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 Air 
  〜Farewell〜
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ママが一枚の写真を持って、部屋へやって来た。
 
『お見合い?いいよ、お見合いしても。ついでに言うと、よっぽど人間離れした人じゃなきゃ、結婚も大丈夫だよ。
離婚なんてことも言い出さないし、子供もちゃんと作るから』

彼女が口を開く前にそう言った。
 
『あなたいつもそう言って・・・一度くらいきちんとお相手の写真見たら?
結婚するなんて簡単に言うけれど、きちんと幸せにしてくれる相手を自分で選びなさい』

いつもと同じ、一字一句違わず、ママは言う。
きっとしかめ面してる。
見なくたってわかるんだ。

『お見合いしても、いつも勝手に断っちゃうのはママの方でしょ?あたしは本当に大丈夫だから』

沈黙。
この後決まってママはこう言う。

『滋も女の子なんだから、少しは結婚に対する理想もあると思うのだけれど・・・』

そして、肩を落として部屋を出て行くのだ。


親不孝・・・と思わないわけじゃないけど、こればかりは仕方がない。
あたしだって、本当に好きな人と結婚できるんだったら、色んな理想もあるけれど。

それは叶わぬ夢だってわかってるから・・・







だから、あたしは『結婚』を夢見ない


























         


「結婚・・・・・か・・・・・」

読んでいた雑誌をめくりながら、あたしは軽くため息を吐く。
得意先からの帰り、予定より早く仕事が終わったため、最近お気に入りのカフェに寄り、一息ついていたところだ。
飲み始めたばかりのカフェラテを、ストローでかき回す。

『理想の結婚相手とは』
『必ずどこかにいる!あなたの運命の人』
『今季の恋愛運を四柱命で占う!』

結婚ブームなのか何なのか、最近このテの記事が多い。
なるべくこの二文字と関わりあいたくないと思っているあたしとしては、なかなか辛いところである。
そーいえば・・・出かけにママに言われたっけ。

『あなたがそう言うから、本当にお見合いのお話、一週間後にお受けしたからね。仕事全部キャンセルしておきなさい』

結局、写真は見なかったっけ・・・
どんな顔してるんだろ・・・と想像してみるけれど。
『その人』が来るなんてこと、ありえないのだから・・・・・
無駄無駄・・・と、首を振る。

 
「・・・何百面相してんだよ・・・?」

 
突然、頭の上から声が降ってきた。
驚いて顔を上げると、見慣れた懐かしい笑顔がそこにあった。


「・・・あきら!?」

久しぶりだな・・・と、正面の席に腰を降ろす。
ウェイトレスに「アイス」と告げると、ニヤニヤとあたしの顔を眺める。

「・・・何?」

なんだか・・・不気味だ。

「滋・・・結婚すんだって?」

なんだ・・・その話か。

「結婚・・・じゃなくてお見合い。誰に聞いたの?」

雑誌を閉じながら、軽くため息を吐いた。
久しぶりに会った友人の口から出た最初の言葉が、これ・・・・・

「誰って・・・んなの本人に決まってんだろ?」

「・・・本人?」

顔をしかめる。
そういえば、顔はおろか、名前すら知らなかった・・・相手の。

「・・・おまえ、本気で言ってんの?」

さすがのあきらも顔を蒼くする。
ゆっくりとうなずくと、その蒼さが増した。
・・・そりゃそうだよね、普通、結婚するかもしれない相手の名前も知らないなんて、ありえないよね。

「・・・興味、ないからさ・・・」

「・・・・・・・・・」

絶句。
例えばあたしが他の人で、あきらがあたしだったら・・・ん?訳わかんない?
これが自分じゃなかったら・・・きっとあたしも絶句してた。
でも優しいあきら。
物分かりの良いあきら。
 
