SKY GARDEN
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おわり     rui ***







もう、この関係も終わり。




今日、類との恋人同士の関係をおしまいにする。




出会った頃は、鬱陶しがられてた。




それでも好きで好きで。


一人でいることが好きな類を、いつも追いかけて。




追いかけて。
追いかけて。




そして、やっと
二人でいることに慣れてもらって




二人でいることが当たり前になった。




デートもいっぱいしたし。
ケンカもいっぱいした。




類のいろいろな顔が見れることが嬉しくて。




たくさん笑った。
怒られたこともあった。
類の前で大泣きしたことも。




・・・・・・キスも数え切れないくらい。
類と肌を重ねるのも、大好きだった。




ありふれた毎日が、ほんとはすごく幸せだったってことにも、気づいた。




けれど、今日でおしまい。




あたしは深呼吸を一つ。




ありがとう。




あたし、すごい幸せだったよ。
類がいつも傍にいてくれて。




いつも想ってくれて。


























「・・・・・・誓いますか?」






あたしは、ベール越しに彼を伺う。


あぁ〜ぁ、あくびかみ殺してるし。



「新郎、花沢類?誓いますか?」



さっきよりも、幾分大きくなった神父サマの声。



「・・・誓います」



めんどくさそうな類の声に、吹き出しそうになるのをどうにか堪える。



肩が震える。
あぁ、やばい。



なんて思ってたら・・・・・・
周りは、あたしが感動で泣くのを堪えてると思ってくれたらしく
『つくし・・・』なんて涙声まで聞こえてくる。



背中に受ける、祝福がくすぐったい。



どうにか、笑いを収めた頃
あたしの腕を突付く、類の肘。



なによ?



誰のせいで、こんな苦しい思いをしてると思ってるのよ。



きっ、と睨むと
類が顎で神父サマを指す。





「・・・・・・新婦、牧野つくし?・・・誓いますか?」





あぎゃぁぁぁぁっ。





「ち、ちちち誓います!誓いますっ!!」



慌てたあたしは、思わずベールを自分でめくりそうになった。



それを見ていた、類はとうとう吹き出して。



「ぷーーーっ!!!ぷくくくくっ!!くっくっく」






はぁ・・・。
もうしばらく止まんないよコレ。





横で、けたけた笑ってる類の姿を見て
なんだかあたしも、笑いがこみ上げてくる。



こーゆー真面目なのって
あたし達には似合わないかもね。



あはは。



あたしは、ベールを外して、ドレスの裾を思いっきり持ち上げてヒールを脱ぐ。
瞬間、どよめく声が聞こえた。



花沢のお父様やお母様の唖然とした顔。
・・・うちのパパやママは固まってる。あぁ、やだ、進なんて倒れそうだわ。

道明寺や、美作さんが額に手をやってなんか言ってるし。
・・・・・・西門さんは随分うれしそうね?からかい気味の口笛の音まで聞こえた。


滋さんは、笑いながら手を叩いていて
桜子や優紀はあいた口が塞がらないみたい。



そして、類の腕を取ってバージンロードを逆走。



縁起悪いかな?
なんてこともチラリと横切ったけど。



いつの間にか類のほうが、あたしの先を走っていて
ふいに振り返る肩越しに、楽しそうに揺れるグリーンの瞳。



繋いでる手に力を込めながら
こんな楽しそうな類が見れて、うれしいな、なんて思った。



思い切りドアを開けると、甘い気がする4月の空気。
桜のせいかな?



それを思いっきり吸い込みながら走る。



繋いだ手が、離れないように。
しっかりと握って。


チャペルを背に・・・・・・


追ってくる人たちなんて、誰もいなかったけど
あたしたちは、走り続けた。







はぁ。はぁーーー。




上手くいかない呼吸を、ゆっくりと落ち着かせながら木陰に身を潜めてみた。



ベタだけど、隠れることないんだもんっ。



2人で、呼吸を整えた後、こっそりとキスを交わす。






これからもよろしくね?のキス。






新しい関係を築くあたし達。






大丈夫。
今までも楽しかったから。
きっとこれからは、もっと楽しいよ。



今まで以上に幸せにしてね?
そうしたら、あたしも今まで以上に、幸せにしてあげる。



今まで以上に、想ってあげる。



類が、もうやめてくれ、って思うくらい。






おわりは、はじまり。


新しい何かのはじまり。






あたしたちの、はじまり。






肩を寄せ合って。
木漏れ日を全身に受けて。



背中にあたる木の幹がちょっと痛いね、なんて文句を言いながら。




また、ひとつキスを交わす。




短めのタイを緩めた類は、思いっきり伸びをして。




そして、こう言うんだ。




「少し寝る?」




ほらね、そう言うと思った。
ゆっくりと目を閉じると、今がいつか、とかどんな状況か、とか




どうでもよくなっちゃって。




ゆっくり流れる時間に、今までのあたし達なんてのを思い出したりして。
少し感傷的になんてなってみたり。









どのくらいの時間が経ったのかな・・・・・・
暖かな風や、それに伴う優しい葉の音にうとうとした頃
類の声が耳に届いた。



「・・・・・・牧野、寝ちゃった?」



なによ、類のほうから昼寝に誘ったくせに。
おまけに、今日まで『牧野』なんだ。



それでも、重い瞼を上げることができないで
いいや、このまま寝たふりを決め込もう、と決意した瞬間・・・・・・









「────つくし、愛してる」









あたしは初めて
とくん、と心臓が音をたてたのをしっかりと聞いた。



それは、初めて名前を呼ばれたからか
初めて愛してる、と言われたからか

分らないけど。



再び、いろいろなことを思い出して
瞼を閉じたままなのに、涙が溢れて。



そっと瞼を上げて、肩に感じる愛しい人の重みによりいっそう、愛しさを覚える。
ゆっくりと類のサラ髪に指を通すと、彼の白い頬に赤みが差した。




こら、寝たふりすんな。




いろいろなことがありすぎたあたしたち。
終わりから始まりへ、途切れることなく続く想い。






またここから始まる、2人────






あまりにもヘタな寝たふりに、笑いをかみ殺しながら
今日何度目かのキスをあたしからしてみたり、した。




おしまい





2004,1,23   momota





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