SKY GARDEN










愛しの姫君   tukasa × tukushi ***







もう、何度目かの一緒に迎える朝。
横ですやすや眠る、クセ毛の王子様を蹴飛ばすとあたしは肌触りのいいシーツを独り占めする。




「・・・・・・ってーな!!」




蹴落とされた王子様は、目覚めの悪い朝に少々ふてくされ気味。


「おまえ、仮にも女だろ?少しはこう、なんてーの・・・・・・」
「・・・・・・ね。道明寺、ひとつ言っていいかな?」


胡散臭そうな眼差しを向ける王子様。








「なんか着たら?」










自分の下半身とあたしの顔をしばらく見比べていた王子様は、真っ赤になってシャワーを浴びに消えてしまった。






「何度、過ごしても・・・あの甘い雰囲気に慣れないのよね」
シーツに包まりながら、独り言を呟く。




そう、あたしはあの周りにぱぁ〜っと花が散ってそうな・・・・・・
桃の香りが漂ってきそうな、2人で迎える朝の雰囲気が大変、気恥ずかしい。


それでも、肌を重ねるのは好き。

道明寺のにおいを体にまとって、眠るのが好き。

道明寺の温もりを感じて、過ごす時間が好き。





でもあんな行為のあとにどんな顔してればいいの?

みんなどうしてるの?




だから私は冷たくしてしまうお詫びに、道明寺が寝ている耳元で愛を囁く。

「ごめんね」


「愛してる」








■■■■■■■




ったく、なんであいつはあーなんだ?
シャワーをひねりながら考える。


水の粒が、体中に触れる。少し火照りが残る体には生ぬるいくらいのこの温度がちょうどいい。




先ほどの情景を思い浮かべるとため息しか出てこない。初めてのときからそうだった。
健気に痛みに耐えてたあいつが愛しくて、抱きしめようとしたとたん、「ね、なんかお腹すかない?」と一言。





なんなんだよ。





ガシガシと頭を洗う。
考えても、考えても女の気持っつーもんが分からない。
むしろ、考えれば考えるほど混乱してくる。

女はみんなあーなのか?
それとも牧野だからあーなのか?



やはり、総二郎やあきらに・・・・・・


い、いや・・・それだけは避けたい。
でもこのままでは・・・

・・・女は謎だ。





シャワーを止めると、今度はちゃんと腰にバスタオルを巻いて部屋に戻った。






「おい、なんか飲むか?」



シーツに包まってる、牧野に声をかけるが、返事がない。

「おい」
ベッドまで近づくと、すやすやと眠りに落ちている寝息が聞こえる。
眠っている彼女の表情は穏やかで・・・
とても穏やか過ぎて、先ほどまで自分の下で熱いため息をついていた女とは、だいぶ違う。



「まったく、本能のままに生きやがって・・・・・・、このお姫様は」


俺もそのまま牧野の傍に横たわる。
そしてお姫様が包まっているシーツを、剥ぎ取る。さっきのお返しだ。
部屋の温度も、一定に設定されているので風邪をひくこともないだろう。


堪えている笑いが、肩を震わす。起きたときの、お姫様が見ものだ。




見慣れているはずの牧野の白い肌。小さめの胸。くびれているウエスト。




ついさっきまで、自由に触れることを許されていた肌。
今は、見つめるだけで咎められそうな雰囲気の中、そっと足首に触れる。
さわり心地のいいしっとりとした肌に、触れた手をそのまま上昇させる。




牧野がスラリとした脚をもどかしげに交差させる。
「牧野?」耳元で囁くが、一向に目を覚ます気配がない。



脚に触れていた手を、もっと上昇させる。
わき腹から小さな膨らみまでを包み込むように触れた。



かすかに開いている唇から、僅かな熱が漏れる。
交差させた脚に力が込められる。




そんな牧野を見て、冷静でいられるわけがない。



「・・・・・・・なんだよ、さっきを思い出したのか?起きろよ・・・続きしようぜ」
再び耳元で囁くが牧野はピクリ、と動いただけで 覚醒するまでには至らなかった。





さっきを思い出してるのは俺か・・・
ずっと触れていたい衝動をどうにかに呑み込む。
さっきしたばかりなのに、牧野を抱きたい思いが駆け巡る。


このまま最後までいってしまおうか、とも考えるがさっきの激しすぎる濃密な時間を思いおこす。
すっかり疲れきって、すやすや眠る牧野を起こすのは忍びない・・・。






「これこそ、生殺しだな・・・・・・」






■■■■■■■




王子様が再び、目を覚ましました。どうやら、眠ってしまっていたようです。
目に入るは、いじわるそうな笑みを浮かべる愛しのお姫様。




「なんだよ、その笑い」





お姫様は、王子様の下半身を指差します。




腰に巻いていたはずの、バスタオルがありません。
そしてお姫様から剥ぎ取ったはずのシーツもしっかりとお姫様の美しい裸体を隠しています。


「な、な、な、な、なんだー!!」
「仕返し」
「仕返しって、おまえが最初に・・・!!」
「あ、じゃぁ、仕返しの仕返しか」


口をパクパクさせて、真っ赤になってる王子様。
あまりに動揺している王子様に、お姫様はかわいそうになったのか自分が纏っているシーツを半分分けてあげました。



怒りながらも、素直にシーツに包まる王子様。

そんな王子様が、お姫様は愛しくて愛しくてなりません。



でも意地っ張りなお姫様はこんなときどうしていいのかわからないのです。
そして、これまた意地っ張りな王子様も、同じ。





こんな二人だから、お互いに本当のことを知りません。







────王子様が寝ているときに、お姫様が耳元で囁く愛の言葉。
────お姫様が寝ているときに、王子様が耳元で囁く愛の言葉。






それはそれは、素敵な愛の言霊。







『いつか、気づくといい────この、想いのすべてに・・・・・・』







一枚のシーツに包まっている二人。
王子様は、そのままそっとお姫様を抱き寄せました。
今度は素直にお姫様も、寄り添います。





王子様は、うれしくて思わず、抱きしめる腕に力を込めました。
しかし王子様、ちょっと力が強すぎるのでは?


「ど・・・どう・・・みょうじ・・・く・・・る・・・し」




ほら、お姫様が真っ赤。
いいんですか?はやく力をゆるめな・・・




ボカッ!!



ほら、言わんこっちゃない。



「く、くるしーって言ってんでしょ!!」



お姫様のパンチが入った頬をさすりながら、王子様は呟きます。



「・・・・・・お前の、そーゆーとこも好きだからな」



お姫様の顔が赤いのはどうやら、苦しいだけじゃないようです。

こんな二人、お互いが素直になる日を願って・・・・・・
今日のところは、ここまで。




おしまい





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