「・・・柏崎さんっていう、28歳の銀行マン。ってもT銀行の頭取の息子さんだけど」

「ああ・・・今すごいよね、T銀行。こんな不況なのにさ、M証券吸収合併しちゃったし」

「うちとも取引あって、歳も近いし、結構懇意にしてもらってるんだよ。好青年だよ、背も高いし、顔もいいし。
  まあ、俺には負けるけどな」

「1人で言ってなよ・・・」

冷たいこと言うなよ・・・と、あきらが苦笑する。

「・・・で、あたしはその人とお見合いするんだ・・・」

 氷が溶け、薄くなったカフェラテを一気に飲み干す。
 水っぽくて、美味しくない。

「・・・次の仕事あるからさ、行くね」

雑誌を手に、立ち上がる。
別に時間がないわけじゃなかったけれど、もうこの場所には居たくない。
あきらが悪いわけではないけれど、お気に入りのカフェは、もう二度と来たくないカフェへと変化してしまった。
 


 

普通の家庭ならともかく『大河原家』に生まれた以上、『結婚』が個人の問題じゃないってこと、小さな時から叩き込まれてきた。
家と家を結ぶ大切な『絆』、それを守るのは、あたしの義務。

子供が親を選べないように、あたしは自分の相手を選べなかっただけ。
いや、選ぶ価値がない。
ただ、それだけ・・・・・




   










あきらと会ったことが災いしてか、その日から、仕事はもちろん、何をする気力も湧かない。
仕事を全てキャンセルし、部屋でぼんやりと過ごす。
さすがのママも心配なのか、用もなく部屋を何度も覗く。
心配してくれるのはありがたいけど、少し・・・・・迷惑だ。




♪.・¨♪¨・.♪.・¨♪¨・.♪.・¨♪¨・.♪.・¨♪¨・.♪



携帯電話が鳴った。
今流行の、『HOKUTOのきのこ』のテーマ。
みんなバカにするけれど、可愛くて結構好きなのだ。

・・・・・出たくない・・・・・
そのまま放っておく。


♪.・¨♪¨・.♪.・¨♪¨・.♪.・¨♪¨・.♪.・¨♪¨・.♪


なかなか鳴り止まない。
・・・しつこいなぁ・・・


♪.・¨♪¨・.♪.・¨♪¨・.♪.・¨♪¨・.♪.・¨♪¨・.♪

 
「・・・ああっ!」

むしゃくしゃしながらも、着信を確認する。

『司』

ディスプレイに浮かんだその文字を見るなり、反射的にカレンダーを見る。
お見合いは・・・・もう明日だ。
出たくないけれど・・・・・

「・・・もしもし」

『でれるんだったら早く出ろよ。お前失礼だぞ』

久しぶりに聞く、懐かしい声。
・・・大好きな・・・声。

「・・・ちょっと手が離せなかったんだよぉ。仕方ないでしょ?!」

いつもの調子で、軽く返す。
それが今は少し・・・辛い。

「で、何の用なの?滋ちゃん、これでも忙しいんだけど」

嘘。
でも、嘘でも言わなきゃ・・・部屋で沈んでたなんて言ったら・・・沈んだ気持ちのまま、浮上できない。

『嘘つけ。仕事全部休んでるんだろ?今日お前のオフィス行ったら、秘書っぽい奴にそう言われたぞ』

秘書っぽい・・・ってか、秘書なんだけど。
あいつ、友達が来たら『急な出張で日本に居ない』って伝えろって言ったのに・・・
バカな秘書は使うべきではない。
仕事に復帰したら、即クビ決定。
 
「・・・ちょっとね、うら若き乙女だから、悩み事なんかもあるわけよ」

ははは・・・と笑う・・・が。

『・・・見合いのことか?』

司のその一言に、体が動かなくなってしまった。
どうして知ってるの・・・?
それは愚問だ。
あきらから?いや、きっと本人から。
T銀行は、確か道明寺とも提携していたはずだ。

『見合いのことは本人から聞いたんだけど、お前の様子はあきらから聞いた』

あたしの様子・・・
お見合いする相手の名前も顔も知らなかったこと。
『興味ない』の一言で、全て片付けようとしていたこと。
叶うはずのない相手に・・・・・今でも未練を持っていること。

