SKY GARDEN
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仔類   Scene1(流星花園2より)







繰り返す日常。
穏やかな日常。
そこに、牧野がいる日常────








砂浜で、海を眺めているとそれだけでナゼか癒された気分になるから不思議だ。
この街に来て牧野が相手をしてくれない時は、よくココで一人で座ってた。


そうすると、こんなゆったりと流れる時間がずっと永遠に続くようで。
牧野と過ごせるささやかな幸せは、まるで英徳の非常階段みたいで。
居心地がよかったんだ。



今日は隣に、トクが座ってて。
きっと牧野が見たら、似合わないカップリングだ、って笑うだろうなんてぼんやりと考えてた。


「お前らって、なんか変な関係だな。つくしは友達だって言い張るし」


トクはまじまじと俺の顔を眺める。
そう言われた俺は、曖昧に笑うことしか出来なくて。
そしてそんな俺を、トクはまた不思議そうな顔で眺める。


「けど、好きなんだろ?」
「ん。かなりね」


横に並んで座るトクの肘がわき腹に入る。
いきなりで、不本意ながらケホっ、と少し咳き込む。
恨めしげに睨むと、トクはめずらしく人懐っこい笑顔で声を出して笑った。



「・・・・・・アミが言ってた。あの二人には見えない絆がある。ってよ」



不意に、泣きじゃくるアミを思い出した。
昨日トクが逮捕された時だ。
兄への思いをなかなか素直に出せずに困惑したよう悪口を並べながら泣くアミは
いつもの気の強い彼女とは違って、小さくて、幼くて。
彼女の根底にあるしっかりとしたトクへの愛情は、ポンっと軽く背中を押してやるだけで
あっさりと解放された。
そーゆのも、ちゃんと繋がってるって言うんじゃないの?


「俺から見ると・・・あんたたち兄妹もしっかりとした絆みたいなの・・・見えるけど?」
「・・・そうか?」


照れたように笑うトクのわき腹を、今度はこちらから肘をお見舞い。
やっぱり、トクも少し咳き込んだ。


咳き込んだついでに、コホンと小さな咳払いをすると
トクは言いづらそうに顔をしかめる。



「・・・つくしは、指輪のせいで・・・ここまで逃げてきたって言ってた。俺のせい・・・か?」



トクの心配そうな表情に、牧野の寂しげな笑顔が重なった。
フルフルと顔を横に振る。
トクのせいじゃない。そして司のせいでもないし、牧野のせいでもない。



なにもかものタイミングが悪くて。
もし神さまがいるなら、絶対にプログラムミスだ、と認めると思う。



今まで何もかもを捨てるほど好きだった相手が記憶をなくして。
記憶を失くしてるだけならともかく、違う女を愛している。



全てを賭けた愛が目の前で崩れる音を聞いたはずだ。



そんな音を聞いたら、逃げ出したくなるのは当たり前だ。





「・・・・・・あいつは・・・・・・」
「・・・あいつは?」



トクが俺の言葉の続きを促した時、不意に香る、牧野の香り。
ゆっくりと伸びる影に後ろを振り返ると、牧野が笑ってた。



「こんなとこにいたの?」
「あぁ、牧野は散歩?」
「ん。アミに頼まれて。トクのこと探してたよ」



やべぇ、とトクは慌てて立ち上がると牧野の頭をポンポンと優しく叩いた。
俺たちはトクの焦って砂浜を駆けてゆく後姿を見送りながら、何度も転びそうになるトクに、牧野と顔を見合わせて笑う。
牧野は今までトクの座ってた場所にゆっくりと腰を下ろした。
そのとき、さらりと腰まである長い髪が俺の頬に触れた。



それだけのことが、なぜかとても切なくて。



こんなに近くにいるのに。
髪が触れ合うほど、近くにいるのに。



今、自分の感情を飲み込み消化しようと頑張っていている牧野を抱きしめると壊れてしまう気がして。



抱きしめることすらできない。





こんなに





近くにいるのに。








「花沢類・・・・・・仕事・・・いいの?」
「なんで?」
「あたし、一人でも平気だよ」
「俺がいちゃ、迷惑ってこと?」



ブンブンと慌てて顔を振ると、真っ赤になって否定する。



「違うよ。違う。美作さんとか・・・すごい忙しそうだったでしょ・・・?」



ついこの間、シノと2人でチェロの修理に来たあきらの話を聞いてたらしい。



「あきらは、あきら。俺は俺、ってことで」
「でも・・・」
「俺が傍にいたいからいるんだ。利用できるもんは、何でも利用しなよ」
「花沢類・・・・・・」



なに?と視線で問いかけると牧野は寂しげに微笑んだ。



「ありがとう」
「・・・・・・大丈夫だよ」



なにが大丈夫なんだろうか。
司のこと?今の状況のこと?
根拠のない慰めが一番牧野を傷つけてるのかもしれない。
そんなこともチラリと考えるのだけど。
他に上手い言葉も見つからず結局は、ありきたりな言葉を吐き出すだけで。



「大丈夫だ」



そんな顔して、ありがとう、なんて言うなよ。





心臓が、ぎゅっと掴まれたみたいに痛い。
こっちが泣きたくなるじゃないか。
情けない顔をしてる俺を見られたくなくて。
牧野の視線から逃れるように俯いた。














「家に帰りたい」



丁度、小道に入ったとこだった。
両サイドを縁取るような濃い緑が目に染みて、そんな緑の間から光が洩れて
小さなブロック状の影をほんの少し上り坂になってる道に映してた。
前を歩く牧野の背中に視線を移したとき流れ込むように届いた牧野の言葉。



