SKY GARDEN
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想いの加速 (8000hit) rui × tukushi ***








なぜ?


今のこの状況を整理すべく、まだ正常に動き出してない頭で一生懸命考える。


恐る恐る、横を見ると
花沢類。





真っ白いシーツから出ている腕は、意外にも逞しい。





ドキリ、として慌てて目を逸らすけど、視線は空を彷徨って再び花沢類に戻ってしまう。




花沢類
はなざわるい
ハナザワルイ




・・・何度見ても、花沢類。
相変わらず、天使のような寝顔の花沢類。







そしてあたしは・・・
顔は熱を持ったように暑いのに、体はやけに肌寒い。
・・・。
シーツの中を覗いて思わず固まる。





・・・まじ?





何も身に着けていない自分の体を呆然と見つめ続ける。





夢・・・じゃなかったんだ。





弾む息。
花沢類の潤んだ瞳。
汗ばむ体。



思い出すだけで、頬が染まる。





「・・・牧野、寒いよ・・・」

ごろり、とこちら側に寝返りを打つ花沢類はシーツを引っ張る。
ズルズルとあたしの体の上から、移動を始めるそれは唯一あたしの体を隠してくれているものであって・・・


「ちょ、ちょっと待ってよ、こ、困るっ!!それ!!」


グイとシーツを引っ張り返すと、今度は花沢類の逞しい体が現れる。


「ぎゃぁ」

慌てて、シーツを返そうと腕を伸ばすと
体ごと花沢類の胸の中に抱え込まれた。


「・・・・・・こう、すればいい」


少し擦れ気味の声で言うから。



夕べを思い出して
何も抵抗出来なくなって
あたしはそのまま彼の腕の中で「愛しさ」とか「幸せ」なんてことをかみしめていたりした。



















あの日以来、特に変わったこともなくいつもの日々が続いてる。
花沢類と肌を合わせたことによって、変わるかと思われた関係は・・・
やはり「友達以上、恋人未満」のような気がする。






それ以上を望んではいけないのだろうか。






フルフル、と頭を振って自嘲気味の笑みを零す。
それ以上もなにも、花沢類は最初からそういう気持ちで抱いたんじゃない。
花沢類の一番近くにいたのが、たまたまあたしだったから。


そう。
きっとそうだ。



あたしは無理やりの答えを自分に叩き込む。
そうしないと、壊れそうだったから。





花沢類への想いで、おかしくなりそうだったから。


















「・・・牧野さん!」

低めのよく通る声で、今に連れ戻された。
声の方に、顔を向けるとそこには森田さんの心配そうな顔。

「調子・・・悪い?」

遠慮がちに問いかけられた言葉に、慌てて返事をする。

「ご、ごめんなさいっ。ちょっと考え事してて」
「あぁ、ならいいんだ。なんだかやけに深刻な顔してたから」
「悩みなら相談にのるよ?」そういって、肩に置かれた手。
少し、体が硬直する。


あまり男の人に触れられるのには慣れていない。
そりゃ、もちろん花沢類にはそんなことないけど。


「あ、ごめんね。なんか馴れ馴れしかったね」
固まってるあたしを見て、慌ててあたしの肩から手を下ろす森田さんを苦笑しながら、見つめる。






やっぱり、花沢類に・・・似てる。
森田さんは、仕事場の1年センパイ。
でも、大学を出てるので年齢的には3つ離れている。




薄茶のサラ髪。
整いすぎてると言ってもいいくらいの、顔立ち。
そしてこの柔らかい雰囲気。

唯一違うのは、瞳の色と・・・それと声くらい。




花沢類は、グリーンが混じっているけど、森田さんの瞳は日本人特有の黒。
声は、森田さんの方が少し、低い。




なので森田さんが不意に目の前に現れると、今でもどきりとする。
ここにいるはずのない彼を、思い浮かべてしまうから。







花沢類のことを考えている頭に飛び込んできた、少し低めの声。



「・・・本当に大丈夫?」



目の前に現れた顔に、思わず立ち上がってしまった。




あたしが立ち上がった弾みで動いた椅子が、森田さんの足を踏みつける。



「いてっ!」



森田さんの顔が歪むワケを理解すると、あたしはとっさに身をかがめ彼の足元にしゃがみこんだ。



「スミマセン!ボーっとしちゃって。ごめんなさい!!大丈夫ですか?!」



あたしがしゃがみこんだのに数秒遅れて、森田さんもあたしと視線を合わせるように座り込んだ。
そして、小さな声で耳打ちする。



「そんなに謝らなくてもいいよ・・・。そーだ、代わりといっちゃなんだけど今日夕食付き合ってよ。それでチャラ、どう?」



濃い目の瞳を細めながら、いとも簡単に女の子を食事に誘う。



少し、戸惑ったけど・・・


(食事ぐらい、いいよね・・・・・・)


