SKY GARDEN
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類   Scene2









1年の中で、たった1日牧野を思い出す日がある。


どんなに忙しくても。
どんなに時間が過ぎても。



俺は思い出すんだ。












特に約束していたわけでもなく。
街中をぷらぷらしていただけ。




牧野と会ったのは、昔、司や大河原と偶然出会ったカフェ。
あの時は寒かったけど。


今日は暑いくらいで。
羽織ってたシャツを腰に巻く。


半そでのTシャツから出る腕は、気味が悪いくらい白い。
まぁ、もともと色が黒い方じゃないけどコレじゃあまりにも白すぎる・・・
少しは陽に当たろう・・・


なんて自分の腕を眺めながら、店員が持ってきたアイスコーヒーを受け取る。



何気なく、店内を見渡すと
俺と張るくらいの・・・いや、向こうのほうが勝ってたかも。



白い腕の持ち主が目に留まった。



その腕の持ち主もやはり半そでのTシャツで。
俺はそのまま視線を上げると、見慣れた顔があったことに驚いた。




「牧野!」




俺の声に、顔を上げた牧野は
声を掛けた男の顔を確認すると、ふわりと微笑んだ。




いつもの、顔で。
いつもの、声で。




「花沢類!」
「こっちくれば?」




席を移動した牧野は、偶然だね?と喜んだ。



けれど俺はなぜか自分よりも白いその腕から目を離すことができなくて
チラチラと会話を楽しんでいるふりをしては、牧野の細くて白い腕を盗み見た。






なんでこんなに牧野の腕が気になるのかわからない。
女の腕なんて、こんなもんだろ?実際。




細くて、白くて。







けれど牧野は、この細い腕1つで司を支えてる。







たった一人で

司を信じて

待ち、帰る場所を作り、笑ってる。







「花沢類は、買い物?」
「いや、ただの散歩」
「あはは、今日はすごいいい天気だもんね」
「ん、いい天気で俺のタンジョービ」
「あ!そうなの?おめでとうだね」
「この年になっても、おめでとう・・・・・・?」
「いくつになってもおめでとうだよ」



牧野は自分のことのようにうれしそうに笑う。
それにつられて俺もこっそりと笑うんだ。



そんな俺を見て、ますます牧野が笑い出して。
笑いながら店を出た。







「花沢類、これからどうするの?」
「俺?・・・そろそろ帰ろうかな・・・と」



そっか、と自分の腕時計を見つめる牧野の仕草に
再び白い腕が目に入る。



無理やり、そこから視線を外す。
それでも、どこに視線を置いていいか分からないまま
結局、自分の白すぎる腕を見ながら付き合い始めのような誘い方。




「・・・・・・なんも用事なかったら、おれんち来る?」




我ながら、めちゃくちゃこっぱずかしい。




正直言うと下心がなかったわけじゃない。
牧野に触れたかった。




触れたら、司のこと考えてるあんたの頭
少し俺のことも入れてくれるかな?なんて思って。




牧野の白すぎる・・・細すぎる腕に抱きしめられるのを想像した。









「なんか久しぶりかも・・・・・・」



俺の部屋に入った牧野は、独り言のように呟いた。




「あー、久しぶりだね、確かに」
「全然、変わってないんだね」



なんでそんな寂しそうに言うの?



「変わったほうが、イイ?」
「あ・・・そういうわけじゃないけど・・・相変わらず寂しい部屋だな・・・って」



ゆっくりとベットに腰を下ろす牧野。



おいおいおい、俺も男なんですけど?
そんなとこに座る意味、あんま考えてないでしょ。



こんな場面司がみたら、きっと卒倒するだろうな。




なんてことを考えながら、わざと、牧野の隣に俺も腰を下ろした。




途端に走る緊張。




初めはからかうだけのつもりだったんだ。
けれど、牧野が大げさに驚くから。




触れてしまった白い腕。




無意識のうちに、きつく掴んで。




自分に引き寄せて。




口唇を落として。




優しく触れて。




牧野が嫌がればすぐにやめるつもりだった。




やめるつもりだったんだ。




なのに。
そっと瞳を閉じたりするから。




震える手を背中に回したりなんかするから。






─────おかしくなる。





































俺は自分の誕生日が来ると思い出す。



けして交わることのなかった俺たちの道が、重なったたった1日。



牧野の恋人になれた日のことを。





おしまい




2004,7   momota





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