変わったアピール
道明寺がNYへ行ってしまって、3ヶ月。
寂しく感じてるのは、私だけじゃないらしい。
無理やり呼び出された、大学内のカフェ。
ものめずらしげな視線と、敵意が混じった視線を全身に浴びているあたしは、
居心地の悪さで、もぞもぞと何度も座りなおす。
西門さんは、わかってるくせに知らないフリ。
花沢類は、自分は関係ないとでも言いたげに、ふぁあと大きなあくびを一つ。
美作さんだけが、唯一申し訳なさそうに苦笑しただけだった。
だから、携帯なんて持ちたくなかったのよ。
恨めしげにテーブルに置いたままの携帯に視線を送る。
こちらの都合なんて、てんでお構いなしに無理やり繋がる線。
もちろん、それがありがたい時だってある。
けど、この人たちに関すると話は別なのだ。
いつも、ろくなことがないんだもん。
なくてもたいして不便なんて感じたことなかったけど。
心配だから、と無理やりといっていいほどの強引さで、道明寺から渡されたら断るわけにも行かなくて。
鬱陶しくもあり、気恥ずかしくもあり。
「あ。オマエ、めんどくせーな、とか思ってんだろう」
そういうのだけは、敏感に感じ取るのね。
からかい口調で、あたしを指差す西門さんを思いっきり睨んでみた。
「……そんだけ空気読み取れるんなら、あたしの明日からを少しくらい心配して欲しかったわ」
「は?」
間抜け面であたしを見つめ返す西門さんに、本気で舌打ちでもしてやりたいくらい。
「…こんなところに呼び出されて。オマケに、あんたたちF3と一緒にお茶してたなんて知れたら
どーなるかなんてことくらい、簡単に想像付くでしょうよっ!」
フン!と、舌打ちの変わりに噛み付く勢いでまくし立てると、西門さんは不貞腐れたように口を尖らせた。
「だってよー、つまんねーんだもん。こっち。司も牧野もいねーしよ」
な?と、美作さんに同意を求めると、西門さんは椅子の背もたれに体重をかけ思い切り伸びをした。
つまらないって理由だけで、あたしを拘束する西門さんは一体何様なのだろう。
考えれば考えるほど、むかむかとした怒気がこみ上げる。
そんなあたしを気遣ってくれるのは、やっぱり美作さんだけで。
「俺は、そこそこ楽しいけど?やっと司のお守りからも解放されたし」
あぁ、美作さんだけだよ。
「けど、ま、物足りないのも事実だけど」と、付け足され、あたしの両肩はガックリと下がる。
だめだ。この人たちには、なにを言っても無駄だ。
さっさと目の前に置かれたコーヒーをご馳走になって、少し早いけどバイトへ向かってしまおう。
チラリと時計に目をやってからコクコクと、早いペースでカップの中身をお腹の中へと流し込む。
けど。
「牧野、バイト5時からでしょ?たまには、ゆっくりお茶でも飲んできなよ」
花沢類は、相変わらずで。
にっこりと、思わずこちらが見入ってしまうような天使の微笑みをこぼした。
うっ。
この人は、分かってないようで分かってるから怖い。
この3人の中で、一番雰囲気を読むのが上手なのは花沢類なんじゃないかって、最近思う。
他の2人も、空気が読めないわけじゃないけど……。
花沢類は、特別人の気持ちを汲み取るのが上手い気がする。
いつも無関心な雰囲気を漂わせてる分、一層そう感じるのかもしれないけど。
絶妙のタイミングで言いたいことを言ってくれたり。
それとは逆に、わざと言って欲しくないことを、言われたり。
そんなときは、必ずと言っていいほど極上の笑顔をこぼしてたりするんだけどね。
「…ん。じゃ、もう少しだけ」
と、言いつつもあたしは、早くバイトの時間がくることを祈る。
どうも……司のいない、司がいた空間になかなか慣れることができなくて。
ふと、司を探してしまう自分に気づくのか悲しかったりする。
特に、この3人といるときは要注意なんだ。
「牧野?どしたの?平気?」
優しげな薄くグリーンの入る瞳を、惜しげもなくあたしに向けてる花沢類は、やっぱり気持ちを汲むのが上手い。
「ごめんごめん。ちょっと考え事」
頭の隅で薄れてゆく司に、名残惜しげに別れを告げるとあたしはニッコリと花沢類を見つめる。
「バイト、入れすぎなんじゃないの?昨日も、一日だったんでしょ?」
「そんなことないよ。働くの、好きだし」
なぜか、あたしのスケジュールがすべて把握されてるのが腑に落ちないのだけど。
少し強引だったりするし、自分たちの都合で動いてる節もあるけど、心配してくれてるのも分かるから。
ちゃんと、たまにはこうして甘えたりもしてるよ?
