SKY GARDEN






君の夢をみるということ   rui ***







心の奥底で動いてる、時間。


それは繰り返し、繰り返し
同じ時期を流れてるもので。




あの場所。
あの時。




もう、戻れないと知れば知るほど



帰りたくなる。



あの場所、あの時へ。
















風が吹くたびに、ザワザワと揺れる薄いピンクのかたまり。


桜並木を歩きながら、真上を見上げてみる。
暖かい日差しと、桜の間をぬって零れ落ちる光。




「ここ数年、だんだん桜咲くの早くなってきてねーか?」
「さっすが茶道の家元!わびさびって言うやつか?」


総二郎がポケットに入れていた手を出すと、そのまま前髪をかきあげた。


「・・・お前が言うと、わびさびもなんだか違うもんに聞こえんな。あきら」



笑いあう2人の声を、前方で聞きながら俺は足元にある桜の花びらを踏みしめる。
数日前までは、今よりもっと空に近い場所でみんなに見上げられ褒め称えられていただろうに。
今は、存在すらなかったことにされてるみたいだ。


俺はゆっくりと屈むとアスファルトを覆いつくしている桜の花びらにそっと手を触れた。


やわらかなピンクの花びら。
それは、ちゃんと存在していた、という証。
ちゃんと、咲き誇っていたんだよな?





「・・・・・・久しぶりに、あいつらに会ったけど・・・やっぱ変わってねーな」

あきらがたまらない様子で笑い声を零した。

「あそこは、一生あのまましょ」

どこかで聞いた事のある音楽がかすかに鳴り出したのを合図に、総二郎が舌打ちをしてジャケットから携帯を取り出す。
携帯から洩れる、声。


・・・・・・。女か。


ゆっくりと歩きながら知らない誰かとなだめる様に話をする総二郎の背中を見つめる。


もめてんの?


瞳であきらに問い掛ける。

少し前を歩いていたあきらは、いつものことだ、というように肩をすくめて見せた。

あんたらも相変わらずじゃないの、なんて思いながら苦笑する。





相変わらずといえば、牧野。
彼女の笑顔はやっぱり相変わらずで。
なんだか、あの頃に還ったみたいだ。


狂おしいくらいに咲き誇る桜と、今日の牧野の笑顔が重なって
なんだかなんともいえない気分だ。














『なんで、俺の誕生日に結婚式なんだよ』

わざと拗ねた風に口にすると、牧野は笑いながら。
それでも、口調はけしてふざけてる様子もなく。


『花沢類には、ほんとうにすごい感謝してるの。でね、司が言ったんだよ。類へのお礼はお前の笑顔だから。
だから、類の誕生日に最高の笑顔を見せてやれ、って。それが最高のプレゼントになる、って』



・・・・・・たしかにそうなんだけどさ。



『隣にいる男が気に食わない』

っていったら、呆れられた。


司のその短絡思考なんとかならんかね。
そりゃ牧野の笑顔は何より嬉しいさ。


あぁ、幸せなんだ。


って自分の目で確かめられるから。



けど、その最高の笑顔を引き出させているのが自分ではないと、実感する。



深読みすると、「もう手を出すなよ?」ってことかね。



俺だって人の奥さんには手を出したりしないさ。
あきらじゃないんだから。








だから、俺は牧野に会いたくなったらあそこに行くよ。
まだ、無邪気な笑顔で語り合ってた、あの頃のあの場所へ。








「オイ!類。お前どーする?これからあきらと茶でも飲んで帰るけど」



いつのまにか電話が済んでいた総二郎とあきらの視線を感じてゆっくりと桜を見上げていた視線を下げると
あいつらは、あの頃とちっとも変わらない笑顔で立ってた。



「んー。お茶もいいけどさ、夜飲みにでも行かない?」



総二郎たちに追いつこうと、立ち上がり少し歩調を速めた。



「お?めずらしいな、類。お前から飲みに誘うなんて」
「そうでもねーだろ?ずっと好きだった女が自分の誕生日に結婚したんだ。飲みたくもなるって。なぁ?類」



総二郎が、追いついた俺とあきらの間に入るとそのまま両腕を俺たちに掛ける。
それがなんだか、慰められてるようで。


「・・・・・・まぁね」


俺も、今日は素直に慰めてもらおう、なんて思った。


















─────やっぱり、ここへ来てしまう。
バカの一つ覚えみたいに、ここへ。


俺たちの始まりの場所だからだろうか?


結婚式帰りのスーツのまま、コンクリートに寄りかかると後頭部にざらざらした感触が広がる。
そのままズルズルと座り込むと、ゆっくりと空を見上げた。



あの頃となんにも変わらない空。
風、香り、風景。
なんも変わっちゃいないのに。



ただ、牧野がいない。



あの頃は、まだ手の届くとこにいたのにな。




なんてことを思いながら、目を瞑る。




やっぱり、総二郎たちと行けばよかったかな。
夜の時間を確認してから、別れた2人を思い出す。



夕焼けのせいか
やけに感傷的になってしまった気持ちをどうすることもできないで、ただ時間が流れてゆくのをぼんやりと見送っていた。




牧野に逢いたい。




ふわりと浮かんできた感情に、ゆっくりと布をかぶせる。
もういい加減、どうにかしないと。


昼間みた、アスファルトを覆いつくしていた花びらを思い出す。

そうだ。大丈夫。
大丈夫、別に牧野への気持ちがなくなるわけじゃない。


ちゃんと別のとこにしまうだけだ。
大事なものだから、大切に、大切に。
壊れないように、傷がつかないように。



どこからか飛んできた桜の花びらがふわりと頬をかすめる。
それは、まるで慰めてくれくれているかのように
優しく、切なく、儚げに。



そうだな・・・
たまには、ちょっと覗き込むこともあるかもしれない。
たまには、隙間から出てきてしまうこともあるかもしれない。

そんなときはここで、牧野の夢でもみながら眠りにつこう。

それくらい大目に見てくれるだろう?

けして戻れない時間を夢の中で過ごすくらい・・・・・・



─────これからのことなんて何も考えなくて、笑いあってたあの頃へ。




おしまい






■■■■■アトガキ■■■■■

ルイルイバースデー話です。
な、なのに、片想いバージョン(笑)
いいのいいの。後に甘いの控えてるから。バカップル控えてるから。わははは。

しかし、司くんもやるねー(笑)ルイルイの誕生日につくしとの結婚式!
まぁね、「つくしはオレのもの!」って示しつけとかないとね。うん。

ルイルイがんばれよー。
とりあえず、これは30日までは隠しでUPしとくかな。
まぁ、簡単だから。すぐみっかると思うけど。イヒ。

2004,3,21  momota




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