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でいただいたお話

ロビンソン
           作:ポンさま





 いつもの川沿いの道を、あたしは自転車に乗って走る。

 爽やかな春の風に吹かれ、何故かあたしは少し切なくなる。
 



 道明寺と別れ、これで何度目の春を迎えたのだろう。

 その間に、あたしは高校を卒業し、短大に入学し、そして卒業した。

 新品のスーツに身を包み、自転車をこぐ。

 時が流れても同じ季節が巡る。

 桜が咲き、散り、葉が枯れ、そしてまた花が咲く。

 あたしも一緒。

 忘れようと思い、努力し、あきらめ、また同じ気持ちにたどり着く。

 そして桜が咲く頃、変われない自分を惨めに思い、少し切なくなる。
  











 いつものように、あたしは川沿いの道を自転車で走る。

 夕暮れ時は、色んな人にすれ違う。

 グローブとバットを担いだ少年たち。

 少し恥ずかしそうに、肩を寄せて歩く高校生のカップル。

 年老いた犬をゆっくり散歩させるおじいさん。

 すれ違う人全てが違う生き方をしていて、

 そんな単純なことに感動してしまう自分が純粋で少し好きだ。

 かなり遠くに、スーツ姿の若い男性が見える。

 この時間に、スーツ姿の人を見たのは初めてだ。


 仕事で嫌なことがあったのかな?

 あたしと同じ、この道を進んで、風に吹かれて、気分をさっぱりさせるのかな?


 なんて、ひとり考えてみる。

 彼との距離は少しずつ縮まって・・・・・


 そしてあたしは自転車を停めた。


 
 「・・・自転車なんて、古臭いモン乗ってんだな」


 貧乏生活爆走中か?と、あたしに笑いかけるのは・・・・・





 「・・・どう・・・みょうじ?」

 













 時が止まった。















 「どうしたんだ?化け物でも見るような顔して・・・」


 微笑みながら、道明寺があたしに近づく。

 これは目の錯覚?

 それとも、夢?


 「おまえ、『夢でも見てるんじゃ・・・』とか思ってんのか?」


 頬に触れる手の感触。

 これは・・・夢じゃない。




 「本物だよ。日本に帰って来た」



 道明寺の腕が、優しくあたしを包む。

 懐かしい腕の力。

 懐かしいコロンの香り。




 「・・・・・ただいま」


 「・・・・・」



 自転車が倒れたけれど、通りがかりの人の目もあったけれど、そんな事どうでも良かった。

 目の前であたしを抱きしめる道明寺を、体中で感じたかった・・・・・


 
 突然のことに頭も胸もいっぱいになって、

 「おかえり」の一言を言いそびれてしまった。















 「ババァと縁を切る・・・ことは出来なかったんだけどな・・・」









 2人でアパートに戻る。

 最近少し広めの部屋に引越しをしたのだが、

 それでも道明寺はきょろきょろと部屋中を見渡す。

 『相変わらずの生活してんだな・・・』と、笑って言った。



 「それでも、もうおまえとのことは誰にも文句は言わせない」



 あたしの目を見て、道明寺は力強くそう言う。

 久しぶりの道明寺に、あたしは恥ずかしくなって目をそらした。


 
 「おまえ、この歌知ってっか?」


 突然立ち上がり、歌いだす。



 「誰も触れない 二人だけの国 終わらない歌ばら撒いて  
  大きな力で 空に浮かべたら ルララ 宇宙の風に乗る・・・って」

 「・・・知ってるけど・・・・あんた歌下手だね」

 あたしの言葉に、道明寺は額に青筋を浮かべる。

 「おまえ・・・・久しぶりに会った恋人にケンカ売る気か?」

 「・・・ごめん」

 素直に謝るあたしに、どうやら拍子抜けしたようだ。

 まあいいや・・・と、言葉を続ける。

 「でさ、俺はまさしくその歌の気分なわけよ。『誰も触れない 二人だけの国』って」

 ふと目が合う。

 「・・・俺は、おまえとその国を作りたい」

 「・・・・・」

 「・・・嫌か?」

 「・・・・・」



 胸がいっぱいだ。

 何か言ったら破裂しそうで、あたしは答えられない。

 答えられない代わりに、道明寺の胸に飛び込んだ。

 それが、あたしの答え。



 「・・・サンキュ」



 あたしの気持ちが通じたのか、道明寺があたしを抱きしめる。


 
 この日をずっと待っていた

 時が流れても、季節が巡っても

 いつもは惨めに思う『変われない自分』を

 今日だけは誇らしく思った


 


 道明寺のキスは優しい。


 その優しさは次第に激しさに変わり・・・・・



 「・・・って、あんた何やってんのっ!!」



 そのままあたしを押し倒そうとする道明寺の頭を、あたしはぺチンと叩いた。



 「・・・なんで?」


 「なんでって・・・」


 「俺、今までずっと待ってたんだぜ?もう、我慢できない」


 再び、唇を奪われる。


 「・・・前みたいに待ったはなしだからな」

 
 耳元でささやく。



 「怖がってもいいぞ。怖くないってこと、教えてやるから・・・・・」




 再び、時間が止まった。




             *****fin****