類 Scene14
「一年に一度しか会えないって、どんな感じなんだろう……」
珍しく、類からのお誘いデート。
それだけでも珍しいのに。
今日は一年に一度しか会えない、彦星と織姫のデートの日。
なんとなく滅多に会うことのできない自分たちと重ねてしまい、ほんのり曇る空を見上げてみる。
そんなあたしにつられて、類もストローを咥えたまま、あたしの視線の先を追う。
「あぁ、七夕だっけ?今日」
何度か瞬きをした類は、ゆっくりと微笑んだ。
「そう。なんかあたしたちみたいだよね」
1年に1回とは言わないけど、1ヶ月に1度会えればいいほうだもん。同じようなもんだ。
イヤミを込めたつもりなんだけど、当の本人はしらんふりで。
「どうりでカップルが多いと思った」なんて、言いのける。
ガラガラとした音を立てて、ストローからカフェラテを吸い上げたあと
空になったカップを、ゴミ箱に向かって放り投げた。
綺麗な弧を描き、きちんと納まってしまうところが憎たらしい。
この人には、失敗という言葉は無いのだろうか。
「一年に一度しか会えなかったら…、イヤミとか言ったりしないんだろうねぇ」
ニヤリと、意地悪な笑みを向ける類。
(こ、こいつ〜〜〜〜)
「イヤミよりも、愛を囁くのが先なのかもね。織姫だって、いつ彦星に愛想を尽かすかわかんないもんね」
ふふん、と得意気に言い返すと、類は一瞬真顔になる。
あ、やばい。言い過ぎたかも。なんて思うのだけど。
最近彼氏ができた優紀を見てると、うらやましくて仕方がないんだもん。
会いたいときに会えて。
時間を気にせず抱き合えることに、嫉妬すら感じる。
優紀が悪いわけでも。
類が悪いわけでもない。
頭では分かってるのだけど、感情が上手く整理できないんだもん。
これくらいの意地悪、言ってもいいでしょう?
困ったような類と視線が合うと、あたしはプイと、横を向いた。
ふーん、だ。
でも、何度も「コレくらいの意地悪たいしたことない」と自分に言い聞かせているのに。
なぜか、心のどこかに引っかかるものがある。
それはやはり、今日――――七夕の所為。
ほんの少しの雲の切れ間から、細かな星がチラチラと見える。
そこでは、1年ぶりの逢瀬を楽しんでるカップルがいるのだろうか。
フゥと無意識に、ため息が出た。
ここぞとばかりにケンカを売るあたしは、やっぱり織姫には程遠いのだろう。
勝手に親近感を抱いていたけれど、
きっと、織姫は素直に甘えることのできる女の子に違いない。
だから彦星は1年もの間会えなくても、織姫を想い続けてるのだ。
なのに、あたしってば。
素直になれずに、可愛くない態度ばかり。
今日だって、「久しぶりに会えて、嬉しい」って素直に伝えればいいのに。
口から出てくるのは、類を困らせることばかりで。
こんなんじゃ、あたしのほうが愛想を尽かされるっつーの。
ありえないことじゃない、と考えて、自分から売ったケンカなのになんだか泣きたくなってくる。
瞳が潤いすぎる前に、とゴシゴシと瞼の上から
両手で擦る。
そんな時、不意に香る類の香り。
顔を上げると、類が真正面に来ていて。
あたしの両肩を掴むと、ゆっくりと類の整いすぎてる顔が近づいてくる。
なんだなんだと、戸惑ってるうちに柔らかな類の口唇は、しっかりとあたしの口唇を捕らえる。
フリーズすること、10数秒。
目の前を通る人たちも、申し訳なさ気に視線を逸らすのだけど。
あなたたちは、ちっとも悪くないです。
悪いのは、いつもいつも突拍子も無い行動にでる、あたしの愛しい人。
名残惜しげに、触れ合ってた場所から離れる瞬間、口唇を甘噛みされて。
より一層熱が上がった。
「……口下手なんで。行動に移してみました」
なんて。どの口が言うんだか…。
あたしは、わざとらしくハァと息を吐いた。
「……なにが口下手よ」
呆れ口調のまま、何事もなかったようにさっきまでの人波にまぎれてみる。
にやけ過ぎてる顔なんぞ、見られなくないし。
このままココに突っ立ってても、注目を浴びるだけだ。
「口下手だけど……。愛情がこもってる分キスは上手いつもりなんだけどなー」
なんていいながら、あたしの後ろから駆け寄り隣に並ぶ類。
「口下手な人は、そんなこと言わないっ!!」
類のお尻に蹴りを入れながらも、
雲の上の二人も、今頃熱い熱を移し合ってるのだろうか、なんて考えた。
おしまい
2006,7,5 momota
ponさんが書いてくれたこの続きのお話が、giftにて読めますヽ(´c_,`)ノフフ
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