司 Scene2
今日こそはっ。
今日こそは、しっかりと伝えなくちゃ。
あたしは、ガラにもなく手に汗握っちゃったりして。
前を歩く広めの背中に向って、大きく深呼吸。
「つ、司っ!!」
ゆっくりと振り返る司は、なんだかやけにかっこよく見えて。
クラクラしてきた。
「なんだよ」
「・・・・・・な、なんでもない」
しゅるるるる、としぼんでゆくさっきまでの勢い。
や、やっぱりだめだ。
司の顔見ると、言えないっ。
ヘンなやつだな、なんてブツブツ言いながらあたしに近付く司。
ふわりと香る、司の香り。
何度か抱きしめられたことのある、広い胸。
ほんの少し、心配そうな瞳。
あたしの目に映る司は、何もかもが完璧で。
そんな司から何度も何度も告げられた「告白」。
いつもそれに、勇気付けられたり安心したり。
司が「好きだ」と言うたびに、あたしも司が好きだと実感する。
司が「好きだ」と言うたびに、この想いが大事なものだって実感する。
だから・・・
あたしも、ちゃんと自分の想いを司に伝えないと。
司に幸せをもらう様に、あたしも司に幸せをあげたい。
そう、思うのに。
いつも、そう思ってるのに。
すっと、腕が伸びてきたと思ったら、司の体温の高い掌がおでこに触れた。
「具合でもわりーのか?」
んもうんもうんもう。
なんでそんなに優しいのよ。
普段は憎まれ口ばかり聞いて。
乱暴で、強引で。
それなのに、二人になると急に優しくなる。
急に「男」になる。
そうなると・・・自分が「女の子」なんだ、ってすごく意識するの。
それは、すごく甘酸っぱい感情で。
胸の奥が切なくて。なんでだか泣きたくなるんだよ。
嬉しくて、恥ずかしくて、泣きたくなるんだよ。
「熱は・・・ないみてーだぞ?」
ほんの少し屈んであたしの顔を覗き込む司に、あたしは涙目で訴える。
「司、後ろ向いてっ。んで、2,3歩前に進んでっ」
グイグイと司の背中を押すあたしに、文句を言いながらも結局はそれに従う司。
うん、もう、今しかない。
ちゃんと言わなきゃ。
大事にしてくれてありがとう。
大切にしてくれてありがとう。
あたしも、司のことが好きだよ。
「司っ!」
「なんだよ」
あたしの声に反応して、くるりと振り返る司。
びっくりしたあたしは、たまらず大声が出てしまう。
「見ちゃだめっ。まだ正面見て言う勇気ないっ」
司は渋々、クリクリの頭を掻きながら素直に前を向く。
あたしはゆっくりと目を閉じる。
そして、目の前にいる司を想像する。
夕焼けを正面から受けてる司はきっとオレンジ色に染まってる。
ポケットに親指を入れて、つまらなそうに・・・そしてちょっと不貞腐れ気味に佇んでる。
まだ、正面から言える勇気はないのだけど
この想いだけはホントだから。
大きく深呼吸。
ちょっと声が震えちゃうかも。
「司、ちゃんとあたしも好きだからっ」
足が震えてる。
あぁ、指もかも。
司?どんな顔してる?
ゆっくりと片目を開けた。
目の前にいる司は、さっきと幾分変わりなく・・・
広い背中を向けてるだけ。
あたし、ちゃんと幸せ、分けてあげれた?
いつまでたっても何の反応もない司に、たまらず声をかけた。
「司?」
「おう」
「今の・・・ちゃんと聞こえた?」
「おう」
それでも、動きもしない司にゆっくりと近付くと
そこには真っ赤になった頬を隠すように掌で口元を覆っていて。
不自然に視線を逸らしぎみの、愛しい人。
「わり。俺も正面で聞いてたら押さえきかなくなってた」
モゴモゴと掌の透き間から聞こえた声は、いつもの自信満々の司の声じゃなくて。
普通の、少年のような・・・・・・声だった。
おしまい
2004,10,8 momota
一体いつ頃の話なんだろう?(苦笑)
付き合い始めかなー?呼び捨てしてるしなー(笑)
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