大人しくカップを抱えたあたしを見ていた美作さんは、「相変わらず勤労処女なんだ」と、笑った。
「で。夏休みは、オマエNY行くのかよ」
メニューに視線を落としていた西門さんが顔を上げる。
どうでもいいことのように聞かれるのがシャクに触るけど。
あたしは、素直にコクンと頷いた。
「道明寺がこっちに来るより、あたしが行った方が会える時間多いから。タマさんにも、会いたいし」
タマさんの優しげな笑顔に、思わず口元が緩んだ。
「へー。じゃ、牧野の処女もあと数ヶ月か……」
西門さんの、まるで明日の天気でも告げるような口調で、サラリと告げられた言葉に
思わず、コーヒーを噴出す。
げんげんと、気管に入ってしまった液体を吐き出そうと無意識に咳き込む。
それがまた苦しくて。涙目でまっかになりながら、呼吸が楽になるのを待ってると案の定、今度はしゃっくりだ。
あたしは、むせたあとはいつもこうなる。
しばらく続くしゃっくりほど、わずらわしいものはないっつーのに!
「ちょっと!ヒック、なんで、そんなことヒック、まで心配されないとヒック、いけないのヒック、よっ!」
「プッ、なんだよ!牧野。今度はしゃっくりかよ!」
だ、誰の所為だと思ってるのよ〜〜!
バカにしたように笑う西門さんに、胸を軽くトントンと叩きながら抗議する。
「むせたあとはヒック、しばらくこうなっちゃうヒック、のよ!」
すんなりと伝えられないもどかしさに、イライラする。
なにか飲めば少しは落ち着くかも。と、お水の入ったグラスに手を伸ばそうとした瞬間
目の前を、さらりとした黒髪が揺れた。
司のコロンとも。
花沢類の、ムースの香りとも違う。
ムスクのような、深い香り。
たっぷりと、3秒はあたしに触れてった口唇。
「ほら。しゃっくりなんて、びっくりすりゃ止まるんだよ」
パチリとあたしにウインクをよこしながら、悪びれもせず笑う西門さんに、花沢類の蹴りが入る。
「ってーーーーなっ!類!なにすんだよっ!」
太腿を擦りながら、涙目で怒る西門さんに、花沢類はしれっと答えた。
「司の代わり。司よりは、手加減したつもりだけど?」
されたのはあたしなのに。
なぜか花沢類がぷりぷりと怒っていて。
そのあと、殴り合いになりそうな二人を、あたしと美作さんで止めるのに必死になって
西門さんに怒るのを、すっかりと忘れてしまった。
おしまい
2006,5,22 momota
■■■■■アトガキ■■■■■
久しぶりの、お題で…。ちと、緊張。
『変わったアピール』
いかがでしたでしょうか?
アピール?……ん?誰がアピールしたの?(笑)
総二郎?類?あきら?
んー。みんな、っつーことで←めんどくさいだけじゃないのか?コイツ…。
つくしちゃん、モテモテです。
司、早く帰ってこないととられちゃうよーん。
私も、よくしゃっくりでます。
ねーねー。総二郎ーー!
私もしゃっくりでるんだけどーー。
ねーねー。
ねーってばーーー。
口は、ちゅーの形でスタンバイおっけ、っつーことでこの辺で(笑)
→text →niji top →niji odai
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