類 Scene12
思い切り玄関のドアを閉めたら、ビシリとヘンな音がした。
けど、そんなこと知らない。
靴を脱ぐとドタドタとキッチンを通り抜ける。
そのまま、ベットにバックを投げつけた。
その拍子にバックの中から携帯や、手鏡が飛び出す。
ハァハァと肩で息をしながら今度は、ブラウスのボタンに手を伸ばす。
怒ってるのか。
泣きたいのか。
自分でもよく分からないのだけど、気分が昂ぶってるのは確実だ。
上から順に、するするとボタンを外すとそのまま袖を抜き
やっぱり丸めて、ベットに投げつけた。
そして次は、スカート。
自分に似合わないって、分かってた。
こんな感じの服着たことなかったし。
けど。
『なんか、静と一緒にいるみたい』
・・・・・・言うか?普通。
類のバーカ!!!
類のすべてを自分のものにしたいって思う。
過去も。
未来も。
けど、それがあたしの我侭だってのも分かってる。
だから、今くらいはあたしだけのものになってくれてもいいでしょう?
一緒にいる時間くらいは、あたしのことだけ考えてよ。
正直、静さんに嫉妬してるあたしがいるのも事実で。
類の過去に嫉妬してもしょうがない。
「あたしを好きだと言ってくれる、今があるからそれでいい」
なんて、奇麗事ですごしてゆけるなら苦労しないわよ。
どうな風に愛したんだろう、とか。
類は静さんにどんな風に触れたんだろう、とか。
こんな独占欲、いらない。
バカみたい。
静さんと張り合おうなんて、無理に決まってた。
それでも、何もしないでもいられなくて。
静さんの真似して、彼女の好きそうな服を選んで
髪にはウェーブを掛けて。
情けなくなって、キャミソールのままバスルームに行くと頭からシャワーを浴びた。
するするとあっという間に落ちるウェーブ。
それとともに、落ち着きも戻ってきた。
・・・・・・ほんとバカみたい。
「鍵も掛けないでシャワー浴びるなんて、ずいぶん大胆だよね?」
後ろから聞こえた声にぎょっとして振り返ると、類が少し怒った顔でバスルームのドアに寄りかかっていた。
「な、なに!?ち、ちがっ・・・」
動揺して言葉が続かないあたしに構いもせず、シャワーの湯気が篭るバスルームに
類の声が響く。
「違うって、なにさ。実際開いてたし。あんたはなんか服着たままシャワー浴びてるし。誘ってる?もしかして」
類のズボンが、シャワーに濡れて徐々に色が濃くなってゆくのを眺めてるあたし。
なんでこんなことになってるんだろう・・・・・・。
「・・・・・・違う。違うよ。バカなことしたから・・・・・・」
「バカなこと?静の真似したこと?」
・・・・・・やっぱり気づいてたんじゃない。
恨めしげに下から見上げると、類は困ったように笑った。
「真似をして、どうしようと思ったの?」
「・・・・・・どうもしないよ」
不貞腐れたように呟くと、あたしはシャワーを止める。
それでも、湯気は篭ったまま。
類の顔が、中途半端に曇る。
「どうもしなくないでしょ?」
類の何でもお見通しのような視線に耐えられない。
シャワー、止めるんじゃなかった。
「いってみ?」
あたしは無言のまま、類の横をすり抜けるとそのままバスタオルを引っ張り出して頭をごしごしと拭く。
類の顔を見ないように。
類に顔を見られないように。
そのままバスタオルでフタをすると、小さな声で告げて見た。
「類の過去が欲しかったの」
われながら、子供っぽくて情けない。
コレじゃおもちゃを欲しがる子供と一緒じゃないか。
あたしは、そのままベット脇まで来ると着替えるべくタンスに手を伸ばす。
その途端後ろから掴まれる腕。
「オレも、牧野の過去欲しいけど?司を想ってた事実は消せるの?
忘れてよ、って言って忘れられることのできるもんなの?」
ギュ、っとつかまれた腕が痛い。
ちょっといつもの類と違くて、怖くなる。
壁際まで追い詰められると、そのまま掴まれた腕を頭の上へと持ち上げられた。
ギリギリと締め上げられる痛みに顔をしかめたとき、太腿を割って入る類の膝。
慌てて、足を閉じようとするも
もう遅くて。
ぴったりと重なり始めた類の体を、掴みあげられてない腕で押しかえす。
「オレだって、平気じゃないよ。けど、過去なんて変えられるもんじゃないでしょ?」
無理やりじみた行為に顔を背けると、顎を掴まれて無理やり口唇を重ねられる。
ゆっくりと、首筋を這われる舌。
それと同時に、濡れたキャミソールの上から擦られる胸の先。
下着を通しての行為に、なんだか痺れるような感覚が広がる。
「類っ、ヤッ。やめて」
あたしのすがるような言葉は、なかったことにされ
キャミソールを引きちぎられた。
ビリビリと軽い音を立てながら胸元で左右に分かれる薄い布。
そのまま、手を背中に回され残ったものも外された。
ゆっくりと落ちるブラの紐がとても頼りなさげに見えて、あたしは無理やりそこから視線を外す。
押さえつける腕とは反対に、とても優しく柔らかくあたしの胸に触れる指は
怖さではなく、類の優しさを感じるに充分で。
なんだかとっても泣けてきた。
抵抗をやめたあたしを、類はそのまま優しく抱きしめた。
「・・・・・・なんでも、無理やりなんてヤでしょう?」
とても優しい声色に、コクンと素直に頭を縦に振った。
「・・・だから────」
そのあとの言葉は聞こえなかったけど。
『ゆっくりいこうよ』と、言った気がした。
おしまい
2005,11,28 momota
拍手、どうもありがとう(*^-^*)
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