SKY GARDEN










何もない部屋   rui × tukushi ***






床にそのまま置かれたライトだけが灯るこの部屋で
聞こえるのは微かなシーツの擦れる音だけ。


柔らかな灯りがこの殺風景な部屋を、ふんわりと包んでくれているようで
あたしはゆっくりと瞼を下ろす。

体を重ねたのは30分も前なのに、いまだ残る肌の湿りをシーツに移しながら、ゆっくりと過ぎる時間。
隣で横になる・・・・・・こちらもまだ湿りを残す人の肌に手を触れた。


サラサラとした布ずれの音が止むと、今度は機械的な音が響く。

そしてあたしは大事なことを思い出して慌てて体を起こす。




「今何時?!」




思い切り起き上がったせいか、類の分のシーツまで奪い取ってしまったらしい。
眉間にしわを寄せた類が、あたしごとシーツを引っ張る。




「・・・・・・なにそんなに慌ててんの?」




いつもより少し低めの声。


もしかして・・・・・・寝てた?




類の胸に顔を押し付けながら顔を上げる。
そこには、やっぱり瞼を下ろしたままの類。




「・・・・・・今日、帰るんだっけ?」




相変わらず瞳は隠したまま、ゆっくりと低めの声を響かせる。




いつ聞いても、この声、好きだなぁ。
少し擦れ気味で。
それでいてしっとりともしているようで。


「音」として耳に入るのがすごく心地いい。




「・・・・・・類、寝起きの声、すごくいいよね・・・・・・」

「なに言ってんのさ、急に」



そっとあたしの体に巻きつけていた腕を外すと、ゆっくりとベットに起き上がる。
うっとりと、類の声に聞き入ってるあたしをよそに床に落とされていいるTVのリモコンへと手を伸ばす。

そんな類の仕草を見ながら、あたしはいつも思ってたことを口にしてみる。


「ねー、類。小さなテーブルとか買えば?そうすればそこにいろいろ置けるよ?」
「んー。いい」



この、いい、は要らないの意味。



「・・・・・・携帯とか、リモコンとか・・・ライトだってすぐ手の届くとこにおけるよ?」
「別に、なくても困らないじゃん」
「そ、そりゃそうだけど」
「なくても困らないものは、いらない」



