恋占い rui ***
「あなたは、カノジョとのデートに遅刻しそうです。まず、どうする?
A、電話をする。B、とりあえず急ぐ。C、特に何もしない。だって。類は?」
あのさ、牧野。
たしかに、俺も悪いとは思うよ。
昨日中に終わらなかった仕事、今日にまで持ち込んで。
けど、それってどうなのさ。
今日のデートは外に出れない、と告げると牧野は雑誌をたんまりと買ってきて、
人のベットに寝転んで、読みふけっている。
・・・おそらく、今は占いかなんかなんだろうな。
PCに落としていた視線を、牧野に向けて、
メガネを少しずらした。
「・・・・・・C」
とりあえず、正直に答えたつもりだけど。
「やっぱりねぇ。そうだと思った!!えーと、次は・・・・・・」
じゃぁ、聞くなよ。という言葉をどうにか飲み込む。
そのかわり、コーヒーを催促すると、「あたしも飲みたかった」と嬉しそうに部屋から出て行った。
牧野がうちによく遊びに来るようになってだいぶ経つせいか、家の使用人とも随分打ち解けている。
つくづく、牧野の社交性には憧れる。
しばらくは俺にとってはどうでもいい話のオンパレードで、帰ってこないだろう、と
今まで牧野が寝転んでいたベットに腰を下ろすと、広げたままの雑誌に目を向けた。
なになに?
あなたと彼の相性度。
ふーん、あいつもこんなの気にするんだ。
女っぽいところを見せられたようで、少し照れくさい。
パラパラとページをめくっていると、随分な種類の占い。
思わず表紙に目をやると、飛び込んできた文字は
「占い特集」
・・・・・・。
オレ、もしかしてコレ全部やらされるのかな・・・・・・
呆然としていると、カチャカチャと食器がぶつかる音。
コーヒーの香ばしい香りも、届く。
オレはベットから立ち上がると牧野の為に、部屋のドアを開けた。
「もーなんでっ。最悪ばっかりだよ。あたしと類の相性。類、嘘ばっかり答えたんじゃないの?!」
散々、質問に答えさせられたと思ったら・・・・・・
今度はこれかよ。
知らんフリを決め込もうと、わざとらしくキーボードを叩く手を早めた。
それに気づいた牧野は、そのまま口をつぐむ。
そしてそのまま、何かを考え込むように黙り込んだ。
どれくらい時間が経ったのだろう。
部屋がオレンジ色に染まっていることに気づいて顔を上げる。
やけに仕事が進んだ。
・・・・・・。
おかしいな。
と、それはちょっかいを出してくる相手が大人しかったからだ、と気づき視線を牧野に向けた。
牧野はベットに突っ伏している。
「牧野?寝ちゃったの?」
返事がない。
「風邪ひくよ」
首を回しながら、立ち上がる。
ずっと座ってたせいか、腰にも鈍い痛み。
ゆっくりと、ベットに近づくと
牧野の上に、彼女の羽織っていたカーディガンを、ふわりと掛ける。
と、不意に目尻に光るものに気づく。
なんだ?
そっとかがみ込むと、牧野に顔を近づける。
微かに香る、牧野の香り。
規則正しい、寝息。
そして、頬には
涙の後。
・・・・・・なんなんだよ。あんた。
普段は、信じられないくらい気強いくせに。
占いなんて、信じる方だったっけ?
牧野の顔の下には
おそらくオレとの相性結果だろう。
相性度5%、最悪、との文字にサインペンで丸がついていた。
大げさにため息をつく。
俺は、机に戻るとマジックを取り出して再び牧野の元へ向かった。
「・・・・・・ごめん、寝ちゃった」
随分と日が落ちて、部屋が蒼く染まりだした。
さすがにPCのディスプレイから放たれる光だけでは作業がしづらい。
ちょうど机のスタンドに手を伸ばした時に
まだ、虚ろ気な瞳を漂わせながら牧野が呟いた。
「ん。こっちはあと少しで終わるから。終わったら、外に夕飯食べに行こう」
「・・・うん。・・・・・・ぁ・・・・・・」
微かに聞こえた声に、視線だけを牧野に向けた。
牧野のゆっくり零れる微笑を確認してから、俺は再びキーボードを叩く手を早めた。
ふわりと香る牧野の香りと、温もりを背中に感じて肩越しに振り返る。
「・・・類」
「・・・・・・あんなことくらいで、泣かないでよ」
「な、泣いてないよっ」
「・・・・・・じゃぁ、そのほっぺに付いてる跡は何さ。あ、よだれ?」
メガネ越しの俺の言葉に慌てて頬をこする牧野。
今さら拭っても遅いっつーの。
「よ、よだれなんかっ!!類じゃあるまいしっ」
「俺だって、よだれなんて出さないよ」
首元に回る腕に軽く力が込められた。
「・・・・・・ありがとね」
牧野の言葉に、再び振り返ると視線が絡む。
軽く微笑むと、ゆっくりと牧野の顔が近づいて
掠めるようなキスを一つ。
「でも、なんで95%なのよ」
「・・・だって、100%じゃ、嘘臭いだろ?」
そういうと、牧野は
「確かに・・・」と嬉しそうに笑った。
部屋の中に残された、すごい数の雑誌の山。
コーヒーカップを片付けにきた使用人は不思議なページを目にします。
どうやら、相性占いの診断結果。
一番最後の相性度、5%、最悪、の所にマジックで無理やり書かれた
95%、最高、の文字。
使用人は、首をかしげながらそのページを優しく閉じました。
おしまい
2003,12,9 momota
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