『・・・嫌ならする必要なんてないんじゃないか?』

「・・・え?」

『だから、結婚したくない相手と、見合いなんかする必要ないだろ?』

頭がぼやける。
司の声が、近くて遠い。

・・・コノヒトハ、イッタイナニヲイッテイルノダロウ・・・

『ホントの相手なんて、絶対そのうち出てくるわけだしさ、焦る必要もないだろ』

・・・体の底から怒りが込み上げる。
手が、肩が、体が震え出すのをとめられない。

・・・何故、この人がこの言葉を言うんだ・・・
一番、言っちゃいけないのに・・・・

「・・・・・・・」

司の言葉に、答えることができない。
手をぐっと握り締めたまま、涙が零れるのを必死で我慢する。

『・・・?おい、滋?』

「・・・・・で・・・」

『は?聞こえてんのか?返事くらいしろよ』



「・・・なんで司がそんなことゆーのよっ!」  

 
  
我に返った時にはすでに遅かった。 
電話口に向かって、ありったけの声で叫んでいた。
 
「なんで?どうして?人が必死になって忘れようとしてること、どうして生し返そうとしたりするの?
あんた、自分で何言ってるのかわかってる?」

・・・ダメだ、止まらない。
長い間、無理して溜め込んだ気持ちが、小さな隙間から一気に抜け出そうとしている。
もう・・・止められない。

「自分の結婚相手に興味ももてないのにお見合いするなんて、どうかしてるって思ってるんでしょ?
でもね、あたしだってホントはそんなことしたくないよ。でもしなきゃいけないんだから、仕方ないじゃないか・・・」

苦しくて苦しくて、吐き出してしまおうと思い続けていた。
でもそうしなかったのは・・・できなかったのは、司の困った顔を見たくなかったから。 
あたしが気持ちを打ち明ければ、きっと心を痛めるから。
司があたしに振り向くことは、絶対に不可能だから・・・・

「あたしは司が今でも好きなんだよ・・・でも、あんたは絶対あたしを見てくれない。わかってる、今でもつくしが忘れられないんでしょ?
だったら・・・あたしが司を諦めるしかないじゃん。諦めるには・・・結婚でもしなきゃ無理だよ・・・・」

 『・・・・・・・』

「それなのに・・・・・どーして引き止めようとしたりするんだよ・・・・・そんな優しい言葉かけられたら、また諦められなくなるじゃないかっ!
 振り向いてもらえないなら、気を持たせるようなことしないで。優しくしないで」

『・・・・・・・・・』

司は何も言わない。
・・・ううん、言えない。言えるはずがない。

「司はいいよ。優しい言葉かけてやって、自分はいい事したって自己満足に浸れるんだから。
 でもね、やられる方はたまんないよ。蛇の生殺し。いっそ殺してくれた方が楽だよ」

『切』ボタンを押す。
普通の電話だったら、受話器を投げつけて思い切り切りたいところだけど、携帯電話じゃそうはいかない。

「・・・・・・・・」

電話を床へ放り投げ、ベッドにうつぶせに倒れる。
枕に顔をうずめる。
とうとう流れ出してしまった涙は、枕へ吸い込まれていく。
 
涙は流しても・・・・・あたしは泣かない。
バカでどうしようもないほど気が利かなくて、それでも大好きな奴のためになんか、泣いてやらない・・・・・













いつだったっけ
もう、かなり前の話 
司とつくしが別れた頃の話

つくしが類くんを
『空気』
と例えた話を聞いた

存在感無さすぎ!

あの時はそう笑ったけれど
今は類くんが羨ましい



いつでも司の傍に居られる

『空気』になりたかった・・・・・
















 

夜通し涙を流し続けた目は真赤に晴れ上がり、パパとママを驚かせた。
理由をしつこく聞かれたけれど、ただ、黙って首を振るだけ。
柏崎さんとやらとの待ち合わせ場所は、よりによってメイプルホテル。
あたしのウサギ目は・・・・・・きっと治らない。

 




「あなた、本当に大丈夫なの?そんな真赤な目をして・・・・・一体何があったの?」

ロビーについても、ママはそう尋ねることをやめない。
いい加減、うんざりする。

「・・・・・どーでもいいでしょ・・・お見合いすっぽかしたわけじゃないんだから、あんまり目くじら立てないでよね。
他のお客さんの迷惑になるから、静かにしてて。うるさいよ」

らしからぬあたしの物言いに、ママは目を丸くする。
申し訳ない・・・とは思うけれど、限りなく鬱な自分を、うまくコントロールできない。
昨日あれだけ涙を流したのに、ふと気を抜いたら今でも流れそうで・・・それがまたあたしを鬱にさせる。

