SKY GARDEN










birthday 2004   tukasa × tukushi ***







あっという間に、お正月休みが終わったと思ったら
もう、明日から2月。




「早いなぁ・・・・・・」




思わず口に出しちゃったけど。
誰もいないこの部屋の中ではただの独り言だ。




ベットに寄りかかりながら、携帯を手にする。
ストラップをいじりながら、普段はなるべく思い出さないようにしている、司の顔や、声、仕草、香り・・・
司の全部を、そっと大事なものを取り出すように思い出す。




今日は、司の誕生日だ。




暖かくて、大きい掌は一番好きな場所。
あの、ふわふわで触れるとくすぐったい髪も、大好き。
細めの眉や、大きな瞳、薄い唇、広い肩─────


ほら、もう思い出したら止まらない。
次から次に、司が溢れ出てくる。


だから、普段は思い出さないようにしてる。




司、司、司
逢いたい。逢いたい。逢いたい。




こんなにもあんたがいないってことが、大きなことだと思ってなかった。
4年なんてあっという間に過ぎちゃって
そんで、「あんなときもあったよね?」って笑って話せるもんだと思ってた。


4年なんて、すぐだったね、って。
司のいない4年なんて、これから一緒にいれる時間に比べればちょっとした時間だよ、って。






近くにいるのに会えないのと
遠くにいて会いたい時に会えないのでは、どっちが辛いんだろう。
なんてことをぼんやりと考えていた。






いつのまにか、祈るように組んでいた手。
その中に大事に包まれている、あたしと司を繋ぐ携帯。





その携帯を買ってもらった時のことを思い出し、少し涙目になってしまった。
あたしは手の甲で、グイッと目元を拭うと携帯を開いた。





一番最初のメモリー。
通話ボタンを押す。
もう、起きてるよね。きっと、8時は過ぎてるはず・・・

無意識に時差を計算する。


・・・・・・・・。
???


あれ?
いつもより、発信音が早い・・・かも・・・





『ハイ』
「あ、あたしっ」
『おう、元気だったか?』


ふわりと緩んだ声に、再び泣きたくなる感覚。



あー、だめだ。やっぱり逢いたい。
逢って抱きしめたい。抱きしめて欲しい。



「元気!元気!司こそ風邪なんてひいてない?」
『俺様が風邪なんかひくか』
「そうだよね、なんとかは風邪ひかないって言うもんね」


いつもの自分のペースに、浮かんでいた涙も少しひいてきた。


『・・・・・・なんとか?なんとかってなんだ?』
「・・・・・・。あとで秘書の人にでも聞いてみなさい」


いくらNYで修行中といっても・・・
彼にはまだまだ日本のことを詰め混まなくてはならないのでは・・・?

なんて不安を打ち消すように、告げるお祝いの言葉。


「司?誕生日、おめでと」
『・・・おう、そうだな。今日だ・・・・・・」
「19歳だ」
『ほんとはよ、こっちでパーティーの予定だったんだけどよ。大事な用が入って急遽中止』
「え?じゃぁ忙しいんじゃない!あたし、電話切るよ」
『いい。もう済んだ』


あっさりと口にされた言葉に、あたしはちょっとだけホッとする。



────まだ、司を感じられる。


1分でも、1秒でも長く司と繋がっていたい。
その分だけ、あたしは司がいない日本(ここ)で、強く生きていける。




「・・・・・・逢いたいなぁ」
『あ?』
「あ、ご、ごめっ」


だめだ、最近独り言が多すぎた。

今さら口元を押さえても遅い。

ついつい心の中身を言葉にしてしまったことに、顔が赤く染まる。


『でっかい声で、言ってみろよ』
「は?」
『俺に聞こえたら、速攻でお前の傍まで行ってやる』
「何言ってんだか」


どう考えても、無理じゃないの。
けど、たまにはこんなバカらしいこともいいかも知れない。



「司に逢いたいーーーー!!」



思い切り出した声に、思わず現実に戻り慌てて時計を見た。


午後、10時半。


や、やば。
隣の人に怒られる、と思って気づく。
隣は先週引っ越して行ったばかりだ。
それにここは角部屋だから・・・・・・。


はぁ、と安堵のため息をつきながら電話の向こうの司を確認。



「どう?聞こえた?」



そう言った瞬間、玄関のドアがノックされる。



あ、やばっ。
やっぱうるさかったかな。
隣ではないとすると・・・下の人かな。



「司、ちょっと待ってて」



あたしは、司の返事も待たないで急いでドアを開ける。
















かちゃりとドアを開けた瞬間、香る懐かしい香り。

この香り・・・・・・

何度も何度も包まれた事のある、香り。



足元からゆっくりと視線を上げる。


少し汚れたスニーカー。


ちょっと大き目のデニム。


大きな手。


重ね着したTシャツ。


細い眉、大きな瞳、薄い唇。



くりくりの頭。




ニヤリとあげる口元。






「ちゃんと、聞こえたぜ?」






大好きな人の
けして忘れることのなかった、声。










無意識に差し出した手が震えてる。
足もだ。


司までの1mもない距離。




それでも、広げている大好きな人の腕の中に飛び込んだ。






司、司、司。






「大事な用ができた、って言っただろ?」




耳元で囁かれた声に、そっと頷く。

機械を通さないで聞こえる司の声は久しぶりで
久しぶりすぎて
そんなにも長い間、この声を感じることができてなかったと思うと
なんだか余計泣けてきた。



「嬉しいときは、泣くな。笑え」



そんなこと言ったって。
嬉しいときだって、涙出るんだよっ。



いつもみたいに、言い返したいけど
こみ上げる何かで、上手く言葉にすることができない。



息をするのも苦しいくらいだ。
司が、傍にいる。
ただそれだけで。






「・・・・・・俺、むこう行ってから、お前にもっとあーしてやればよかった、こーしてやればよかった。って、 んなことばかり考えててよ」



あたしの背中に回された腕から伝わる熱。
懐かしい、温もり。



「いいよ、いっぱい後悔して。そうすると次にあったときにはうんと優しい司がいる」



あたしも自分の熱を司に移すべく
背中に回した腕に力を込める。



「けっ、何言ってんだよ」







あたしの周りで、いろんなものが変わっていって。
なんだかあたしだけが取り残されているような気がしてて。



・・・・・・それでも、司がいてくれるだけで
あたしは自分を見つけられる。



司?
あたし、司を好きになってよかった。

司のことを好きなのと同じくらい自分が好きなことに気づけるんだ。




司の存在こそが、あたしの存在理由。




生まれてきてくれて
ありがとう。




あたしを好きになってくれて
ありがとう。




・・・・・・傍にいてくれて
ありがとう。











司からのキスを少しでも早く受けたくて
思いっきり背伸びなんてしてみたりする自分も、かわいいって思えるんだよ。




ねぇ、司、聞いてる?





おしまい




2004,1  司バースデーSS。




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