あぁ、はいはい。そうだね。
類の部屋はほんとになにもないもんね・・・・・・。


きっぱりと言い切られた言葉に、なんだかこちらが不貞腐れ気味。


せっかく親切で言ってるのにさー。
類の視線を感じなければ、口を尖らせてるところだ。



「って、あんたなんか時間気にしてなかたっけ?」



ポツリと零された類の声にあたしはもう少しで大声を上げそうだった。


あぁーーーー。もうあたしのバカ。
何のためにここに来たのよっ。




そっと類に気づかれないように時間を確認。

あぁ、ギリギリだ。
時計の針はゆっくりと、重なる寸前。



ドキドキしながらその瞬間を待つ。

あと、15秒。

・・・10秒。
・・・5秒。

・・・3秒。
・・・1秒。
カチリと音がしそうなほど、時計の針は見事に重なる。


それを合図にあたしは、そっとベットの下に忍ばせておいた小さな箱を取り出した。



「類・・・・・・。お誕生日、おめでとう」



改めて、こんなこと言うのちょっと照れくさくて。
押し付けるように、小さな箱を渡す。



きょとん、と動きを止めた類はゆっくりと顔を緩めると
そっとその箱の包みを開けた。


もう!その笑顔反則だよ。
頬を緩めただけなのに
それだけなのに、あたしの心臓はバクバクと音を立てる。



「・・・・・・すご。コレあんたが作ったの?」



箱の中身を見てから、うれしそうにあたしに視線を送る類。
あたしはというとその視線がくすぐったくて、恥ずかしくてまともに顔が見れない。


そんなことお構い無しに、
ゆっくりと箱から中身を取り出すと、ソレをぐるぐるといろんなところから眺める。



「ちょ、ちょっとそんなにじろじろ見ないでよ。失敗部分がばれちゃうじゃん」



あたしの言ってること聞いてんだか、聞いてないんだか・・・・・・
類はそのまま人差し指で、生クリームをすくうとそのままそれを口に運ぶ。



「・・・・・・ん。んまい」



満面の笑顔に、あたしもホッとする。



「よかった・・・・・・」
「牧野、食べてないの?」
「・・・・・・食べてないよ。だって、類のだもん」
「んじゃ、ハイ」



そう言って、再び生クリームをすくう指。
今度はそれはあたしに向かって伸ばされる。



「え?!!ちょ、いいよっ」
「なに遠慮してんだよ。ホラ」



ぐい、っと半ば強引に口に生クリームを詰め込まれる。



「んっ。お・・・いひ・・・いです」



モゴモゴと唸っていると、掠めるように口唇の端に類の口唇が触れる。



なにが起こったのかわからずに固まっていると、ニヤリと笑う類が瞳に写る。
それでもあたしだけ止まっている時間に、類が苦笑してる。



「生クリーム。ココについてた」



自分の口唇の端を指差すと、そっとケーキを床に置く。



「・・・キスぐらいでなんでそんなに驚くの。今までもっとスゴイこ・・・・・・・」
「ぎゃーーーーっ」



慌てて、類の口を両手で覆う。
バタバタしているうちに、シーツがはらりと落ちてあたしの胸元が全開。



再び止まる時間。






・・・・・・・・・。
もうもうもう。
なんなのよっ。

なんなのよーーーっ。



あたしは、くるりと類に背中を向けると無言で後ろにあるはずのシーツを手探りで手繰り寄せる。



「・・・牧野」



笑いを噛み殺してるのが分かるし。
声、震えてんのよっ!類!!



涙目で、背中越しに恐る恐る振り返ってみる。



立て膝で、そこに乗せた腕に顔を埋めて笑ってる類。
いや、表情はサラ髪に隠れてて分からないんだけど。



・・・・・・肩が、思いっきり震えてんのよっ。



散々笑って気が済んだのか、ゆっくりと顔を上げて髪をかき上げる。
そんな右手をふくれっ面で眺めてたあたし。



そのうち人差し指で、こっちにこい。と呼ばれる。あたしは大人しくしっかりと握ったシーツごと類のもとに移動。





そして
耳もとに口唇を寄せられて囁かれるお礼の言葉。
ゾクリとしたものが走って思わず耳を押さえた。



「ちょ、ちょっと、類〜」

「はは、だってあんた俺の声、好きだって言ったから」



からかい気味の口調に、これ以上耳元で囁かれちゃたまらない、とあたしはワザと視線を外した。
けれど、今度はその視線をどこに置いていいか分からないでしばらく部屋の中を彷徨わせる。



そのうち、耳につく雑音。
それの方へと、視線を流した。



それはTVから発せられていて
ザーっとした音しか聞こえてなくて。
白と黒のざらざらした画面がチカチカしている。
それがいろんな形に見える気がして、飽きずにあたしはずっとそれを見てた。



そのうち、独り言みたいに類が声を零しだした。




「・・・・・・なんで俺、あんまりモノとか欲しがったりしないか、知ってる?」




・・・・・・たしかに、今年の誕生日も欲しいものを聞いたけど
何もない、といわれて・・・・・・。

結局困ったあたしは、ケーキにした。
あまり甘いものが好きではない類だけど、甘味を抑えたケーキ。
ハートの形でイチゴがいっぱい乗った、バースデーケーキ。
まわりに塗る生クリームも、甘さ控えめ。
全てが類仕様。





「いろんなものがありすぎると、ほんとに欲しいものが分からなくなる」




あたしの真後ろから聞こえる声に、思わず振り替えようとした瞬間再び聞こえる、類の擦れた声。




「・・・・・・今、ほんとに欲しいものが腕の中にあるから」






ゆっくりと背中から包み込まれる。






「・・・・・・ほかに、何も欲しいって思わない」






そっと、あたしの胸元で交差する腕に
あたしの腕を絡めた。









何もない部屋で、求め合い。
何もない部屋で、愛し合う。
何もない部屋だから、大事。




何もない部屋で、いい。




生クリームの甘い香りの中

類の暖かい腕の中

あたしも、そう思った。







おしまい




■■■■■アトガキ■■■■■

・・・なにかしら?このバカップル。
書いてるうちに、どんどんどんどん、バカップルになってゆきました。
私のせいではないです。←!

そりゃぁさ〜、部屋にルイルイとか仔仔いるんならなんも要らんよなー。
あ、ベットいるか。←!!!
うひゃひゃひゃひゃ。

すみませーーーん!ココに オヤジがいまーす!

オヤジですが、ルイルイが大好きです。
お誕生日おめでとう!ルイルイ!

さ、次は、仔仔バースデーね!←えぇ?!

6月9日ですよー♡

2004,3,26 momota




→text   →nijitop