類 Scene10
あたし、なんかしたっけ?
今日、会ってからの記憶を一生懸命探ってみるんだけど。
ちっとも、思い当たる節がない。
「・・・・・・る、類?」
不自然なほどに、笑顔を作って見る。
それなのに、類の口元は下がったまま。
挙句の果て、フイ、なんて視線そらされちゃったりなんかして。
ちょっとちょっと〜。
あたし、なんかしたわけ?
感じワル〜〜〜〜!!
こめかみに浮かんでいるであろう青筋を、前髪をかき上げるフリをして隠す。
思いあたることがないのに、ツンツンしてる目の前のヤツは子供だと思えば許せる。
けど、立派な20歳もすぎた大人で。
まぁ、確かに子供みたいに繊細なとこあるけど。
こんな態度とられると、こっちも黙っちゃいられないわけで。
「あのさぁ、なんか言いたい事あるなら、ハッキリ言ってよ。そーゆーの気分悪い」
飲みかけのグラスを思い切りテーブルに置くと、お水の入ったグラスが揺れた。
お水の表面の揺れが収まると
無言で、テーブルの下を指を指す類。
は?
あたしは類の指差す先を見るんだけど、あるのはあたしの脚だけ。
ただのデニム。
いつもより、ほんの少し高いミュール。
「なに?」
もう一度聞いたけど、「ん」と、やっぱりあたしの脚元を指す類。
何度見ても、見えるのはあたしの組んだ脚だけだ。
「靴?靴が・・・・・・」
「違う」
あたしの言葉を遮るように、口を尖らせる類。
「じゃ、なによ」
イライラしながら、足元を覗き込むと
「デニム・・・・・・」
ボソリと呟いた言葉が聞こえた。
デニム?
はっ!と、背中と腰に手を回した。
ショーツが出てるのかと思ったから。
「違う」
またまた、呟かれる2回目の言葉。
類の意図がちっともつかめなくて、もうイイヤ、とため息をつく。
彼の頭の中は、あたしのような凡人には理解できないような仕組みになっているのだ。
うん。きっとそうだ。
気分を落ち着けようと目の前のアイスティーを掴んでストローをよけると
グラスに口を付けゴクゴクと飲み干してみた。
カラリと氷がなる。
「・・・・・・脱がせづらい」
あたしは、まだ口の中に残っていたアイスティーを吹き出しそうになった。
イヤイヤ、ちょうど氷がなった音と重なったので、聞き間違いかもしれない。
「はい?」
ケホケホと少し咳き込みながら、もう一度聞きなおして見る。
ついでに、カバンの中からハンカチを探した。
「デニムは、脱がせづらい」
カバンを漁っていた手が止まる。
「牧野、今日、したくないの?」
な、なななななな何なんですか!!突然!!
あたしは顔だけを類に向ける。
きっと、真っ赤だ。
「総二郎が言ってた。『デニムを履いてデートに来る女は、拒否ってる証拠だ』って『脱がせにくいだろ?』って」
あ、あの人は・・・・・・
わなわなと、手が震える。
そんなありもしないこと吹き込む、西門さんも西門さんだけど・・・。
それを素直に信じる類も類だ。
「・・・・・・そんなワケないでしょう」
ふと、類の瞳に色が灯る。
って、なに言ってんだ、あたし。
まるで、やりたいです。って言ってるようなもんじゃないか。
けど、ツンツンしながらも、ちょっと寂しそうだった類の瞳に色が灯ったことが嬉しくて。
「ぬ、脱がせづらいなら・・・じ、自分で脱ぐからダイジョブ」
熱の篭る顔をパタパタと両手で仰ぎながら、小さな声で伝えてみる。
その途端、腕を掴まれて体を持ち上げられた。
ぐらりと、世界が反転。
キャなんてかわいい言葉なんて出やしない。
ぐえ、と一声なくと、そのままレジまで直行。
類の背中が目の前にあって。
不安定ながらも、類の腕があたしの脚をしっかり支えてくれてる。
財布からカードをだして清算するのを、類の腰のあたりから見てた。
レジのおにーさんが、スゴイ驚いてる。
そりゃそうだ。
険悪な雰囲気だったカップルが、いきなり彼女を肩に担いで出てゆくんだもの。
けど、世界が反対に見えてる今のあたしには、それが可笑しくてしょうがない。
両手で、口元を隠したあたしはこっそりと笑った。
自動ドアが開くと、途端に熱気があたしたちを襲う。
グングン自分の顔が赤く染まってゆくのを意識する。
あたしの顔を赤く染めるのは暑さの所為だけじゃなく
腰元のあたりでチラチラと目に入る、類の下着の所為だけじゃなく
「・・・・・・俺の部屋直行で、いいでしょ?」
ペシリとお尻を叩かれながら告げられた言葉の所為で・・・・・・なくもない。
おしまい
2005,8,10 momota
類・・・・・・。
とりあえず、落ち着け。
・・・・・・サカるな(笑)
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