「10年か―――」

思い出したように呟いた司の声に、ん?と振り返ると思いがけなく真面目な顔をしていて

「なにが10年?」

問い返すと、口元だけで笑っただけで答えを言わない。

それでも諦めなかった俺が面倒くさかったのか、これまた面倒くさそうに「牧野」と、小さな声で告げる。


ああ、そうか。
さんざん、周りを巻き込んで大騒動を起こした後、あっさりと落ち着いて……


もう、そんななのか。


改めて、自分も年を取るはずだ、と。流れた時間をかみしめる。
といっても、司やつくしたちとはそんなに離れているわけではないのだけど。


「10年で、なんか変わったか?」


興味本位で聞いてみる。
ほとんど毎日一緒にいる司の変化は、探そうと思ってもそうそう探せない。


「あー……、変わったようで変わってねえなあ」


何かを探るように泳いでいた司の視線は、ふと何かを発見したかのように留まる。


「牧野は、いつまでたっても牧野だし。だろ?」


顎で部屋の入口を指す。
それに促されて、意識をそちらに向けると
バタバタと廊下に響く音。
それに気を取られているとドアが勢いよく開く。


「司っ!!ごめっ!遅れちゃった!今日、式の打ち合わせだったよねっ」


幾分、化粧がうまくなったつくし。
だけど、司の言うとおりつくしは、10年たってもあのままだ。
全開のおでこを、指で直しつつ「あれ?亜門いたの?」なんて。
司の説得力のある言葉に、笑いをかみ殺しながら右手を挙げる。



10年前の俺たちは、10年先のことなんてちっとも想像できなくて。
司を迎えに行く、と意思を告げに来たつくしと比べて、自分の幼さや傲慢さを改めて実感したり。
それでも前に進むしかなくて。
何の因果か、司の母親に気に入られていつしか、こいつのお守り。


それでも毎日楽しくやってることは、確かだ。
こいつは見てて飽きないから、な。



「さ、じゃ行くか。亜門、あとよろしく」



司は車のキーをテーブルから拾い上げると、ジャケットにするりと袖を通した。
半年後に控えた、つくしとの結婚式の打ち合わせだ。


「おう」


短い返事を返すと、司は思い出したように足を止めた。


「亜門。10年で1つ変わったことあったわ。こいつ、俺のこと名前で呼ぶわ」


肩越しに振り返りながらおかしそうに口元を緩め、つくしの肩を抱く。


きょとりとしたつくしを促しながら、部屋を出る司の背中に


「おまえもいい加減、名前で呼んでやれよ」とこっそり思う。


そして、俺もこの10年でずいぶんやわらかい笑顔を零すようになった司に気付いた。
つくしに向ける眼差しは、あの頃とちっとも変っていないのだけれども。




おしまい。

2012,4,22 momota



お友達のサイトが、開設10年を迎えておりました。パチパチパチ。
いやはや、本当にお世話になったサイトさまで・・・・・・。
私がサイトを開いたのも、こちらのサイトさまがあったからと言っても過言じゃないです。
なので、「10年」をテーマに短い作文のようなものを書いてみました。

10年て、言葉にするのは簡単なんだけど、本当にいろいろなものがひしめきあっての10年なんですよね。
まだ夜泣きする娘をあやしながらしたチャットや、お腹が減った!と、もぐもぐしながらしたチャットを思い出します(笑)

司やつくしが、あれから10歳年を取ったら・・・・・・
30前の彼らは、バリバリ仕事をこなしおそらく結婚しててもおかしくない(てか、とっくにしてるか!笑)
状況にいるんだと思うのです。
そんな彼らを、周りの人が見たら的な感じでポチポチしたのですが
椿ねーちゃんからみた二人でもよかったかな。
まあ、つくしが司のことを名前で呼んでたのは、最終巻のあたりからだったような気が……
しないでもないんですけどね。アハハ。


sweetberryさん、10周年おめでとうございます!
これからもどうぞよろしくお願いします。




第一弾に選んだお話は、わたしのサイトが2012年に10周年を迎えた時、
10年をテーマに書かれた「blog-pass 2 tukasa」というお話です。
新たにタイトルをつけていただきUPさせていただきました。
10年――
知り合った頃はお互い子供も小さかったし花男も連載中。
マーガレットの発売日や1日は特に夜中までみんなでチャットしてたよな。
キーボード打ちつつ飲食!←ワンプレート料理 飲酒(笑)
PCの画面見ておなか抱え笑って家族からは変な目で見られてた。。。
HPがあるからPCのこと自己流だけど勉強し
イラストも下手だけど頑張って描いた!
HPがあるからたくさんの人とお友達になれて・・・・

こらからも楽しみながら描いていきたいです!!

2013.7


挿絵制作裏話 あれこれ