いつもは、男の人と2人で食事なんてしないのだけど
森田さんの軽めの誘い方に、深い意味を見い出せなくて。

仕事場の同僚という立場で、森田さんに「わかりました」とだけ伝えた。
















仕事が終わり、森田さんが連れて行ってくれたイタリアンのお店はとてもおしゃれで・・・
女の子がいかにも、喜びそうな場所。



・・・もてるんだろうな。



あたしを飽きさせることなく進む会話は、花沢類と比べると驚くほど饒舌に感じる。




・・・けれど。
あたしは、花沢類との会話のない時間の方がすごく好きだ。

二人で寄り添って本を読んだり。
ベットに寄りかかりながら、あったかいコーヒーを飲んだり。




「牧野さんは、一人で住んでるの?」


頭の中は花沢類のことでいっぱいだったあたしは、急な質問に驚いて顔を上げた。
そこには、黒い瞳に柔らかな光を受けながら微笑む森田さんがいて。


「あ・・・はい。そうです。弟も一緒にいたんですけど・・・、今は両親のところで・・・」



おいしい食事に、優しい男の人。
楽しいはずなのに。




作り笑いが増えていって・・・
気分は沈んでいくばかり。






「・・・そろそろ、出ようか。送ってくよ」


そう言って席を立つ森田さんの後姿を、あたしは見つめる。
頭の片隅に浮かんできた思いに蓋をして、森田さんの後姿をただぼんやりと見つめ続けた。


















「・・・牧野さん。・・・牧野さん?」
「は、はいっ」
「どうしたの?ほんとに最近変だよ?」


車の助手席から周りを見渡すと、あたしのアパートの前。
見慣れた風景であたしは慌ててお礼を口にする。

「あ、ありがとうございますっ。じゃ、また明日・・・」

森田さんの質問には答えないで微笑みだけを返した。





変なのは重々承知だ。
あの日以来、花沢類のことばかり考えてしまう。
考えるのをやめようとすればするほど、彼はあたしの中に居座り続ける。
抱かれたことを、悔やんでしまうくらい
好きになってる─────






泣きそうになているのを悟られまいと、唇を噛み締めながら車のドアを開けようとガチャガチャとレバーをいじる。
そういえば・・・さっきレストランに着いたときは森田さんが外から開けてくれたんだっけ・・・

イヤな予感がして森田さんを見る。
けれど、そこにはいつもの優しい森田さんの笑顔。
気づかれないように安堵のため息を零すと、あたしは再びお礼の言葉を口にしようと・・・した瞬間、信じられない言葉を耳にする。

「チャイルドロック、って知ってる?」

いつもの笑顔。

「・・・はい?」

あたしは、意味が分からずに首をかしげた。

「中からは開けられないの」
「・・・はい」
森田さんが開けてくれるんでしょ?と思った瞬間、シートを倒された。


ガクン、と体が一瞬浮いて、そのままシートに沈み込む。

何が起こったか理解できないで硬直したままのあたしの上に、森田さんが笑顔のままのしかかる。

「俺のこと好きなんでしょ?」





ハイ?





未だ頭の中がごちゃごちゃだけどこの状況がとてもヤバイものだとは理解できる。
森田さんと自分との間に腕を入れて一生懸命押し返す。

そして、言い返すのも忘れない。


「ち、違います。好きじゃないですっ」


狭い車のなかで、バタバタと暴れるあたしの腕や足は無駄に動いているようにも思える。
けれど、無駄でも何でも動いてないと森田さんの顔が、迫ってきて・・・


「だって、いっつも俺のことみてるじゃない」



だから、それは誤解だってばっ。
あんたが、花沢類に似てるから・・・・・・っ。



いくら暴れても物ともしない男の人の力に、くやしくて涙が出てくる。



「正直に言いなよ」

いつもの笑顔のまま。



怖い、と思った。
そう、あたしは森田さんのこの笑顔しか見たことがない。



笑顔っていっても、たくさんあるのに。

花沢類は、いろんな笑顔を見せてくれる。
はにかんだような照れた笑顔。
おもいっきり笑ってる、おかしくてしょうがないような笑顔。
・・・切なそうな、寂しい笑顔だって見たこと・・・ある。



けれど
森田さんは、この笑顔だけ。
綺麗な瞳を細め、口角を少しだけ上げ
感情の篭らない、笑い顔。
あたしは、この笑顔しか見たことがない。



ぞくり、と背中を嫌なものが走る。



それと同時に、太腿を辿ってくる森田さんの掌。



「やめてっ。いやだってばっ!!」



首筋に、唇が這う感覚に鳥肌が立った。



やだっ。
やめて。
あたしに触れないで!



