総二郎 Scene2
「セックスの意味なんて、そんなたいしたもんじゃなかっただろ?」
類を待つ、大学のカフェ。
目の前に座る牧野が、きょとんとした顔をして俺を見つめ返した。
「は?なに?急に。どうしたの?西門さん」
たしかに。
いきなり何聞いてんだ、俺。
もっと前フリするべきだろう。
が、もう遅い。
きょとんと、見つめ合う俺と牧野。
第三者的にその様子を想像すると、ものすごく間抜けな感じがした。
なんだかここに来て、やけに雰囲気の変わった2人を見る機会が多くて。
ずっと気になってたこと。
特に牧野。
コイツ、最近やけにいろっぺーんだよな。
絶対、やったんだろ。
類の口を割らすのは難しいと判断した俺は、牧野を攻めることにする。
しかし、直球で聞いちゃ牧野だってひくわなぁ。
まぁ、でもこの際しょうがない。
グイ、とテーブルの半分まで体を乗り出した。
けど、それと同時に俺が出た分牧野が後ろに引いた。
「つくしちゃ〜ん」
「西門さんが、そう呼ぶときってほんとろくな事ないのよ」
ここまで来て逃げられないと判断したのか、牧野はいつもと違って大人しめの抵抗で。
ほら、やっぱなんか違う。
俺の想像は確信に変わる。
「とうとう、鉄のパンツ脱いだわけだ」
「・・・・・・西門さんには関係ないでしょ」
「まー。そうなんだけど。牧野には俺たち散々振り回されただろ?お知らせぐらいあってもいーんじゃねーの?」
「なによ、それ。勝手な言い分」
ふん、と牧野は椅子の背に寄りかかった。
「ナチュラルに心配してんだよ。ま、親心みたいなもんだ」
俺も、気にしすぎてると思われても面白くない。
あっさりと元の位置に戻ると目の前のアイスコーヒーを流し込む。
「親は娘に処女かどうかなんて聞きません」
ツンと横を向くと、視線をあわせないようにまわりを見渡しながら呟く牧野。
「ほー、言うようになったねぇ、つくしちゃん」
「だからつくしちゃんって呼ばないでよ、気持ち悪い」
牧野は不機嫌そうに、テーブルの下の脚で俺の脛を蹴りつけた。
俺も負けじとやり返す。
何度かやりあったとこで、どちらからともなく笑い出し
結局最後はなんでやりあってんのかわからなくなって、ばからしくなってやめた。
それからはなにを話すでもなくのんびりした時間が過ぎる中、牧野がだいぶ伸びた前髪を耳にかける。
そんな仕草に、うっとりと見入ってしまった俺。
なにやってんだか。
自分に突っ込みを入れつつ、視線と思考を遠くに泳がせている牧野の手元でテーブルを軽く叩いた。
「で、実際のところどうよ?うまくいってんのか?類と」
「まぁね。類はいつもあんな感じだし。付き合ってるって言っても今までとそんなに変わらないよ」
「そか」
テーブルの上で携帯のストラップをいじっていた手を止めるとふわりと牧野が微笑む。
ドキリと心臓が鳴る。
───牧野?
そんな風に笑うなよ。
なんだか胸の奥がざわつくんだ。
「遅かったね」
俺の後ろに向かって発せられたセリフに、慌てて振り返った。
そこには不機嫌そうな顔をした類。
「なに?総二郎。人の彼女口説かないでよね」
「口説いてねーよ!」
「牧野、お待たせ。行こう」
「あ、うん。西門さん、じゃあね」
あっさりと別れを告げた牧野。
そんな彼女になんて言っていいかわからずに、俺は視線だけを送る。
少し慌てながらテーブルの上の携帯を小さなカバンに詰めると、牧野は少し先を行く類の後を追うように席を立った。
「あ、そうそう。西門さん。忘れてた・・・・・・」
「なんだよ」
「セックスの大切さわからないなんて・・・西門さんも、まだまだだね」
ナイショ話みたいに耳元で囁かれて。
すこし擦れたような声に、体が縛り付けられたみたいだった。
絶句する俺の横を、意味ありげに微笑みながら通り抜ける牧野を視線だけで追う。
「んだよっ!どっかのアニメのキャラみてーなせリフ言ってんじゃねーよ。あんなもんただの行為だろうが!」
俺がやっと牧野の声から解放されたときは、牧野はもうだいぶ先にいたのだけど。
何にも言い返さないのも悔しくて、聞こえるはずのない牧野の背中に向かって声を上げた。
セックスに、快楽しか見出せない俺の
負け惜しみのように聞こえるかも・・・そんな風に思いながら
おしまい
2004,10,8 momota
ニッシーは、どうなのかなー?
つくしのことは、からかいの対象でしかないのかしら?
なんてこと、思いつつ・・・(苦笑)
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