「じゃぁ帰ろう」



自分でも驚くほど、さらりと言葉が出た。



「うん、明日ね」



「それとって」「はい」ってな感覚で答えが返ってきた。



───返すなら、今かも。
台北に戻ってからじゃ、また牧野が傷つくかもしれない。
俺は、ポケットにそのまま詰め込んでいたものを取り出した。



「牧野、あんたに返すものがある」
「なにか貸してたっけ?私の方が・・・」



牧野の言葉の続きを待たないでグイと腕を引くと、そのまま牧野の掌にソレを握らせた。
アミから返してもらった指輪。
皮肉なもんだ。司との幸せを願って教えた教会の伝説、司が選んだ指輪。
それを今、こんな状況で俺から牧野に渡すことになるとは・・・



「なん・・・で・・・花沢類が・・・」
「大事なもんなんだろ?」



言葉に詰まりながら何度も、俺と指輪を見比べる。



「花沢類・・・・・・」
「アミと交換したんだ・・・・・・その方がイイ」



コクリと牧野の喉が鳴る。
何かを決心したかのように伺える表情(かお)は、今までよりも少しだけさっぱりとしている。



「この指輪の物語は、終わったの」



そう牧野が言い放った瞬間、キラリと空で何かが光った。
カチンとした音で、指輪を放ったことを知る。





「これで本当に終わり」





ふわり、と微笑む牧野に、たまらなくなる。
もう、ダメだ。こんな牧野の笑顔見たくない。
ずっとずっと押し込めていた言葉を、今吐き出す。





「・・・俺と静の物語も終わった。終わる物語もあれば・・・始まる物語もある・・・・・・」



牧野がキョトリと首を傾げる。



「牧野。俺と日本に行こう。意味分かるよね?」



いいよな?もう。
充分だ。
充分苦しんだ。



みんな傷ついた。
もう、楽になってもいいんだ。



「司を探してたとき、俺らから逃げる司に言ったんだ。過去は忘れても、牧野のことは忘れるな、って。
けど、もういいんだ。俺が司の代わりになるから。俺がそのまま引き継ぐから」



ゆっくりと牧野の肩に手を置くと、瞳を見つめる。
黒くて大きな瞳に映るのは、戸惑いと緊張。



口唇を重ねると、ピクリと反応した。



触れ合ったほんの少しの場所から伝わる緊張は、少しづつ消えうせて。



「つらいよ・・・ずっと胸の奥が痛かった・・・あたし大声で泣きたかったんだよ・・・花沢類」



はらはらと零れる涙はキラキラと太陽を反射してて。
眩しさに目を細めた。
そして、初めて本心を語ってくれた牧野を強く抱きしめる。



早く。
もっと早く言ってくれたら、抱きしめてあげれたのに。
もっと早く、弱音を吐いてくれたら全てを受け止めて、楽にしてあげれたのに。



やっぱりあんたはいつも、タイミングが悪いんだ。



それでも
ゆっくりと俺の腰に回された腕から伝わる熱は、体の芯が蕩けそうなくらい嬉しかった。





抱きしめることを。
触れられることを。

本当は、司の記憶が戻らなければいい、なんて思ったことも。



全てを許されたようで。





────嬉しかった。






















「花沢類が来てくれて。傍にいてくれて、すごい嬉しかったんだ」


そんな告白を聞いたのは、日本に着てからだいぶ経った頃。


「そうなの?」


「毎日が辛くて。痛くて。悲しくて。
すべての感情を捨ててしまいたかった。
そんな中、アミのお店で花沢類の顔を見たとき・・・・・・すごく安心したの」


「まだ、こんな感情残ってたんだ、って思ったらすごく嬉しかった」そう言って笑った。



優しくて、暖かくて、ほんのちょっぴり切なかったあの街での時間。
不器用で意地っ張りな人たちの中で過ごした時は、俺の中で優しく流れていて。
牧野の中でも、そうあるのだろうか?
そうあってくれればいい。
そう思いながら、日本語のテキストをぱたりと閉じた。


「来週あたり、台湾に行こうか」
「ほんと?」
「アミのカキ氷。食べたくなった」
「あはは、あたしも」



そう言って笑う牧野の顔は
もう寂しさなんてものは映してなくて。




それが全て自分のおかげだ、なんて思ってないけど。






・・・・・・でもほんの少しは思ってもいいよね。








繰り返す日常は大事なことを忘れがちだけど。



牧野がいる日常。
そんなことに感謝しながら────





こんな毎日が、ずっと、ずっと続けばいい。





そう、願うよ。







おしまい




2004,12,23    momota




このお話は、ぴのこさんのお誕生日プレゼントに書いたお話です。
なので、ぴのこさんのリクエストに沿ってみました(*^O^*)

「流星花園2」の終わり方に納得が行かない。
どうして杉菜は類を選ばないのかッッ!との叫びが届きまして(爆)

なので、流星2を見てない人はまったく解らない内容だと思います。
すみません。
おまけに、旭派の人は望んでない結末・・・
これもすみません。
時間軸も大変、怪しいです。
ほんとにすみません。


全ては日本放送版の構成がおかしいのかと・・・←人のせいかよ
だって、あれ(流星2)絶対納得いかないもん。
流星1のように、大事な所カットしてないか?
↑バス停シーンカットはイタイぞー?

でもね、まだ流星1はよかった。原作にすごく沿ってたしラストもすごくかわいくって・・・

あ”ぁぁぁ〜〜〜〜
なんで類を選ばない?
類とアミをくっ付ける気か?←!!

あ”ぁぁぁぁぁ〜〜〜〜〜



momota







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