SKY GARDEN
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離さない、離れない (19999hit)      rui ***





このお話は、遠い遠い昔の物語
遙か彼方の、物語

──────でも、心に誓うことは一つだけ







────ピョン美がルイ王子のもとにやってきてから2週間が過ぎました。


華美なものを好まず、言いたいことをはっきりと言うピョン美。
ルイ王子の周りには、いなかったタイプの女の子(?)に
王子は興味を引かれるのを、抑えることができないようでした。


1日の生活の中で、ルイ王子は常にピョン美を傍におきたがりました。


散歩に行く時も
食事をする時も
はては、眠るときまでピョン美と一緒です。


おまけにあの、昼寝の大好きなルイ王子が
昼寝の時間を削ってまで、ピョン美のと時間を作っているのです。



「ピョン美、今日はどこへいこうか」
「ルイ王子はどこへ行きたいの?」

ピョン美はすっかりと指定席になった、ルイ王子の肩へと飛び移ります。
ゲロゲロと嬉しそうに喉を鳴らすピョン美。


ルイ王子は、誰にも見せたことのない笑みをピョン美には向けるのです。


微笑みながらピョン美へと向かう視線は優しさ以上の何かを含んでいて。
使用人たちも口々に囁きあいます。




「ピョン美さまが、人間でしたらよかったのに・・・・・・」











ある日の深夜。
ピョン美は枕(王子作)の上で寝転んでいると、ルイ王子に声を掛けられました。


「ピョン美。ピョン美って人間だったんだよね?」
「し、知ってたのかピョン?!」


驚きのあまり、ピョン美は枕(王子作)からずり落ちました。
ひっくりカエルピョン美を、ルイ王子は優しくすくい上げるといつもの定位置に、ピョン美を乗せました。
そのほうが話しやすいと思ったのでしょう。


「・・・どうして、カエルになったの?」


なかなか言いたがらないピョン美を、辛抱強く待ったルイ王子。
やっとのことで口を開いたピョン美の言葉は、それとなく王子の予想していたものでした。


「・・・あたし、隣の国のツカサ王子と愛し合っていたんだピョン。けれど・・・女王の反対にあって」


ピョン美は視線を落とします。


「それでも、その反対を押し切って会っていたら・・・魔女に呪いを掛けられたんだピョン」


しょんぼりとしているピョン美に、ルイ王子は優しく手を差し出しました。
ピョン美はゆっくりとその手に移動すると、寂しそうに微笑みます。


「人間に戻りたい?」
「・・・・・・できるなら、戻りたいピョン」
「・・・ツカサ王子に言って、元に戻してもらえばいいんじゃないの?」


ルイ王子はもっともな意見をピョン美へと告げますが、ピョン美は寂しそうに微笑むだけ。


「・・・あんたが言いづらいんだったら、俺が言ってあげようか?」




けれど、そうなるとピョン美はツカサ王子のもとへと帰ってしまうのだろうか?
そもそも、自分にとってピョン美はカエルのままでいいと思っている。
そばにいてくれるのなら、カエルでも人間でもどちらでもいいのだ。


それでも、ピョン美が望むのなら
人間に戻れるように手助けをしたい。

つまらなかった毎日が、ピョン美のおかげで変わったのだ。
その、お礼がしたい。


けれど、人間になったピョン美は、まっさきにツカサのもとへと行くのだろうか・・・


愛しい人のもとへと、行ってしまうのだろうか・・・・・・




ルイ王子の心の中など露知らず、ピョン美は小さな小さな声で囁きます。


「ありがとう。でも、ツカサ王子は、あたしとの記憶を魔女に奪われてるんだピョン」


ピョン美の瞳から大きな涙の粒が一つ、ポロリと零れ落ちました。
微笑みながら、零す涙の意味・・・・・・



ルイ王子は、心に広がる不思議な感情に戸惑いを感じます。



胸の奥に広がる、泣きたいような、締め付けられるような・・・・・・
甘い、痛み。



お城を追い出されたカエルのピョン美は、どんな気持ちでここまでやってきたのでしょう。
ピョン美の足では、この国まで軽く3日はかかるでしょう。


カエルへと姿を変えられ、愛する人には忘れられ。


どんなに心を痛めて、さまよい歩いていたのでしょうか。


そんなピョン美の姿を想像するだけで、ルイ王子の心はさっきの甘い痛みがどんどん広がるのです。





「ど、どどどど、どうしたんだピョン?」



ピョン美の言葉で、我に返った王子は頬が濡れているのに気づきます。
顎からは、ぽたぽたと何かが落ちています。



「ど、どっか痛いのかピョン?」



慌てて、自分に駆け寄ってきて飛びつくピョン美に王子は一言だけ告げました。






「胸が、痛いんだ────」






王子は、それだけ言うと優しく、そして強くピョン美を抱きしめました。
そして、その甘い痛みの正体を確信します。






「ピョン美・・・。ツカサに会いたいんだろ?」
「・・・・・・会いたいピョン」
「俺が連れてってやるよ」
「ええ?!」
「となりの国まで俺が連れてってやる。だから、やれるだけやってくるといい」


