もういい、いつもと同じで。
下手に何かやって、ユカちゃん怒らせて、チョコレートもらえなくなるよりいいや。
そう、今日は2月14日、バレンタインデーである。
ユカちゃん大好きな俺としては、ホントは彼女の手作りチョコが欲しいんだけどさ・・・
未だ俺らの仲は進展せず、追いかければ逃げられ、去っても追いかけられず、なかなか辛い。
でも、でもやっぱ好きだからさ・・・
こうして少しでもイイ男に見せて、彼女の高感度をアップさせたいわけですよ。
あーもう、健気だね、俺って・・・


それはともかく。
もう一度水で髪を濡らしてワックスつけて、撫で付けて完成。
いつもと同じ、なんら変哲のないスタイル。

「そうそう、あんたはそれが一番。煮ても焼いてもどうせまずいんだし。何やったって変わらないって」

「うっさいよ、年寄りババァ!」

ブラシを投げつけられるより一瞬早く、その場を後にする。
まったく、早く彼氏見つけて女らしくなれっつーのね。
ぶつぶつと毒を吐きながら階段上って、ボディバッグを提げる。

「行ってきまーす!」

大きな声で叫んで、玄関を閉めた。
しっかし。
ユカちゃん、俺にどんなチョコ用意してくれてるんだろう?



手作りの本命チョコ?それとも、義理100%の市販チョコ?
それはちょっと悲しいかもだけど、でももらえないよりは全然マシ。
その可能性、60%だからね・・・
ちなみに、義理チョコがもらえる可能性は39%で、手作りチョコがもらえる可能性は1%未満。
これは、去年のデータを基に、俺が算出したパーセントである。
あー・・・マジで欲しいよ、手作りチョコ・・・
形はどんなのとか、ラッピングの色はどんな色とか、都合のいい想像しながらぶらぶらと歩けば、
あっという間に城南高校の門が見える。
あー・・・ドキドキしてきた。
どうする?いきなり門周辺でユカちゃんに会っちゃったら。
俺、いつもどおりに話しかけられるかなぁ・・・マジ不安なんですけど。
かなりの勢いで、声が裏返って不審がられると思う。
でも俺も男だし・・・・なんて考えてたら。

「・・・あの後ろ姿は・・・」

背が高くて、頭の高い位置でシニヨン結って妙にスカートの短い女の子。
後ろ姿だけでわかる、絶対亜美ちゃんだ。
さて、どうしよう。



A:挨拶は基本でしょ?もちろん声をかける

B:面倒なことはごめんだ・・・とりあえず、無視