rui birthday 2006 rui × tukushi ***
風の強い日だった。
いつもなら、ただ憂鬱なだけの一日なのだけど。
今日は、違う。久しぶりに類に会える。
久しぶりのデートの身支度に、高鳴る胸。
こんなにゆっくり時間をかけてメイクしたのも、いつ以来だろう。
思い出せないくらい前なのか…、と自分でも苦笑してしまう。
ホントは、類の誕生日も近かったし。
久しぶりのデートだったので、外でゆっくり食事でもして、なんて思ってたんだけど。
どうもあたしの調子が悪い。
風邪をひいたらしく、だるさの抜けない体と
微妙に熱っぽい体。
けど、今度はいつ類に会えるか分からないし。
今日だって、無理に時間作ってくれたのもわかるから、がんばって待ち合わせ場所に行ってみた。
どんなに大勢いたって、類のことはすぐに分かる。
太陽の光をたっぷりと受けたサラ髪に、周りより幾分飛び出た頭。
そしてなんと言ってもあの「話しかけないでよねオーラ」
今だって、類の周りをキレイなおねーさんが何人も遠巻きに見てるのに。
そんなことにもまったく関心がなさそうに、ジャケットのポケットに両手を突っ込んで足元を見つめてる。
そんな様子をこっそりと盗み見ながら、笑いを堪えるのが大変だった。
あたしの視線を感じるのか、何度かきょろきょろとあたりを見回す類。
顔を上げるたびに起こる周りの感歎の声など気にもせず
携帯を開くと、時間を確認しているようで。
あたしのことを、待っててくれてるんだ。
なんて思うと、なんだか誇らしくて嬉しくて…。調子が悪いのも、忘れてしまいそう。
喉元にある違和感を誤魔化しながら、声をかけようと駆け寄ろうとした瞬間、
強風に煽られ、顔をしかめた類。
そんな子供みたいな表情に、思わず見とれてしまう。
無防備なところを、なかなか見せない類がふと見せた表情。
そんな彼をもっと見ていたくて。
道の真ん中でバカみたいに佇んでるあたしに気づいた類は、眩しそうにこちらを見た後ゆるりと表情を緩める。
そんな類に、今度は足元が覚束なくなる。
(やだ。まじでかっこいいよ、この人!)
知っていたことだけども。改めて思うとなんだか緊張してきてしまって。
よろよろとしながら類に駆け寄ると、これまた嬉しそうに微笑むもんだから。
たまらなくなってしまった。
「ひ、久しぶりっ」
「うん、久しぶり」
上擦ったままの声。
かっこわるっ。
さっきまでの不機嫌すらなかったことにして、さらりと挨拶を交わせる類と比べてしまって、ちょっと落ち込む。
「アレ・・・?」
類は怪訝そうに少し屈むと、あたしを覗き込んだ。
急に類の顔が目の前に来たあたしは、どぎまぎとする心臓を隠すのに精一杯で。
思わず息を止めてしまったくらいだ。
「牧野…なんか、変じゃない?」
「なんかさ、違う」
「いつもの牧野じゃない」
類にしては珍しく、立て続けに質問攻め。
結局は、体調の悪さを白状させられる羽目になった。
しかし2週間ぶりなのに、会ってすぐにあたしの調子の悪さに気づいた類もスゴイ。
無理やり連れ戻され、今は体温計を咥えさせられてベットの中。
「風も強いしさ、ちょうどいいじゃん。今日は牧野んちでゆっくりしよ?」
なんて、にっこり微笑まれちゃなんも言えないっつーの。
ピピピピ、と軽い電子音がして
類が、あたしの口から体温計を取り出す。
特にコメントするほど、高くもなく低くもなくといった所だろうか。
無言で体温計を眺めたあと、類は何も言わずにケースに戻した。
「りんごとか、剥く?」
「いや、りんごないから」
林檎を剥く花沢類も、かなりレアなんだけども。
「じゃ、オレンジとか?」
「……いやいや、オレンジもないから」
花沢類に向いてもらったオレンジなんかも、かなりかなりレアなんだけども。
ほっといてくれていいのよ、類くん。
類の甲斐甲斐しいお世話に感動したわけじゃないのだけど。
なんだか勝手に瞳が潤んでくる気がする。
喉の辺りにも熱が篭ってるような…。
「……メロ」
「メロンもないから」
頭がボヤボヤしつつも即答したあたしに、「最後まで言わせてよ」と、口を尖らせる類。
「ほっといてくれてていいよ。類も暇でしょ?あたしは平気だから、おうち帰ってもいいよ?」
久しぶりだったのだけど。
こうなってしまった今、仕方がない。
タダでさえ忙しい類を、何をするでもなく拘束してるのはなんだか悪い気がしてきた。
「牧野は、つらい?」
困ったように微笑んだ類に、胸の奥がじわりと熱くなる。
ほんとはちょっぴりだるくて。布団に包まってるのが楽だったりするのだけど。
それよりも、類と一緒にいたい気持ちのほうが全然勝ってしまっていて。
「ううん、辛くない。類さえ良ければ、いて」
なんて、言ってみる。
けど。
ベット横に腰を下ろし、じーっとあたしの寝姿を眺めてる類に、なんて声をかけたらいいのか…。
無言で見詰め合ってる、この構図。
絶対、おかしいと思う。
何か話題を振らなければ…と、苦悶するなか、類が面白いことを発見したかのように、グイと体を
あたしが横たわるベットに乗り出した。
「牧野、なんかいいにおいがする」
類がクン、と鼻を鳴らす。
ここ最近香水を付けてないあたしは、類の言う香りに心当たりがなく、しばらく思いを巡らせていると
さらりとした、類の髪があたしの頬に触れた。
ドキリとして、思わず目が見開いてしまった。
「あ、ここだ。グロスだ」
なぞなぞの答えを見つけた子供のように、嬉しそうにあたしの唇に近づけられた類の鼻。
それはまるでキスをするときのような、感覚。
それでも、口唇は触れないで。
あたしの喉がゴクリとなるのが聞こえた。
「おいしそうな香りだよね。食べたくなる」
怪しい色を含めながら、にっこりと瞳を細める。
(どうぞ、全部食べちゃってくださいっっ!)
