SKY GARDEN










Relation   tukasa × tukushi ***







もうっ!
これ、何度目?



明治通りに面したオープンカフェ。
あたしは、椅子の背もたれに思い切り体を預ける。
携帯を投げつけたい心境だったけど、やっぱりやめる。
今、携帯が壊れても困るから。
道明寺の為に携帯が壊れるなんて・・・そんなの馬鹿らしいわっ!ふん!!




久しぶりの昼間のデート。
何しようか、1週間も前から考えて・・・・・・
服だって、買ったばかりのをおろして・・・・・・



こんなに張り切って


ばっかみたい。



さっき道明寺からメールが入った。

「仕事が入った。悪い」






最近はこんなのばっか。








いつもは、ちゃんとそんな内容のメールでも返事をだすの。
でも、さすがに今日はそんな気も起こらない。


ここ数回、直前でデートが取りやめになることが続いている。
最初のうちは、ちゃんと物分りのいい女の子演じてたけど
さすがにもう、限界だわ。






もちろんあたしと仕事どちらを取るの?
なんて詰め寄ったりしない。
道明寺が背負ってるものは、とてつもなく大きいもの。

あたしなんかと比べたら、ほんとに月とスッポンだもん。




けど
そんなこといったら道明寺は、なんの迷いもせずにスッポン(あたし)を取るから。

そーゆー男だって分かってるから迂闊なこと言えやしない。



でも、ちょっとぐらい意地悪言ってもいいよね?
ちょっとぐらい困らしてみてもいいよね?






そこでふと道明寺の顔が浮かぶ。

今、あたしと彼を繋げてるものは・・・・・・なんだろう・・・・・・


















結局ひとりで、ショッピング。
ウィンドウに映るあたしは、一人。
いつもは隣にいて、文句ばっかり言ってるデカイ男がいない。

「こんな安モン買うのに悩むな!」とか
「歩いてばっかで疲れた!」だの・・・

たまには1人でショッピングしたいわっ!なんて道明寺に言ったこともあったけど・・・

一人はちっとも楽しくない。


夕方になってきて、街にもカップルが増えてきた。
かわいらしい学生カップル。

そういえば昔制服でデートしたことが1回だけあったな。
ふいにこんなこと思い出すなんて・・・・・・



あぁ!!また道明寺のこと考えてる!!

もう、今日は道明寺のことは思い出さないっ。
きめたっ!




落ち込む気分を少しでも向上させようと楽しいことを考える。
けど・・・
楽しいことにはすべて道明寺が絡んでいて余計に気分が落ち込んだ。




なんだってこう、あたしの周りには道明寺ばかりなんだろう。







携帯を手に取ると、優紀のメモリーを探す。

でも・・・
・・・・・・日曜の夕方なんて、きっと予定入ってるよね。
彼氏ができた、ってこの間嬉しそうに話してたし。



あたしはそのまま携帯を、パチンと閉じた。
思い浮かぶ友人たちはみんな忙しそうに働いている姿を想像できる人たちで
あたしに携帯のメモリーを押させるのをためらわせる。




あたしはおとなしく、帰宅するために電車に乗った。




こんな日は早く家に帰ろう。
あったかいお風呂にゆっくり入って、お気に入りのTVを見て・・・・・・
そして早く眠るんだ。




道明寺の香りの残る、布団に包まれて─────

道明寺の夢を・・・・・・見るんだ。








出かけるときは、うれしくてうれしくて仕方がなかったのに。
まさか、こんな気持ちで帰宅するなんて。
あたしは下ろしたてのミュールに傷ついた足を気にしながら帰り道急ぐ。

靴も、下ろしたてだったんだよね。
・・・気合入れすぎてたのかな、やっぱり。
少し鼻の奥がツーンとしたけど、夜空を見上げたら収まってきた。
そして自分に言い聞かす。





これは足が痛くて泣きそうなだけ。
道明寺に逢いたくて泣きそうなわけじゃない。
道明寺に逢いたい・・・わけじゃない。








いつもは道明寺が送ってくれてたからそんなに気にしたことはなかったけど。
自分ひとりの影は随分長いように感じた。















角を曲がったアパートの前には見慣れた高級車と人の気配。


────道明寺!!





あたしに気づいた大きな影が、ゆっくりとこちらに近づく。
影と共に近づく彼の香り。
悪かったな、と柄にもなく伝える表情は逆光で見えない。







でも
謝ってる割には態度がでかいじゃないのっ!





「・・・・・・浮気してやる」
「は!できないね、お前には」




一生懸命考えた、彼が一番へこむであろう意地悪。
ちょっとは困らせたくて言ってみたけど・・・・・・
けど
即答。
むかつくじゃないの。






「・・・できるもん」


そのまま道明寺の横をすり抜ける。
一気にアパートの階段を駆け上がった。

(くぅぅぅ、足痛ーーーい。)


バックの中から鍵をとりだして、鍵穴に差し込むと後ろから道明寺の気配。


「オマエ、足変じゃねーか?」
「・・・なんでもないわよ」

ガチャガチャと鍵穴を回す。
あせっているわけでも、動揺しているわけでもないんだけど上手く鍵を開けることができない。
なんなのよ、こーゆー時に限って。



「さっきの話だけどよ・・・・・・」
「・・・・・・なによ」
「じゃぁ、浮気してみろよ」





な、なにぃ〜〜〜??





道明寺を睨む。
ニヤニヤと意地悪な笑みを浮かべている。






「お前、好きでもない男の前で服脱げるのか?好きでもない男の下で脚広げられるのかよ」


「く〜〜〜〜っ」

「できねー、だろ?」


相変わらず、ニヤニヤとしている道明寺の傍まで戻ると
思い切り足を踏んづけた。





「いってーーーーなっ!!!」

あまりにも的確な道明寺の返し。
何も言い返せなかった自分が悔しい。

なんでこの男は、こーゆーときに限って頭が働くのかしら。

「ふんっ!どうするの!入るのはいらないの!?」
玄関のドアを開けたまま振り返りもせずに怒鳴る。

「・・・ッたくよ、あやまったじゃねーかよ。オマエが変なこと言い出すからだろ!」

ぶつぶつと文句を言いながらも、あたしのヒールの跡がついた靴を脱ぐ────


大好きな人。









彼とあたしを繋げているもの・・・・・・
それは



自信だ。








彼はあたしを愛してる。
あたしは彼を愛してる。








ただそれだけ。
それだけでも、あたしたちにとっては大事な何か。
あたしと道明寺を繋ぐ、大事な想い。









そして今日もまた彼の香りが布団に染み入る。


今日一日を取り戻すかのような甘い夜はまた別のお話・・・・・・





おしまい



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