SKY GARDEN
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類   Scene11




「類?最近、楽しそうだね?」



くるりと振り返りながら、牧野が笑った。
シーツが擦れて、軽く音をたてる。



「そ?」

「ん。なんて言うのかな・・・雰囲気が・・・柔らかくなったっていうか・・・・・・」



でっかい瞳をくるりと上に上げて。
うんうんと、言葉をさがしている牧野。



そんな仕草がかわいくて、こっそりと笑った。



「で。俺が楽しそうな理由知りたくない?」

「知りたい!・・・・・・ような・・・知りたくないような・・・・・・」



はちきれそうな好奇心をほんの少し見せた後、急に声のトーンを落とした牧野。
しどろもどろの答えを呟くと、もぞもぞとシーツに潜り込んでしまった。



「……ねぇ」



シーツを持ち上げると、牧野は俺の足元で丸まっていて。



「・・・・・・なんか、類がそんなうれしそうにしてるときって・・・ろくなことがないんだよね・・・・・・いつも」



むむむ。
なかなか鋭くなってきた。



「そんなことないでしょ」

「ある」



プイ、と再びそっぽを向くとシーツの波に埋もれてしまった。



俺の足元にある、愛しい小さなかたまり。



反対側にばふりとダイブ。
固めのベットなので沈むことはないのだけど、牧野を驚かすには充分で。



「キャッ!」



シーツの切れ目から、ひょこっと顔を出した。



「なにもー!!びっくりするじゃん!」

「だーかーらー。理由聞きたくないの?」

「んっとにもー。類が聞いてほしいんじゃないの?」

「・・・・・・」

「聞いてほしいなら、聞いてあげてもいいけど・・・・・・。またヘンなことだったら、速攻でココから蹴り落とすからね」

「・・・・・・けり落とすって・・・ここ、俺のベット・・・・・・」

「蹴り落とされたくなかったら、へんなこと言わなきゃいいの」

「・・・・・・あい」



渋々、承諾。



「じゃ、牧野。ここきて」



俺はほんの少し、後ろにずれると牧野が横になれるくらいのスペースをあける。
ぽんぽんとベットを叩くと、牧野が大人しくうつぶせになる。



「俺さ、そろそろ真面目に父親のことサポートしてかなきゃならないんだよね」

「・・・・・・うん」



牧野は興味なさげに、顔を上げると再び俯く。



「でさ。そうなっちゃうとしばらく忙しくなって・・・あんたとの時間取れなさそうなんだよ」



ピクリと肩が動いた気がする。
けれど、俯いたまま顔を上げない。



「・・・・・・そうなるんだったらさ・・・・・・」



───一瞬なにが起こったのか、わからなかった。



みぞおちに走る痛みと
背中に走る痛み。



何度か瞬きをしたあと、思わず腰をさすった。



どうやら、俺は牧野に蹴り出されたらしい。



反対側に立った牧野は、すたすたとキャミソール姿のまま歩き出すと
脱ぎ散らかされた洋服をまとめて自分のカバンに詰めだした。



「・・・・・いいよ。別に」



なにがいいのだろう。



「もう、連絡もしないし、類の迷惑になるようなこともしないよ」

「チョット待てって」



そのまま部屋を出ようとする牧野を、慌ててとめる。



「大丈夫だって。あたし、ごねたりしないから」



俯いたままドアノブに掛ける手を、遮った。



「だから、なにが大丈夫なの?なんか勘違いしてない?」

「え?」

「結婚しちゃわない?って言おうと思ったんだけど・・・・・・」



ジンジンとした痛みがみぞおちを襲ってる。
無意識に右手が、痛みを癒すようにさすっていた。



「は?」

「だから、結婚しようよ」



あららら。
これまたでっかい目見開いて。



「わ、別れたいんじゃ・・・・・・ないの?」

「なんでこんなに好きなのに、別れなきゃならないのさ」



絡みつく牧野の両腕。
ギュッと、抱きしめられる。
触れ合う素肌から伝わる熱。



どっちが熱い?



「別れ・・・ようって・・・・・・言われるのかと・・・思った」



途切れ途切れに聞こえる、細い声。



「んなわけないでしょ」



俺にしちゃ、牧野の中で「別れる」ことになってたのが驚きだ。



はらりと落ちる、キャミソールの肩紐。



つーか、なんなの?このプロポーズ。



「・・・・・・ごめんね?蹴っ飛ばして」



俺の腰に回した腕に力が篭る。
それに呼応するように、牧野の肩にキスを落とす。



肩をすくめるのが分かった。



それでも、離れることはない口唇。



ゆっくりと首筋を伝うと、そのまま耳元まで触れる。
牧野の呼吸が少し、乱れる。
さっき熱を吐き出したばかりだというのに、再び体が牧野を欲する。



「・・・・・・終わったら、返事きかせてよ?」



囁きは、届いただろうか?



反対側のキャミソールの紐を落とすと、するりと体の間を落ちる。



何も纏ってない上半身は、柔らかい布に抱きしめられてるようだ。
そっとわき腹から掌を上昇させると、体の熱が上がるのが分かる。



ねぇ。
どっちが熱い?
俺?
牧野?



それとも、一緒・・・かな・・・・・



ゆっくりとベットに促すと、軋んだ音が響く。
ついさっきまで聞いていた音。


何度体を重ねても、飽きずに繰り返される行為。


永遠に続けばいいと思う、時間。


永遠に続くという、確信。





大事な、人────。






■おまけ■



「で、牧野返事聞かせてよ」

「・・・・・・」

「寝ちゃったの?」


俺の上で、くったりと体を預けたままの牧野の背中をさする。


「こ、こんな・・・・・・直後に・・・・・・答えられるわけ・・・・・・ないじゃない・・・・・・」


ぜえぜえと大きく肩で息をしながら、呼吸を整える。


「だって、俺気になっちゃって気になっちゃって、ちっとも集中できなかった」

「に、2回もしといてなに言ってんのよっ!!!」


再び、(さっきよりは弱いけども)牧野のパンチがみぞおちに綺麗にきまったことはナイショにしておこう。


2005,11,28       momota
拍手、どうもありがとう(*^-^*)






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