「・・・・すっごーいっ!」

 つくしは歓喜の声をあげ、一目散に走り出す。
 
 「こんなにたくさんのひまわり、見たことなーいっ!」

 「花は逃げねぇから慌てんなっ!そんなに急ぐとこ・・・・」

 『こけるぞ』と司が言うより早く、派手な音をたててつくしが転ぶ。

 「・・・・・」

 「慌てんなって言ってんのに・・・」

 司はつくしの元まで走り、未だ起き上がれずにいる彼女を助け起こす。

 「大丈夫か?・・・・って・・・」

 起き上がったつくしの顔を見て、司は大笑いする。
 勢い余って顔からいったのか、つくしのそれは泥だらけだ。

 「・・・すげー顔。女じゃねぇな・・・」

 目に涙を浮かべながら、司はポケットからハンカチを取り出す。
 
 「そんなに笑わなくたっていいじゃない・・・」

 大人しく顔の泥を拭かれながら、つくしは頬を膨らます。

 「だってすげー面白い顔してんだもん・・・ほら、取れた」

 泥をすっかり取った司は、もういいぞと微笑む。
 膨れていたつくしも、にこやかに礼を言う。

 「今度は転ぶなよ」

 懲りずに走り出すつくし。
 声をかける司に、『合点承知!』とつくしが元気に言う。



 元気に走り出すつくしの後姿を見つめながら、司は思う。

 これからも、ああやって突っ走る牧野の後を、俺は追いかけるんだろうな・・・

 と。

 つくしが太陽なら司は向日葵。
 元気な太陽を、いつも追いかける向日葵。

 でも、それでいいと司は思う。

 あいつが元気な時も、辛い時も
 嬉しい時だって悲しい時だって
 すっと手を差し伸べることができたなら
 俺はそれでいい
 




 「道明寺っ!早くおいでよーっ!」

 満面の笑みを浮かべ、手を振るつくしに、司も手を振り返す。

 「今行く」

 つくしの笑顔を心に焼き付け、司は走り出した。



               **********fin********** 

ひまわり

…ある夏の思い出…

作: ポンさま