ある日の出来事 rui ***
・・・・・・絶対に来ると思ったんだ。
プッ。
プッ。
プッ。
さっきから、部屋には機械的な音が短く鳴っている。
プッ。
プッ。
「───・・・。ねぇ、司。何しにきたの?なんか話し聞いて欲しくて家に着たんでしょ?
なんかしゃべってよ。じゃなかったらTV見せてよ」
俺は司から再びTVのリモコンを奪い取ると、迷うことなく電源を入れる。
だいたい、司の来た理由など分かっている。
プッ。
司も負けじと、類からリモコンを奪い取り電源を切る。
プッ。
「うるせー!!友達が遊びに着てる時にはTVなんか見るな!」
ぽん、とTVのリモコンを司はベッドの上に放り投げた。
事の起こりは、昨日・・・
司は、牧野の友達とその彼氏・・・
俺にとっちゃ信じられないんだけど、どうやらWデートをしたらしい。
あの・・・、司が・・・
けっこう笑える・・・
まぁ、あきらからこの話を聞いたときはある意味感心したよ。
────誘った牧野に(笑)
行く、行かないでもめたけど、結局行ったらしいんだよね。んでもめて帰ってきたと・・・・・・
どうやら、あいつらからの会話から想像すると
司が、牧野の友達の彼氏を殴ったらしい。
まぁ、司は今そこら辺の男(ヤツ)をむやみに相手にするとは思えないから
きっとなんかあったんだろう。
司は、牧野にミジンコ呼ばわりされて・・・
牧野は牧野でそのまんま出ていっちゃって・・・
・・・・・・・早かったな。4日?
4日でも、もったほうか?
そんで、今のこの状況ってわけ・・・
「・・・なにがあったんだよ。昨日。なんかあったから牧野の友達の彼氏殴ったんじゃないの?」
「・・・・」
「牧野の事でもバカにされた?」
「!!なッ!何でお前知ってるんだ・・・?!」
ったく、司ってば自分が怒るのは、最近じゃ牧野がらみだってことに気づいてないんかね?
・・・・・・気づいてないか。バカだから。
「とりあえずさ、牧野と話してきなよ。これからの事も含めてさ。
どうせ、牧野も司もいじっぱりだからこのまんまで終っちゃうよ。いいの?」
司の表情が、一瞬だけ変わったのを見逃さなかった。
長い沈黙の後、司は少しづつ言葉をつなげはじめた。
「・・・・・・付き合ってるって・・・いってもさ、俺が・・・無理やり付き合わせてるみてーでさ。
俺の気持ちを・・・・・・無理やり押し付けてるみてーで・・・」
俺は、驚きで言葉がでなかった。
司が・・・、あの司が・・・
自分以外の人の気持ちを考えてる・・・?!
そんな俺の心情を露とも知らず、司は心の中身を俺に打ち明ける。
「牧野の気持ちが、ついてこれねーんなら・・・。
・・・もうだめなんかもしんねーー・・・」
司は、俺の表情に気づいたらしい。
「・・・なんだよ。お前、人の顔じろじろ見つめやがって。
俺様のかっこよさに、今頃気づいたか!!」
子供の頃からの無表情で、感情を表に出す事はまだ苦手だけど驚きだけは隠せない。
俺の驚きの表情をお前はそうとった訳だ。
はぁ・・・。こんなんで道明寺の統帥がつとまるのかね。
溜息しか出てこなかった。
「・・・落ち込んでるんじゃなかったの?まぁ、いいけど。
落ち込んでる司なんて、気持ち悪いもんね」
司の額に青筋が立ってたけど、俺は気にせずに話を続けた。
「俺は・・・、牧野もけっこう司のこと好きだと思うよ」
司の顔が固まっている。
あっという間に、表情に自信が戻ってきた。
「ホントかっ!!そう思うか?!」
──────言うんじゃなかった・・・。
「あぁ、チラッとね。チラッとそう思っただけ」
「そうか〜。類がそう思うんなら、そうかもな〜。お前は何気に人を見る目があるからなぁ〜」
聞いちゃいねー・・・。
浮かれてる司に何を言っても無駄だと思ったけど、俺は話し続けた。
「素直になりなよ。じゃなきゃ、上手くいくものも、いかないで終るよ。
考えてごらんよ。あの牧野だよ?あのスーパー、ウルトラ鈍感の牧野だよ?