泣くもんか、って思ったけど。



目尻から、零れるように涙が落ちる。




「・・・っ・・・るいっ!!」




縋るように
愛しい人の名前を口にする。




口にした途端、がちゃり、という音とともに暴れた熱気で暑めの車内に、冷たい空気が流れ込む。
窓の外には
今、あたしが口にした人が無表情で立っていた。






ドアが開いたことに気づいた森田さんは、驚いた様子であたしから体を離した。
運転席で、この状況を一生懸命理解しようとしているのが彼の表情から読み取れる。




(森田さんのあんな動揺した顔、初めてみたかも・・・)




ドアを全て開けると花沢類は、森田さんと花沢類を交互に見つめるあたしの腕をひっぱって、平らになっているシートから引きずるように降ろす。




「・・・やがってる女、無理にやることもないでしょ?」




それだけ言うと、花沢類はドカリと足でドアを閉めた。




あたしはただ、呆然と花沢類を見ることしかできない。
反対に花沢類は、あたしを見ようともせずに、車の中の人物を睨み続けている。




そのうち、エンジン音が体に響いてくると
花沢類の足型をつけた車は慌てた様子で、走り去っていった。




残されたあたしは

乱れた服。破れかけてるストッキング。おまけに靴は片方しかない。
はぁ、なんだか情けない格好。
恥ずかしくて、花沢類の顔を見ることができない。



花沢類はため息をつくと、あたしの腕を持ち上げた。


カツン、ぺた。
カツン、ぺた。


片方の足からしか響かない音が、妙に現実的で改めて体が震えた。


(花沢類がいなかったら、あたし・・・・・・)


腕を掴まれたまま、部屋の前まで来ると「鍵・・・」とだけ告げられる。



手が震えて上手く鍵を開けることのできないあたしから、鍵を奪うと何事もなかったように鍵を開け家の中に入る。



パチリと部屋の明かりをつけ、テーブルの上に鍵を置くと、いつもの定位置に腰を落とす、花沢類。
あたしはと言うと玄関から動くことができないで、そのまま彼の動きを見つめ続けた。


「花沢類・・・。あ・・・りがと」
立ち尽くしながらも、やっとでてきた言葉。

「あんたさ・・・、隙がありすぎるんだよ」
ため息と共に口に出された言葉にうなだれる。







「いいよ、別にほかの男好きになったって。俺が勝手に好きなだけなんだから。でもさ、ちゃんと選びなよ」

少しの沈黙のあとに聞かされた言葉はあたしの中に風を起こす。






なんでそんなこと言うの?






「司のことを想ってたあんたを、ずっと見てきたんだ。1回抱いたぐらいであんたのこと縛り付けるつもりはないよ」






そんな悲しいこと言わないで。






はらはらと瞳から零れる暖かいもの。


「・・・1回抱いたぐらい?あたしにはその1回が・・・大切で仕方なかった」




初めてという訳じゃなかったけど、類に抱かれた1回がこんなにも意味のあるもの。





わざと張っていた予防線。
『たまたま傍にいたあたしが、抱かれただけ。誰でもよかったんだ』



傷つきたくなかったから。



けれど、自分の気持ちを偽れば偽るほど大きくなる想い。



さっきだって森田さんの前に座り、「なぜこの瞳は緑ではないんだろう・・・」と思った。
森田さんの背中を見つめ、「なぜここにいるのが花沢類ではないのだろう」と─────







