sweetberry監督のガッツポーズが出た所で、出演者や関係者の大きな拍手が起こる。


 そう、ここは高い動員数をマークし続けた、舞台「Air」の現場だ。
 明日千秋楽の「Air〜第六楽章」。
 本日の舞台が、たった今終わった。
 私―――駆け出しリポーターのポン子は、すかさず監督のもとへと走る。
 もちろん、取材許可は下りている。





 ポン子(以下):「監督、お疲れ様でした。」


      

 sweetberry監督(以下):「え?ああ、ありがとうございます。これ、取材ですよね?」

 (確認してから出演者を手招きする)

 :「せっかくだから、彼らにもインタビューしていきなよ。」

 :「え、いいんですか?ありがとうございます!」

 (ポン子感激!!)
 わらわらと集まる出演人達。
 憧れの彼らを目の前に、緊張し、固まるポン子。

 :「Airの取材だよ。質問にはちゃんと答えること」

 :「そいえば、原作者がその辺うろついてたよ」

 :「ほんと?ポンちゃんが?ちょっと探してくるよ」

 監督退席。
 いきなり焦るポン子。

 :「レポーターさん、そんなに緊張しなくてもいいから。
           ほら、落ち着いて落ち着いて・・・」

 :「は。はい・・・・」

 :「そういえば、花沢類と道明寺は?」

 :「司は控え室にいたよ。なんかぶつぶついいながらタバコ吸ってたけど」

 :「花沢さんも一度控え室に戻られましたよ。服着てくるって」

 そうこうするうちに、sweetberry監督と原作者ポンさん登場。
 後ろには、ふてくされた表情の司さんと、寝ぼけ眼の類さんも。

 :「何でいきなり寝てんの?!今日取材あるって言ったでしょ!!」

 :「だって、最近撮影ばっかで昼寝してないんだもん・・・」

 :「あんたも!呑気にタバコなんて吸ってる場合じゃないでしょ?!」

 つくし顔負けの飛び膝蹴り炸裂。
 ポン子、時計を確認。取材時間はあと10分しか残っていない・・・

 :「あの・・・盛り上がってる所申し訳ないんですが・・・時間が・・・」

 :「あ、ごめんなさい。じゃあまず1人ずつ挨拶」

 一同整列。

 :「牧野つくしです。最終章では、道明寺と花沢類の間で揺れる気持ちを、
    皆さんが共感できるように精一杯演じたいと思います」

 :「牧野一筋です。実生活でもそうです。」

 :「なんつー挨拶よ・・・」

 がっくりうなだれる

 :「ってか、何で俺が振られる役なわけ?ふつー考えたら、類が振られ役だろ?」

 ポン(以下):「それじゃ王道すぎてつまんないじゃん」

 :「そういう問題か?」

 :「そういう問題」

 :「・・・でも、司はまり役だったよね・・・(小声)」

 司、滋を睨む。
 :知らん振り。

 :「まあまあ・・・俺の見所は、5章の桜子助けるところかな?
    自分で言うのもなんだけど、ホントいい男だよね、原作と一緒で」

 :「・・・着替え、西門さんがさせるって聞かなかったそうですね。
    お陰で、見られなくてもいい乙女の肌を、人前に晒す事になっちゃいましたよ」

 :「別にいいじゃん。減るもんじゃないし」

 :「・・・スケベ」

 監督・作者大笑い。
 
 :「まあまあ、続きを・・・」

 :「今回、珍しくあきら活躍してたよね」

 :「珍しくは余計だろ!」

 :「でもね、美作さん優しいから、凄くやりやすかったんだよ。
    寝てばっかの誰かとか、何かとすぐ切れる誰かと大違い」

 :「寝るのは仕方ないでしょ?」

 :「いや、そういう問題じゃないだろ?」

 :「あの・・・そろそろ時間が・・・」

 :「ごめんなさい。ほら、まとめるよ!」
 
 :「お話は、類さんがトパーズの箱に手を伸ばすところで幕が閉じるのですが、
    皆さんの予想・・・特に、作者のポンさんの考える『続き』というのは、どんなものなのですか?」

 :「絶対入ってない。当たり前でしょ?」

 :「入ってるに決まってんだろ?牧野が類を選ぶかよ?」

 :「・・・入ってたとしても、あんたあたしの婚約者なんだからね」

 :「・・・・・」

 :「ま。俺達にはどっちでもいい話だしな」

 :「おまえ、相変わらず冷めてんな・・・」

 :「作者のポン子さんはどうなんですか?」

 :「あたしというより・・・ほら、つくし言っていいよ」

 :「え・・・」

 戸惑いを見せるつくし。
 その様子を見て、肩を震わせて笑う監督と作者。

 :「入ってないんでしょ?」

 :「入ってるよな?」

 :「実は・・・」

 一同、息を飲む。

 :「同じ会社に、好きな人いるんだよね。生活レベルも一緒で、F4くらいかっこよくて」

 


      



 :「だから、トパーズは勿論箱に入ってるし、道明寺の事もすっかり吹っ切れてるの」

 類・司・呆然とする。
 驚きを隠すためか、司タバコに火をつける

 :「ここ禁煙」

 :「・・・ってことだけら・・・みんなゴメンね」

 てへへ・・・と笑うつくし。
 出演者一同呆然。
 監督・作者大爆笑。
 ポン子、なす術なし・・・・・


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 「うわぁっ・・・・・!」

 自分の叫び声に驚いて、がばりと身体を起こす。

 「あ、花沢類起きた?」

 「ちょっと牧野どういうことだよ?司でも俺でもない、他の男を好きになったって?!」

 制服姿の牧野の肩を掴み、何度もゆする。
 ・・・・って、制服姿って・・・?

 あたりを見回すと、変なレポーターも、司達の姿もない、いつもの非常階段。
 あれ、いつから寝ちゃったんだっけ・・・?

 ぼんやりする頭を2.3回振る。

 「なに?変な夢見てたの?」

 痛いよ・・・と苦笑しながら、俺の手を外す。
 
 「だからうなされてたんだ。花沢類にしては珍しかったから、思わずじーっと見ちゃった。」

 そういえば、額にうっすら汗が浮き出ている。
 ・・・起こしてくれよ。

 「で。どんな夢見てたの?」

 「・・・教えない」


 いじわる!と頬を膨らます牧野。
 やっと戻った、日常。







          




 良く晴れた11月の空。
 あれはきっと
 いつまでも煮え切らない俺に、業を煮やした神様が見せた
 秋の白昼夢。







        





 おわり。
 

 
 

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類は大きく深呼吸してから、サイドテーブルに手を伸ばした・・・・・