 


電話を切ってから、司はどう思っただろう
・・・ううん、どう思ったっていいや
 
押し殺してしまった気持ちをぶつけた瞬間に、あたしたちは終わったのだ 
始まってもいないのに『終わった』というのもおかしいけれど、確実に終わったのだ
もう、恋人同士はもちろんのこと、今までの関係にすら戻れないだろう・・・・・
 
「・・・滋、柏崎さんがお見えになりましたよ」

ママの声も、右の耳から左の耳へと素通りする。
言われるがままに立ち上がり、お辞儀をする。



 
あたしは、どうするべきだったんだろう
このまま気持ちを隠し続けて、『友達』として側に居続けるべきだったのか
それとも、気持ちをぶつけて関係を絶ってしまうべきだったのか

今となってはどちらが良かったのかなんてわからないけれど
ただ言えるのは
もう司には会えない
たとえ会ったとしても、今までのようにじゃれあったり出来ない

それがちょっと・・・・・悲しい




 
「・・・げる、滋・・・」

ママの声にはっと顔をあげる。
気がつけば、何時の間にかホテル内の割烹料理店のお座敷に座っていた。
目の前に出された料理にも、ほとんど口がつけてある。
・・・・・無意識って怖い・・・・・

「・・・本当に、この子ったらずっとぼんやりしていて・・・」

すみません・・・と、ママが先方に頭を下げる。
目の前に座る男性に視線を移す。
ふと目が合う。
彼・・・柏崎さんは、少し照れた様子で、にこりと微笑んだ。
・・・あきらの言ってた通りだ。
座っていても背が高そうだとわかる。(座高が高いだけだったら幻滅だ)
優しそうだし、爽やかな笑顔がとても好印象だ。
だけど・・・・・あの4人には勝てないだろう。
 
「では、あとは若い2人にお任せして、私達は退席しましょう」

お見合いの決まり文句。
ママの言葉で、相手の母親らしき人とママ、仲介人らしき人が出て行った。

「・・・・・・」

「・・・・・・」

沈黙。
話す事なんて・・・・・ない。

「・・・僕達も、外に出ましょうか?」

黙ってうなずいた。









「司君やあきら君から、あなたのお話は聞いていました」

ホテルの中庭。
和室のお客様向けに、きちんと日本庭園まであるのだ。 
さすが・・・・・楓さん。
お客様のニーズに完璧に答える・・・・

「そう・・・ですか」

曖昧な返事。

「ものすごく元気な子で、一緒にいると疲れる・・・なんて言っていたけれど、そんなことないですよね。
 おしとやかで、清楚で、素晴らしい女性です、あなたは・・・・・」

・・・ありがと・・・
でもね、フツウのあたしじゃないんだよ、今は・・・・・

「初めてお会いして、こんな事言うのもどうかと思うのですが・・・・・」

柏崎さんが足を止める。
仕方なく、あたしも止まる。

「あなたさえ良ければ、このお話お受けしたいと思っているんです」

「・・・・・・・・・・」

「家柄はもちろん問題ないし、これでも長く営業方面の仕事に携わってきましたから、人を見る目に自信はあるんです。
 あなたとだったら、この先幸せな家庭を築けると思うんです」

「・・・・・・・・・・」

「滋さん、あなたは・・・・・どうでしょうか?」

「・・・・・・・・・・」

「僕じゃ・・・・・不満ですか・・・?」

・・・・・・・・・

あたしは・・・・・あたしは・・・・・

 

「・・・あれ?」


 
柏崎さんがあたしから視線を移した。 
つられてあたしもその方向を見る。



「・・・・・!」











        





「あれ?司君?どうしてここに・・・って、メイプルホテルにいて、それは愚問だよね。仕事かい?」

突然木の陰から姿を現した司は、柏崎さんの問いかけには答えず、あたしを凝視する。
 
「・・・・・司君?」

あたしを見る司の視線に気付き、柏崎さんの声が変わる。
 
「・・・・・滋」

一歩一歩、ゆっくりと近づく司に、あたしは身を固くする。
何をしに来たんだろう。
あたしを・・・・・ふるつもり?
『お前の気持ちには応えられない』なんて、この場で言うつもり?

