか、旅行っていうか・・。
 お・・俺は別にいいんだけどな!お前がどーーしても行きたいっていうなら連れて行って
 やってもいいって思ってよ!」

「・・・」

「ホント俺は別にいいんだぜ!行かなくても行ってもどっちだってよ!」

念を押す司。下心みえみえだが自分では気付かない。
司は、真っ赤になりながらつくしの答えを待つ。しかし一向に返事がない。待ちきれなくて、
横になった彼女の顔を覗き込んだ。



「!!!」

・・・寝るか・・?・・・普通この状況で・・・?

一気に頭に血が上る。

「コラ!てめぇ起き・・・・」

と、怒鳴りかけた時、つくしの唇からスゥーっと柔らかい息が漏れた。


ほんのりと赤みかかった頬
額になびく細い髪
幸せそうに弛ませた小さな唇


「〜〜〜〜〜〜っ!」


完敗だ


多分、ずっとずっとこうして
お前に振り回されて毎日過ごしてくんだ

笑顔が嬉しくて
寝顔にまどろんで
拗ねたお前に慌てて

一喜一憂する俺に呆れるほど気付かないお前

そして、また惚れちまう


「ったく、襲うぞ。」

鼻を摘むが全く起きる気配がない。諦めて溜息。仕方なくふて寝。
隣の安らかな彼女の寝息を聞きながら、司はゆっくりと目を瞑った。



さむ・・・

つくしは目をゴシゴシと擦り起き上がった。どうやらいつの間にか眠ってしまったらしい。
頬を撫でる風がすっかり冷たい。緑の葉をつけ始めた木々がポカポカの陽射しを遮っていた。

「道明寺?」

横を見ると、両腕を枕代わりにして顔に帽子をのせたまま眠っている。
顔が見えない。少し寂しい気分。そっと彼の髪に触れてみる。
すると、気配に気付いたのか不意につくしへと顔を傾け、帽子が落ちた。大好きな顔が覗く。

何の夢を見てるのかな?

守りたい彼の眠り。
つくしは司を起こさないようもう一度寝転がり肩を並べた。
少し触れた肩が熱い。顔が火照る。

つくしは静まるよう口元に人差し指を当てた。



騒ぎ出した胸の音が、彼を起こしてしまわないように・・・・


    
  






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story: しぃ〜お昼ね

作: くうかさま