SKY GARDEN
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あきら   Scene1






なんでこいつはこうも、開けっぴろげなのか。


なにも纏わない裸体を隠すことなど、まるっきり頭にないようだ。
乱れるベットを気にするでもなく、すたすたと冷蔵庫まで一直線。
ぱくりと、小さめのドアを開ける。


ひやりとした冷気は、湿った肌にはさぞかし心地いいことだろう。


そんなことに気を取られながらも、冷蔵庫の微かな明りが彼女を真正面から照らす様は
普段より幾分大人に見せる。
俺の知ってる彼女の顔は、日常の挑戦的な彼女と、つい先ほどまでの俺の下で甘い声を零していた彼女。
この二つしか知らない。
なのに、何を飲もうかと真剣に悩んでる彼女はまるで別人のようで少し緊張する。


「あきらくんも、飲む?」


くるりと振り返った滋に、俺はコクンと頷くと
半分ほど減った、ペットボトルを渡された。


「はー、運動のあとの水分ってすごいおいしいよねっ」


オイオイオイ、運動ですか。
満面の笑顔で言われ、ちょっぴりへこむ。


「あきらくん、この後どうするの?」


するりとベットへと潜り込んできた滋のために、ほんの少し横にずれた。
腕枕を望むタイプではないので、これで充分なのだ。


「俺は特に予定ないけど…滋は?」


俺はいつだって、滋とのデートのときは予定を入れないのに。
いつもお泊り予定で来るのに。
彼女はどうやら違うらしく…。


「今日は、なんも予定ないよ」

「まじで?じゃ、泊まってこうぜ」


やべ。
ウキウキしすぎてたか?
それでも、にやける口元を隠すのが精一杯で。
たいしたことないフリをするのが大変だ。


「んー、でもパパが最近うるさいんだよね」


滋の「パパ」と言う単語に、がっくりとテンションが下がるのが自分でも分かるほどだ。
さすがに、そろそろ挨拶に行かないとまずいだろうなぁ、ってのは分かってる。
けど、どうも滋の態度がはっきりしない。


ただの、性欲解消のための関係なのか。
きちんと、恋愛感情を含んだ上での関係なのか。


俺はもちろん、後者なのだけど口に出したことなどなく…。
さんざん遊んできたことを知ってる滋の前で、真面目な関係を望むのがこっぱずかしいのだ。
なので態度で気づいてもらおうと、ほかの女とはすっかりと関係を断ち、滋からの誘いにはすべて応じている。
お互い社会人な今、時間に都合のつかないことなんて山ほどあるのだけど。
どんなに日程的にヤバめな誘いでも、断ったことなどないのだ。



ここまでしてるのだけど。
気づいてくれてるのか、微妙なとこだ。



「帰るなら、送ってくケド……」



あぁ、押しが弱いのも俺の悪いところだ!



滋にしつこいと思われたくなくて。
滋に嫌われたくなくて。
物分りのいい男を演じてしまう。



「ん。そうしようかな。滋ちゃん、箱入り娘ですからね」

「自分で箱入りとか言うなよ」


苦笑しながら咎めつつも、今夜一晩一緒にいるつもりだったこのウキウキ感のやり場に困った。
微妙な空気が漂う中、滋は白い脚をそっとベットから下ろすと、そのままシャワーを浴びるためかバスルームへ消えた。