「・・・司君・・・」

『俺の代わりに、柏崎さんに守ってもらえよ』なんて、言うつもり?
人をバカにするのも・・・・・いい加減にして欲しい。

 
「・・・行くぞ」

あたしの肩を力強く抱くと、強引に歩き出した。

「・・・柏崎さん」

数歩歩いた所で、突然立ち止まる。
ただ呆然とする柏崎さんを振り返り、司が言った。

「ごめん、あんたにはこいつ渡せねーわ。バカで大食いで後先考えずに暴れて、どうしようもない奴だけどさ。
 ・・・・・あんたに渡すには、ちょっともったいないんだよ」

じゃあな・・・と、司は再び歩き出す。
司の言動がさっぱり理解できないあたしは・・・・・ただ引っ張られていく事しか出来なかった・・・・・・・















「・・・・・・・・・・・・」

「・・・・・・・・・・・・」

長い沈黙。
日本庭園から暫く歩くと、ホテルの屋外プールに出た。
季節外れのプールには誰もおらず、時折冷たい風だけが吹き抜けてく。

「・・・・・」

フェンスにもたれた司は、内ポケットからタバコを取り出す。
火をつけ、深く吸い込むと、小さな声で言った。

「・・・・・俺は・・・・・まだ牧野を忘れられない」

「・・・・・・・・」

「・・・それでも・・・・・いいのか?」

「・・・・・・・・」

我慢していた涙が、また零れ出す。
頬を伝って、地面へ落ちていく。
小さな丸が、いくつも出来た。


「・・・・・・・・バカにしないでよね」

力を振り絞り、ありったけの元気な声で言った。

「あんたね、今が滋ちゃんをGETできる最終チャンスなんだよ。つくしが忘れられない?そんなこと昔から知ってるよ。
だけどね、それを理由にしてあたしを捨てたら、あんた絶対後悔するよ。1年後、世界中で一番いい女になるのは、あたしなんだからね」

「・・・・・すげー自信」

くくく・・・と司が笑う。


「・・・どーすんの?あたしを拾うの?捨てるの?」






           





腰に手を当てて、仁王立ちになる。
ここでひいたら・・・・・女じゃない。

「・・・そうだな・・・他にめぼしい女もいないことだしな・・・」

吸っていたタバコを灰皿にねじ込むと、司はあたしを抱きしめる。



「もったいなさそうだから、キープしといてやるよ」

 

目に浮かぶ涙が、司のスーツに吸い込まれていく。
心地よいコロンの香りと、少し鼻につく、タバコの匂い。
もう少しだけ・・・と、ゆっくり目を閉じた。


「・・・仕方ないから、キープされてあげるよ・・・」









今までの自分に別れを告げ、新しい自分に生まれ変わろう

あなたを想い続けてきた日々は、決して無駄にはしない



Farewell・・・

あたしの旅は、今始まったばかり・・・・・・・・・・
 

 

  
 
 
 

 

 

 
                   fin

 

             Air第5楽章





☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆
BGM
ビゼー: アルルの女 第一組曲
カリヨ

MIDI: Kojikoji's Odyssey
☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆



解説

劇中のテーマも「結婚」です。
 村の旧家の長男フレデリは、幼いときに父を失い、母ローズと老僕バルタザールの 手で大切に育てられてきたが、ある日、アルルの町の闘牛場で1人の女と知り合い、 その女の恋のとりこになってしまう。
そして、彼はその女と結婚できなければ死ぬ ・・とまで思いつめるので、家の人たちはやむなく結婚を承諾する。
 ところが、その女にはミチフィオと言う情夫がいる事がわかり、フレデリはあきら めて、幼馴染の村娘ヴィヴィエットとの婚約に同意する。
こうして、フレデリのk邸 に再び平和がよみがえったが、それもつかの間、聖エロアの祭日に、アルルの女が情 夫と駆け落ちすると言う事を耳にしたフレデリは、嫉妬に狂って暴れた挙句、その夜 遅く、養蚕室の窓から身を投げて命を絶つ。

「鐘」は丁度幼馴染と結婚するところ。アルルの女を思い出しつつ・・・・
・・・暗いかな・・・?
アルルの女、実は悲劇・・・というのはあまり知られていない事実です。。

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