王子は、グイ、とパジャマの袖口で頬を拭うとピョン美に向かって微笑みました。


「それで、やるだけやってダメだったらまた、ここに帰ってきなよ」


王子は自分の肩をポンポンと叩きました。


「ルイ王子・・・・・・」




たとえ、ピョン美が傷つくことになっても受け止めてあげれる準備はできている。
だったら、ピョン美の望むことをしてやりたい。


ルイ王子はそう思ったのです。


あの、大きな瞳から零れ落ちる涙を見て、ルイ王子は気づいてしまったのです。
ピョン美の気持ちに。

ツカサへと真っ直ぐに向かっている、ピョン美の痛いほど強い想いに。




「さ、そうと決まれば行くぞ」
「は?」
「今から行けば、お昼前にはドウミョージ国には着くでしょ?」



ルイ王子はかごの中に、ピョン美のざぶとん(王子作)とピョン美を入れると、パジャマのままこっそりと馬小屋へと向かいました。






それから、馬を走らせること半日。
どうにかドウミョージ国の入り口にやってきました。


ピョン美へと視線をおろすと、心なしか緊張しているようです。


「ピョン美・・・・・着いたよ」


小さな声で告げると、ピョン美はゆっくりとかごから顔を出しました。
そして、王子の手から飛び降りるとその視線を頭上に広がるお城へと向けます。



「・・・・・・行ってくるピョン」


喉をゴクリと鳴らすと、ピョン美はゆっくりとお城の入り口へと続く道を歩き出しました。



「ルイ王子・・・ありがとうだピョン」



そう言って、振り返りもせずにツカサへと向かうピョン美の背中を見てルイ王子は再びあの甘い痛みを感じます。



手を離してはいけなかったのか?



俺の傍にいれば、傷つくことや辛いことから守ってやれたのではないか?



でも、本当は分かっていたのです。




あの甘い痛みを感じていたのは自分だけだった、ということを。




ピョン美はツカサにだけ、甘い痛みを感じているのだ。
自分が、ピョン美にだけそんな痛みを感じるように。




そしてこの痛みを

きっと

恋と呼ぶのだ。




そう、きっと恋をしていたのは
自分だけだったのだ、と。






だから、もし違う世界でピョン美と出会うことができたのなら
今度は、絶対にあの手を離してはいけない。


離すもんか。


たとえ、ピョン美が嫌がったとしても
今度は、俺が守ってやるのだ。


ルイ王子はピョン美の背中を見送りながら心に誓ったのです。










けして、あの手を離さない────













幾度もの輪廻を繰り返し
物語は、現在(いま)へと続く

あの、誓った想いと共に─────








「・・・い・・・る・・・はな・・・ざわ・・・はなざわるいっ!!」




おぼろげな声が次第にはっきりと耳に届いて、ゆっくりと瞼を上げると
そこには牧野の呆れた顔があった。



「また、寝てる」
「・・・・・・」



無言で見つめる俺の視線に、訝しげに眉をひそめると



「・・・・・・もしかして、また変な夢見てたんじゃないでしょうね」



変な夢?
あー・・・。なんか、夢見てた気がする・・・・・・




あいたたた。俺、何時間寝てたんだ?
ずっと同じ姿勢を保っていたせいか、コンクリートの壁に当たっていた背中がひどく痛む。




「ほら!」
ゆっくりと差し出される牧野の手。
白くて柔らかそうな細い指に、俺の手を絡ませるとそのまま勢いよく引き上げられた。






途端に広がる、甘い痛み。






なんだ?






激しくなる動悸。
自分の意思とは関係なく溢れる涙。






なんだよ、これ?






牧野の唖然とした顔が、滲む。






「ど、どどどどどどうしたの?どっか痛いの?ごめん、あたし力入れすぎた?」




慌てて、絡んでいる指を離そうとした牧野の手を
俺は、力を込めて留まらせる。



「ちがう。・・・そんな・・・んじゃ・・・ない。と思う」



「花沢類?」



「・・・・・・もう、少し・・・手、繋いでていい?」






ナゼだか、分からないけど
手を離したくないんだ。






「い、いいよ?」




戸惑いながらも、微笑んだ牧野に安堵のため息を零すと
俺は再び牧野と繋がっていることに甘い、痛みを感じた。










『けして、この手を離さない─────』








おしまい



■■■■■アトガキ■■■■■

こちらは、19999キリリクです。
ほんとうに遅くなってしまって・・・ゲッターさんごめんなさい。
で、リク内容ですが「花男FFの番外編の続き」でした。
・・・ん?続き?この話、続きだった?と思った方
まさしくその通りです(苦笑)あなたは間違ってないです。続きっぽくないですよねー(><)
でもね、一応この話の頭は、あのFFの続きからです。
ルイルイが、ピョン美の夢を見るのは2回目、ってことにしといて下さい(願)
そうしといて下さい。お願いします(懇願)
それと、ゲッターさんに送ったものに少し手を加えてます。ごめんね。

では、このお話を仕上げるのに協力していただいた
FFを貸してくれたぽん仔しゃん。
優しいお言葉をかけて下さった助手しゃん。
どうもありがとう。改めて御礼を申し上げます。

19999を踏んでくれたゲッターさんに、たっぷりの感謝と愛を込めて♡
どうもありがとう。

2003,12,12   momota





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