「ハァー……」



滋の気配がなくなったのを確認してから、深いため息を零す。
一体、いつになったら俺は友達から昇格できるのだろうか。

そんな関係を望んだことなどなかったので、どうしたらいいのかちっとも分からない。

ただ、快楽のために。
ただ、寂しさを紛らわすために関係を続けてきた女たちとはまったく違うから。


どこからどう責めていいのかすら、迷うんだ。
滋が、もっと隙のあるタイプなら楽だったのに。
あいつは、バカそうでそうじゃない。
軽そうで、そうじゃないから。

大事に扱わないと、壊れてばらばらに崩れてしまいそうで

怖いんだ────。




「んー、気持ちよかった!あきらくんもシャワー浴びてくれば?」


あいもからわず、何も纏ってない体を惜しげもなく俺の前にさらしてる。


手を伸ばせば触れることのできる、柔らかそうな胸元。

ふわふわと揺れてるそれに、ごくりと喉がなる。

先ほど、しっかりと肌を重ねたばかりなのに。
こんなにも反応してしまうのは、感情を押し殺している所為だろうか。


「滋…お、俺……」


俺の声にきょとりと視線を向ける滋に、結局はアタフタと慌てふためくだけで。


「し、下着くらいつけろよ……」


なんて諭してみたり。




「なんで?」

「は?」


不思議そうに首を傾げる滋に、こちらも眉をしかめる。


「下着つけたほうがいい?」

「い、いや、俺の目のやり場に困るだろうが」


我ながら正直な感想だ。


「んー。好きな人にはまっさらな自分を見て欲しくない?男の人って着飾ってるときばかりを気にするでしょう?
あたし的には、大事な人には素の自分を見て欲しいわけだよ。あきらくんは、違うの?」



こんなことするつもりなかったのに。
感情が脳みそを経由する前に、勝手に体が動いてしまったようだ。



思い切り引いた滋の腕ごと、強く抱きしめる。



突然のことに、固まる滋だけど
そんなことは、こちらの知ったことじゃない。
柔らかい素肌は、心地いいほど暖かく。
シャワーで少し濡れた髪は、しっとりと俺の胸に張り付いた。



「あきらくん。あきらくん。……なんか、反応してますけど」



俺の下半身を指差しながら、いたずらっこのような笑いを零す滋に



「滋がそんなカッコしてるから。好きな女目の前に、反応しない男がいたら見てみてぇよ」



なんつってみた。
さらりと告げた、告白。
上手く届いただろうか。



「そうだよね。あたしもあきらくんの裸見てたら、またしたくなっちゃった。よし、今日はお泊りだ!」



あまりにも、あっけない望み通りの結末。

なんだなんだ。

素直になったら、いきなり上手く回りだしたぞ?


「そのかわり、パパにはあきらくんから電話してよー?」


ちゅ、ちゅと耳に入る、滋の口唇が俺に触れる音。
それだけで、空気がピンクに染まりそうだ。


「よっしゃ。そこらへんは俺にまかせとけ……」


なんていいつつも、滋から与えられる快楽に脳みそがとろけそうだ。
滋の父親に対して、上手く立ち回れるだろうか。


とりあえずは、一回愛を確かめ合ってから、と
俺は滋をベットに連れ戻してみた。



■■■



なんだ、ちゃんと口にすればよかったのか。


ハァハァと、背中で息をしてる滋を起こすと再び腰を突き上げる。
ちっとも冷めない快楽に、さすがの滋も困惑しているようだ。


「あきらくん、ちょ、ちょっと」


何度も、何度も突き上げる腰を滋が制する。


「休憩させてよ。あたし、もうくたくただよ」


頬に伝う汗を、手の甲で拭う滋。
いつもより、だいぶ上気してる頬が激しさを物語ってる。


「じゃ、ちょっとまっててね」


にっこりと微笑みながら、くるりと滋と体勢を入れ替えた。
短い悲鳴のあと、俺の律動と共に零れる甘いため息。


何度も何度も繰り返してきた行為だけど、今日は違うんだ。


ちゃんと、聞いた言葉。
ちゃんと、伝えた言葉。


俺のことが好きだと。
滋が好きだと。



柔らかい肌をなかなか手放せない俺は、一晩中滋を抱いても満足しきれず
滋に「そんなにあたしのこと好きなのか」と呆れられた。


いいのだ。
本当にその通りなのだから。


滋が俺だけのものなように、俺も滋だけのもので。
このベットも、この部屋も、この世界ですらも。



地球は俺と滋のためだけに回ってるのだ。



なんつって、司キャラで突っ走れば滋は笑いながらも



受け止めてくれるだろうか─────。




おしまい



2006,4,3    momota




なんなんだ、こいつら…^^;

拍手、ありがとう(≧∇≦)
(拍手お礼SSでした)







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