SKY GARDEN
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類   Scene9








きょとんとした顔を隠しもせず、真っ直ぐな意思を伝えるかのように視線を送る類。



───あたしは、この視線に弱い。














「はぁ・・・・・・」



なんだか、こめかみの辺りが重くて。
その重さを確かめるように、親指で強く押してみる。
読んでるフリだけの本を閉じると、深くため息をつく。



「なんなのさ、そのため息」



ほんの少し、不貞腐れたような口調。
あたしは、あたしの隣でまったく同じかっこで寝転んでいる
その言葉の主をチラリと見ると再び、親指でこめかみを強く押す。



「別に・・・・・・」



あ。やば。今の言い方、かわいくなかったかも。
なんてことも思ったけど・・・・・・
でも、元はといえばこのイライラの原因は類にある。



「・・・・・・なんか、イライラしてるの?」



ゆっくりとあたしに向けられた、類の細い指先。
これでもか!とギューギューとこめかみを押し付けていた指先を遮られた。



いつもなら、そんな仕草が嬉しくてしかたないのに。
今日は、違う。





「なんで、言ってくれなかったの・・・?」



声が震える。





「なにを?」



あたしの親指を握ったままの類の指先に、ほんの少し力が篭る。





「・・・・・・お見合い、したこと・・・・・・」



ふい、と類の指先を振り払うとあたしは類のベットから起き上がる。



実際、ヤキモチなんだけど。
ヤキモチ焼いてるのを、類に知られたくなくて。



赤くなってるであろう顔を冷やすべく窓際まで来ると
そっとおでこをひんやりとしたガラスにくっつける。
少しづつ染み入る冷たさに心ん中も落ち着いてくる。





「だって、言う必要ないでしょ?」



・・・・・・言う必要ない?



後ろから聞こえた言葉に、せっかく覚めてきてたものが再び込みあがってきて
ずかずかと、類の前まで戻る。





怒りで呼吸も荒くなる。
でも、なんでこんなときって泣きたくなるんだろう。
怒ってるのに。
彼女にだまってお見合いして。
しかも、そのお見合いについて問い詰めたら、『言う必要ない』なんて言われて。



悔しいのに。
怒ってるのに。



「な、なんで言う必要ないのよっ!!あたし、類のなんなの?!」



ハァハァと肩で息をしつつ、一気にまくし立てた。



「・・・・・・ったく、いつも言ってるでしょ。話は最後まで聞けって。あんたの場合ただでさえ早とちりなのに。言う必要がない、ってのは元々断るつもりのモンだったし。まぁ、話を持ってきた親の面子もあるだろうから形だけ、ってことで食事しただけだし」



なんで怒っているのか分からないという表情で言葉を放つ類に
我慢ができない。



「そういうのを世間一般では「言い訳」っていうのよっ」



悔しくて、涙がいくらでも出てきそうだ。

このまま、あたしが問い詰めなかったら内緒にしてるつもりだったの?

類のご両親のオススメの人だったら、さぞかしキレイで立派なお嬢様だったんだろう。
類とお似合いだったんだろうな。

見たことないのに、類とのツーショットを簡単に想像できた。


やっぱり、その二人はとってもお似合いで。
お似合いで・・・・・・





「・・・もー。泣く必要ないでしょー?」





類の言葉で、初めて自分が泣いてるのに気づく。
ゴシゴシを目を擦りながらゆっくりと呼吸を整える。



「・・・・・・もしかして誰が相手か知らないの?相手・・・・・・大河原だよ?」






ハイ?






ゆっくりと顔を上げると、類のちょっと困った顔があって。
めずらしい類の表情に、思わず怒りの原因忘れたぐらいで。





「・・・・・・し、滋さん・・・?」
「そ」



道理で、あのお祭りコンビが嬉しそうにあたしに言うハズだ。
してやったりの、西門さんと美作さんの顔が思い浮かぶ。





くっそーーーー。





「・・・でも、牧野・・・お見合いのこと誰に聞いたの?」
「西門さんと、美作さん・・・・・・」



なんだか、あの2人に踊らされてた自分を想像すると大変恥ずかしい。
ふと視線が交わると、なんもなかったかのように微笑まれた。





「でも、嬉しい」



再び、類につかまるあたしの指先。



「う、嬉しい?なんで?」



声が裏返りつつ、後ずさり。



「牧野の、ヤキモチ」



ニヤリとした類の口元。
グイと引かれた、両腕。



真っ直ぐな、類の視線。
そらすことすら許されない、ライン。





やっぱり、これに・・・・・・弱い。





あたしは、降参の意味を含めて
ゆっくり近付く類の口唇にあわせて、瞼を下ろした。






おしまい





2005,4,15   momota





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