ヤキモチ tukasa ***
事の始めは、蚊に食われただけのことだったりする。
なのに、なぜか今はこんな険悪なムードで。
あたしのせいなのかなぁ・・・・・・
久しぶりに、司と肌を重ねた夜。
首筋に優しいキスを受けながら、司の重みや、香りにくらくらしてると
不意に、動きが止まったことに気づいた。
司の視線があたしの鎖骨の辺りに釘付けになってる。
「お、お、おおおおおま、おまえ!!なんだそりゃっ!!」
声が裏返ってしまってるのも構わずに
あたしの顔の真横で腕を突っ張らせて固まる司。
「な、なに?!」
驚いて思わず起き上がったあたしを、睨む司。
な、なに怒ってんの?コイツ・・・・・・
おずおずとシーツを胸元まで引っ張りあげて、司に視線を送るけど。
やっぱり、怒ってるよね?
なんで?
こちらはちっとも分からないのに、司の怒りはどんどん増してるようで。
「誰だよ・・・・・・」
低い声で囁くように出された言葉は、思わずあたしを固まらせる。
「誰だって、聞いてんだよ」
怒鳴られるよりも、怖いかも。
静かに怒りを表現する司なんて、初めて。
質問に答えられないでいるあたしを、フン、と鼻で笑うとシーツを思いっきり剥がされた。
「きゃっ」
とん、と肩を押されてベットに沈みこまされる。
ばふ、っと空気があたしの耳元を駆け抜ける。
思わず、胸元を隠した両腕を無理やりどかされると、司があたしの体を覆う。
目の前5cmに司の顔。
視線の強さは変わらずに、距離だけが縮まった。
鼓動が激しさを増して眩暈すら感じる。
あたしの目を見据えながら、司のキレイな指先はあたしの鎖骨をなぞった。
そのゾクリとする感覚を抑えきれずに思わず、瞼を下ろした。
「目、つぶるな。俺を見てろ」
司のきつい口調に、再び瞼を上げた。
なに?なんなの?
と、あたしの鎖骨をなぞっていた指先が、ある場所で止まった。
思い出したように広がる、微かなかゆみ。
あれ?
あぁ、そういえば蚊に食われてたっけ。
と、思った瞬間
繋がった答え。
もしかして・・・・・・
勘違いしてる?!
司・・・・・・コレ・・・キスマークだと思ってるんじゃ・・・・・・
「つ、司!!コレ、違うよっ」
あわてて弁解してみるけど、もう遅かったようで・・・・・・
こんときほど、自分の鈍感さを呪ったことはなかったわ。
「うるせーよ。誰に付けられたんだ?あ?」
だから、違うって!って言いたかったけど。
強引に塞がれた口唇に、もごもごと唸っただけで終わる。
その日の夜は、いつもよりだいぶ乱暴な行為に
「浮気してると思われてんだ」なんてことを思ったら、あたしもなんだかむかむかしてきたりした。
終わった後の、いつもなら司の腕の中に納まっているはずの自分の体を
なんだかかわいそうに思って、自分で抱きしめたりした。
いいわけすらもさせてくれないの?
って、いいわけじゃないけど。
事実なんだけど。
あたしの言葉を拒絶するように背中を向けてる司に、ジワリと涙が浮かんできた。
あ、ヤバイ。
でも、もう遅い。
ずずず、と鼻をすすると、司の体がピクリと動いた気がした。
あわてて、あたしも反対を向いてシーツで涙と鼻を拭う。
そっと、ベットから足を下ろすと相変わらず、低い声で声を掛けられた。
「オイ。相手ぐらい教えてけよ」
コ、コイツ〜〜〜っ。
ほんとに、あたしが浮気してると思ってるっ!!!
今度は悲しさよりも、怒りがこみ上げてきた。
「・・・・」
クルリと振り返ると、ベットで肘をついている司を睨みつけた。
「蚊だよっ!!ばーかっ」
フン、と下着を付け、シャツを羽織る。
スカートに手を伸ばしたとき、後ろから優しく抱きしめられた。
「・・・・・・まじで?」
さっきまでとは違う、戸惑いを含んだ口調。
「まじ」
あたしは視線をスカートに置いたまま、怒りをアピール。
「・・・・はぁ〜〜〜〜」
大げさじゃないの?と思われるほどのため息?と肩にずしりと乗る司の重み。
ふわふわの髪があたしの頬をくすぐる。
それだけで、なんかもういいや、なんて思っちゃって。
「・・・あたしが浮気でもしてると思った?」
「まさかとは思ったけどよ・・・。実際、キ、キスマーク付いてるしよ・・・・・・」
モゴモゴと口ごもる司の腕にそっと手を触れた。
「ごめん」
ポツリと呟かれた、謝罪の言葉。
あら?やけに素直ね?
「・・・・・・いいよ?もう」
スカートを手に立ち上がったあたしの腕を、司が思いっきり引いたせいで再び司の腕の中に納まる。
「ちょっと、なにすん・・・んーーーっ」
こちらも、再び塞がれて最後まで口にできなかったりする。
なかなか解放してくれなくて、バタバタと暴れていたら
やっと、口唇が離れる。
「今のうち、息吸っとけよ。今度はもっと、熱〜いのするからな」
なんてふざけたことをぬかしてて。
思わず唖然としていると、ほんとに熱くて長いキスが続いて。
死にそうになったので、司の頭をポカリと殴ってみた。
「いてーな」
頭をさする司に、いつもの司が戻ってきたような気がして
少し嬉しかった。
「・・・・・・蚊にまでやきもち妬かれちゃ、彼女冥利に尽きるわね」
「おう。だろ?」
なんてニコニコしてるけど。
言葉の意味分かってる?
あたし、嫌味言ったんだけど。
けど、柔らかく微笑む司を見てたら、勘違いさせたままでもいいや。
なんて思ってしまったあたしも、そうとうイカレてる?
おしまい
2003,12,22 momota
→text →niji top →niji odai
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