SKY GARDEN
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類   Scene3










消毒薬の立ち込める部屋で、掌を額まで持ってくる。
なんだかこの部屋だけ、空気が重い気がする。
ただそれだけの動作が、とても億劫だから。



特に具合が悪いわけでもない。
それは突然くるんだ。



初めは耳鳴りがしてきて。
そのうち、床が回り始める。



ぐるぐるぐるぐる。



指先が冷たくなってきて。
足元もフワフワしてきて・・・・・・もう、こうなってくると立っていられなくなるんだ。






「はー・・・」






いつもより少し深めに息を吐くと、消毒の匂いのする空気を吐き出した分と同じ分だけ吸い込む。




「類。起きたか?」




遠慮がちに一歩を踏み出したあきらの影に、ついさっきまで一緒にいたことを思い出す。
あきらは横になってる俺の顔を、心配そうに覗き込んだあと言いにくそうに口元を緩めた。




「・・・・・・ストレスじゃねーかってよ。医者が」




「ん。なんかそんな感じだよね。昔思い出した」




苦笑した俺とは逆に、あきらが怒ったような・・・それでいてひどく悲しげな顔をしたので
俺は、笑うのをやめた。




「・・・・・・牧野だろ?」
「なにが」
「お前がそーなってる原因」
「ちがうよ」




あまりの即答が、かえって不自然だ。


まるで、そう質問されるのを待ってたようだ。





「・・・・・・俺は、別にお前が牧野を好きでも構わないって思ってる」
「・・・あきらが構わなくても、牧野が・・・・・・司が構うよ」
「だから、それを解った上での気持ちだろ?」



俺は誰の味方もしねーから、そう言って笑うあきら。
けど。






知ってるよ、俺。






お前はいつも、負けそうな・・・・・・弱い方の味方になるんだよな。






「・・・・・・俺、好きでいてもいいのかな、あいつのこと」
「・・・あぁ、いいんだよ。無理して諦めんな。・・・・・・失くそうとするなよ。体おかしくするくらい大事なモンなんだろ?」





ゆっくりと額に触れられたあきらの指先が、ほんのり温かくて。
なんだか涙が出そうになった。





そして
このまま、もう少しだけ牧野を想いつづけようって、思った。




おしまい





2004,7    momota






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