なんて、一瞬思ってしまうのだけど、フルフルと頭をふるとあたしは自分を励ました。
がんばれ。がんばれ、つくし。
ここで流されちゃ、ダメなのよ。
いつも、ここが分岐点なのよ。
ここで流されると、今後この部屋の熱さが5℃は上がってしまう結果が待っている。
それを望んでなくもないのだけど。
久しぶりの逢瀬なのだ。
少しは、会話を楽しみたい。
いや、楽しみたいのは会話だけじゃないのだけど。
あああああああああ。
なんだか、今日はテンションがヘンだ。
久しぶりに、会ったからかな?
自分がおかしいのを、類の所為にするのもなんなのだけど。
それでも、コレを収めるにはアレしかなくて。
「る、るるるるるいっ!」
「なに、急に改まって」
ベットの上に正座したあたしを、訝しげに見つめる涼しげな淡いグリーンの瞳。
「キ、キスしていい?」
そのまま固まってる類。
反対に、あたしはワタワタしてしまって。
膝の上に固まってたシーツで、思わず顔半分を隠してみる。
自分の発言には責任を持つことくらい、理解してるつもり。
けど、今回は勘弁してもらおう。
もう類の顔を見ることすら出来ない。
「……そりゃまぁ、大歓迎ですけど」
笑いながらゆっくりと近づいた、類。
人差し指で、あたしの口元を隠していたシーツを優しく下げる。
ふわりと重なる、口唇。
あたしを気遣ってか、軽く触れるだけのそれに
より一層、トキメイてしまった。
「あ。失敗した。牧野から言い出したんだから、牧野からしてもらうんだった」
なんてブツブツ言ってる類に、再び胸の奥からチリチリと痛みに似たものが零れる。
あぁ、収まらないよ、コレ。
もうあたしの中では、類に対しての感情がキャパオーバーなのだろうか。
口を開けば、開いただけ類への愛が零れそうだし。
類を見れば、見ただけ瞳から熱いものが溢れそうだ。
動悸というか。
胸の奥が熱いというか。
「類〜〜〜、なんかヘン〜〜〜」
とうとうたまらなくなって、類に泣きついてみる。
苦しいような。
嬉しいような。
愛しいような。
切ないような。
類にしか、解決してもらえないような感情。
「あー。だよね、やっぱ。熱、9度6分もあるもん。寝てなよ。俺、氷買ってくるから」
「………」
はい?
「ほら、布団にちゃんと入って」
布団へと促されたあたしは、大人しく布団に収まってみるんだけど。
なんだかヘンなことを聞いた気がする。
「類、今……」
「ん?熱?9度6分あるよ?」
「ちょ、ちょっと…そんなに熱あるなら…教えてよ…」
「だって、教えたらもっと具合悪そうになりそうでしょ?」
途端にクラクラしてきた。
そうか、あたしがおかしいのは熱の所為か。
そうか……。
じゃぁ、あたしのおかしさの原因を熱の所為に出来る今。
愛の告白でも、してみようか。
「類、大好きだよ」
「うん、俺も牧野大好き」
バカだ、あたし。
これ以上熱上げて、どうすんだっつーの。
おしまい
2006,3,30 momota
おいおいおい!これ、ホント類のBDもの?!
『ホントは、類の誕生日も近かったし』
↑こ こ し か な い よ!
キャーーー!
始まって、7行目で触れただけだよ!
詐欺だよ!詐欺!!
振り込め詐欺ならぬ、「俺誕生日なんだけど詐欺」
略して、「俺誕詐欺」
平仮名にすると、なんとなくイヤなので
みんな、漢字で使ってね!
……つかわねーよ。
→text →nijitop
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