そこら辺にいる女と同じに考えてたら、とんでもない間違いだよ」
再び、司の表情が曇ってきた。
「・・・そんなことわかってんだよ。・・・最初から。
そこら辺にいる女だったら、好きになるかよッ」
吐き捨てるように呟いている司の携帯が突然鳴る。
司は不機嫌そうに、電話に出た。
「誰?」
ひどくぶっきらぼうな、司の声。
『─────』
微かに、電話から女の声が聞こえる。
「あ?誰だよ、てめえ」
『─────』
「・・・なんだよ」
司の顔が、赤くなった。
声がわずかだが、うわずっている。
この時点で、電話の相手が牧野だと俺は直感した。
「知らねーよ。今、類の家にいるんだよ」
『──────』
「・・・なんか、あったのか?」
「今、どこにいる?」
「おい!切るな!バカ!」
返事の無い電話相手に、司はいらだってきているようだ。
『─────』
「表参道だな?!いいか、そこ動くな!今からすぐ行くからじっとしてろ」
電話を荒々しげに切ると、司はジャケットを羽織り、飛び出していった。
ったく。一言ぐらい、なんかないのかね。
勝手に来て、勝手に帰って・・・。あいつに振り回されてばっかりだな。
・・・・・・寝よ。
♪♪〜♪♪♪〜♪♪♪
・・・・・・?
で・・・んわ?
枕もとに置いてある、腕時計で時間を確かめる。
AM4:50
・・・。
携帯がこれでもか、というように鳴り響いている。
もう、だから携帯ってヤなんだよ。
こっちの都合お構い無しでさ!!
・・・・・・・それでも、携帯の電源を切らないのは
─────親友の彼女からの電話をまっているから・・・なのかもしれない。
着信を見ると、司からだった。
そのままにしていたら、きっとまた家にまで押しかけるに違いない。
俺は、そうなってたまるものかと携帯を手に取った。
「・・・なに?」
『お、類か?!寝てたか。ワリ!』
「俺じゃなくても普通はこの時間寝てるでしょ。・・・なんか用?」
いやみをこめたつもりだったんだけど、司には通じない。
『お、おぅ・・・。じ、じつは・・・』
「なんなのさ。早くしてよ!いいたいことあるんならさ」
『あ、あ、ありがとな』
俺は思わず、携帯を耳から離し、マジマジと見つめた。
いつもの携帯。何の変わりも無い。
『牧野と、あれから話合ってよ・・・。そ、そんで・・・
ど、ど、どうやら、俺たちチャーミングポイント迎えたようだぜ』
「・・・チャーミングポイント?」
「おうよ。じゃ、悪かったな。寝てるとこ。じゃあな」
一方的に切られる電話。
残された類には、疑問が一つ。
「チャーミングポイント?」
口に出してみるが、やはり意味がわからない。
まぁ、いいや。もう牧野との仲は落ち着いたんだろう。
・・・でも、俺らって何回あいつらのゴタゴタに巻き込まれるんだろうな。
絶対、また来るだろうな・・・
あの、司の青筋が・・・目・・・に・・・うか・・・ぶ・・・
プッ、でも・・・あいつが・・・あり・・が・・とな・・・だって・・・
そんなことを考えてるうちに俺は、また深い眠りについていた・・・。
そして、その夢の中でも司と牧野は言い争っている。
俺たちはあきれたように微笑みながら、そんな2人をいつまでも・・・
不覚にも・・・いつまでも見ていたいと、思ったんだ・・・・・・・
おしまい
→text →nijitop
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