SKY GARDEN
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*** 惑いと共存する想い






甘くはじけてしまった何かを押し込むのに必死なあたしは、いったいどれだけ滑稽に彼の目に映っていたんだろう。
直前の会話なんて、ちっとも覚えてなくて。
彼が隣に座ったことだけで、いっぱいいっぱいで。



「絢さん、明日どうする?」
「ハイ?!」



声を裏返しながら素っ頓狂な声を上げたあたしを、彼は怪訝な顔で見つめ返しながら
丁寧に説明してくれる。


「明日だよ……。デートしようって、言ってたでしょ?まさか、忘れてたとか?」
「い、イエ、そんなことは……滅相もございません」



なんだこの変な敬語は。
自分でも気づいてるのに、顔を見たらもう頭の中がパニックで。



疑いを瞳に湛えたまま、ずりずりとあたしに迫る彼はあいも変わらずイイ男で。
ソファの真ん中で近寄られた分だけ、あたしは反対にずれる。
なので彼との距離は変わらないのだけど。



それも、あと30cmでおしまいだ。



お願い。
それ以上、あたしに近づかないで。



頭の中以上に、胸の奥が壊れそうだよ。



ばくばくと、通常では考えられないほどの鼓動。
彼に聞こえてしまいそうで。
今までなんてことなかったのに、甘いキスをうつされてからこの有様だ。



あたしはいったいどうなってしまうんだろうか。



仕事さえあればいい、って思ってたのに。
恋愛なんて、人生のほんのちょっとしたスパイス程度としか思っていなかったのが
今じゃ……。



「絢さん……ごめん。迷惑だった?もしイヤならはっきりいってくれていいんだからね」



ソファの端まで追い詰められて。
……また、キスされるのかと思わず瞼をぎゅっと下ろした途端しょんぼりした声。



「ち、ちがっ!!!」



慌てて否定するも、本当の原因なんて絶対言えやしない。



迷惑じゃないんだよ。
キミとの時間は、ほんと楽しくて。認めたくないけど、心待ちにしてしまうほどなんだよ。
けど……恋愛経験が少ないあたしとしては、自分の感情をもてあまし気味でどうしていいか分からない。



目の前に座る事すら、躊躇われるほどなんだから。



顔、見たいけど、見られたくない。
触れたいけど、触れてしまったら心臓が壊れそう。
限界まできた針が、振り切れそうなんだ。



いつのまにか、5cmも開いてない隣。



もう、だめだ。限界。
あたしは両腕を彼に向かって、突き出す。



「ごめん。花沢サン。あたし、ほんと恋愛苦手なの」



彼の柔らかい胸元に両手を押し付けたまま、俯くあたしはなんて子どもなんだろうか。
上手い言い訳も、思いつかない。だから、素直に告げるしかないんだ。



「けどね、恋愛が苦手なだけで……花沢サンが……き、嫌いとかそういうんじゃないからっ……」



今のあたしの精一杯。
顔は恐ろしいくらい、熱くなっている。きっとびっくりするくらい赤いに違いない。
恐る恐る上げた顔に最初に飛び込んだのは、彼のふわりと緩んだ表情で。
緊張でガチガチだったあたしの体から、思わず力が抜けた。



「俺だって、恋愛経験値……低いほうだと思うけど」

「ええっ!!!嘘ーっ!」



慌てて、口元を両手で隠す。



「ご、ごめん。すごい意外だったから」

「俺、そんな遊んでるふうに見える?」



今度は、ちょっとふてくされ気味。
でも当たり前じゃないの。この容姿で、遊んでないほうが不思議だ。
少なくとも、あたしの周りにいた見てくれのいい男の子は、たいていがこっちがうんざりするくらいの恋愛遍歴だった。



「俺、絢さんが隣にいるだけで……こんなに緊張してるし。明日の予定だって、切り出すのすごい勇気いったんだから」



あまりにも素直な告白に、再び胸の奥の甘い痛み。



「絢さんのこと、諦めるつもりはないけど……それでも、俺、絢さんが嫌がることはしたくないから」



もうもうもう!!!
申し訳なさそうに告げるこの人は、どれだけあたしをメロメロにしたら気が済むんだろう。



ほんの5cmほどだった彼との距離が、一気に縮まる。
あたしが思わず、抱きついてしまったから。



「イヤじゃないし……諦めなくて、いいから」



こっそりと呟いたんだけど。
おずおずと背中に回された手が、急に力強くなったから
聞こえたんだよね?



恥ずかしくて、顔上げれないけど。
キミの胸元から伝わる鼓動で、どれだけ勇気がいった言葉だったか分かるから。



ごめんね……?



恋愛経験値が低いもの同士、ゆっくり恋していこう?



ゆっくり離された体。
おずおずと見上げると、茶色のサラ髪がふわりと揺れて。
ため息が出るような笑顔と、軽いキスを一つ。






……。
ちょっとちょっと。
この人、ほんとに恋愛経験値、低いわけ?



2007,11,25      momota


ケイくんがキス上手なのは、パパ譲り(*/∇\*) キャ
なんつってー(笑)




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