「・・・別の男のことなんか・・・好きになれるわけ・・・ないじゃない」
「牧野・・・」
「こんなに・・・類のことで・・・いっぱいな



あたしの言葉は最後まで告げることができなかった。



類への思いを告げている最中、彼の口唇で覆われたから。



期待して・・・
それが叶わなかった時が辛いから押さえ込んでた思いが


ゆっくりと流れ出てくる。





いろいろな場所に降ってくるキスに、あたしもキスで応えるの。




言葉なんかじゃ、伝えきれないから。










花沢類に抱かれながら、あたしは気づく。
男の人に触れられるのが苦手なんじゃない。

花沢類以外の人に、触れられるのが嫌なんだ・・・・・・





───類だけに触れて欲しい。





花沢類の掌。
あたしの体を優しく滑るように移動するそれからは、なにも感じない。

いや、むしろ心地いいくらい。



もっと触れて?
もっと、もっと



あたしの全てを侵食してしまうくらいに。





これ以上、好きになってどうするの?ってぐらい好きにさせて?





今以上の関係を、望んでも・・・いい・・・?









動きを早める類に、あたしの口からは森田さんの時とは違う意味を含んだ同じ言葉が零れる。


「・・・やっ」
「や・・・なの?」


目の前のグリーンの瞳が意地悪く揺れる。


「・・・や・・・じゃない」


くすり、と笑う類が嬉しくて彼を抱きしめる腕に力を込めた。






今はあたしたちの関係を言葉にするよりも、目の前の笑顔を信じてみよう。
あたしは類が好き。

それだけでいいや・・・
そう、思えた。













汗ばむ体をベットに横たえると、花沢類は思いだしたように口を開いた。


「あ。あんたの靴。俺が返してもらってくるから」


なぜ、類が?とも思ったけど気だるい浮遊感の中を彷徨っているあたしは、そのまま深い眠りに落ちていった。





朝起きると、類はいなくて。
寂しく思ったけど・・・・・・
恥ずかしすぎる夕べを思い出して、類がいなかったことに少しだけホッとしたりもした。



そして・・・夕べの今日で森田さんとは顔を合わす気になれずに3日ほど会社から休みをもらった。



その日の夕方、TVを見ることにも飽きてきたころ類が遊びに来た。
「おみやげ」といって渡されたものは、あたしの靴。

「やだ、ほんとに取りに行ってくれたの?」
苦笑しながら受け取ると、類は「ほかに用事もあったしね」とさらりと流した。








そして、3日後。
しぶしぶながら出社したあたしの目に写った光景はとてつもなく驚くものだった。







綺麗なサラ髪が自慢だった森田さん。
その頭は丸坊主。


そして、綺麗な瞳の周りに、これまた綺麗な青アザがひとつ。
形のいい、唇の端には未だに血が滲んでいる。






あたしを見ると、怯えたように後ずさりその場から去っていく森田さん。






驚きで声も出ないあたしは、擦れる声を無理やり出し、隣の席の子に尋ねる。



「ね、森田さん、アレどうしたの?」



彼女はチラリと森田さんが去っていったほうを見る。
「あぁ、なんかね3日ぐらい・・・前だったかな?やけにかっこいい男の子が森田さんを訪ねて来てさ・・・。
 そしたら森田さんなんだか急に慌てて、その人連れてどっかいっちゃってさ。帰ってきたら、アレ」





        『ほかに用事もあったしね』





3日前の、花沢類の言葉に思わず噴出す。




花沢類
ありがと。





あたしは、お礼を言う為に携帯を手に取り花沢類のナンバーを探した。










おしまい



■■■■■アトガキ■■■■■

このお話は、カウント8000のキリリクでございます〜。
ゲッターさまのリクは、類×つくし、【R】、いろんな男の子に迫られるつくし(F3含)だったのですが・・・
す、すみません。F3の、エの字も出てきません(><)
ごめん〜。コレが限界でした。F3出してしまうと、数ページに及んでしまう気がして・・・
私の基本はショートストーリなもので・・・。ほんとにゴメンなさい。

それと、「チャイルドロック」(爆)お子様のいらっしゃる人は聞き慣れた言葉だと思います。
車のドア、内側から開かなくする、アレです(笑)
イメージぶち壊しでこれまたスミマセン。<(_ _*)>
キーロックだと、ルイルイ、外から助けに入れないんだものー。
窓割るしかなくなっちゃうんだものー。
窓、割っちゃうとつくし怪我しちゃうかも、なんだものー。←ここまで深く考えなくてもいいんだけどね(爆)

ということで、謝りどころ満載になってしまいましたが
8000キリリク踏んでくれたゲッターさんに・・・
たくさんのゴメンなさいと、たくさんのありがとうを込めて・・・♡

2003、10、3   momota





→text   →nijitop