港の見える小さな公園。
一陣の北風が通り過ぎた。
・・・くっしゅん・・・
「おまえなぁ・・そんな格好でなにやってんだ・・?」
「だって、こんなところに来るって思わなかったんだもん。」
だいたいどこに行くかあんたが教えてくれないから・・
いつも、気まぐれなんだから。
「コートくらい、買ってやるって言ってんだろ・・?」
「いいよ・・自分で買うから。」
そりゃ、あたしだって新しいコートがほしい。
でも、あんたが買ってくれるのなんてゴメンだ。
どうせ、あたしにはよくわからないすごいブランドだったりするんだから・・。
・・・・・・・
「こっち、来ていい・・よ。」
「・・・・・。」
「こっちに来いって・・。」
「・・・え・・?」
「いいから、こっち来いって・・ゆってんだろ!!」
腕をつかんで引き寄せる。
思わず、身体を固くする。
「ちょ・ちょっと・・・。」
「ん?なんだ・・?」
「誰かに見られたら・・どうするの?」
「見たい奴には見せておけ・・。」
「・・で・でも・・。」
「気になるか・・・じゃ、こうしよう。」
コートの中にすっぽりと包み込まれる。
「ど・どうみょうじ・・。」
うろたえて声がうわずる。
「これで。見えねーぞ。」
コートの中にはアイツのコロンのにおいが充満していて・・。
「・・・・・。」
あたしの鼻腔を刺激する。
「・・・バ・バカ・・!」
心臓がバクバク騒ぎ出す。
でも、あったかい・・・
何か安心してしまう自分がいる。
「・・・・・・・かもな。」
道明寺がなにかつぶやく。
「・・え・・?」
見上げると真っ赤になったアイツの顔がある。
「コートが無いのも・・いいかも・・な。」
あたしと眼をあわさないようにして言う。
「こうやって・・くっついてられっから・・・。」
「・・・・ばか・・・・。」
あたしにも、アイツの赤面が伝染した。
story: ふたりだともっとあったかい