SKY GARDEN
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触れられたくないもの (161640hit)    rui × tukushi ***








11月にしては、めずらしく暖かい日で。
昨日の冷え込みが嘘のようだ。
なかなかベットから抜け出すことが出来ない毎日なんだけど。
気温的にも、気分的にも今日は別で。



なんせ、牧野との久しぶりの逢瀬。



めずらしく自分から起きた日は
朝から牧野でいっぱいだった。












非常階段の手すりに、両肘を乗せるとクロスした腕に顎を乗せてみる。
何度か確認して居心地のいい場所を探すと、そこに落ち着かせた。



そして、風に吹かれる前髪を上目使いで見つめながら牧野を想う。



やっぱり、走ってやってくるだろうか、とか。
今日は暖かいから、半そでなんて着てるかな、とか。
もしかしたら、鼻の頭や額に薄っすらと汗なんてかいてるかもしれない、とか。



牧野のことを考えてる時間は、幸せで。早く過ぎる。
楽しい時間は、あっという間に過ぎてしまうように。






待望の、カチャリ、とドアノブが回る音。
振り返ると、そこには恥ずかしそうに微笑みながらこちらに向かう牧野の姿。



さすがに半そでは着ていなかったけれど、やっぱり走ってきたようでほんの少し息が荒い。
風で浮いた前髪の間からは、光るものが薄らと見える。
鼻の頭にもそれは光っていて。




やっぱり、だ。
自然と頬が緩んだ。




「ごめんね、ちょっと遅れちゃった」

「ん」



牧野の「ごめんね」があまりにもかわいくて、思わず引き寄せた。
短い悲鳴と共に、ふわりと香る牧野の香り。
トン、と胸に当たる牧野の肩。
俺に抱きつくような形になったのをいいことに、そのままぎゅ、っと抱きしめてみた。



突然込められた自分に纏わりつく力に、慌てた牧野が俺との間に腕を入れながら見上げる。



「ちょ、ちょっと〜。花沢類、誰か来ちゃうよっ」
「いいよ、別に」
「花沢類が良くても、あたしが良くないっ」




・・・あいかわらずだ。




思い切り突き放された腕に、名残を楽しむかのように両腕を差し出すとそっと手を握られた。




「こ、これでいいでしょっ」




真っ赤になりながらの、牧野の精一杯。
あぁ、少しは進歩してんだ、なんて思ったら自然と口元が緩んで。
あと数回の逢瀬後には抱きしめても、なにも文句を言わなくなるんだろうか、なんて思ったら噴き出してしまった。



抱きしめても抵抗のない牧野。
それは、あまにりも想像しにくい。



「あ!なに笑ってるのよっ!花沢類!またなんか変なこと考えてるんじゃないの?!」



ぐい、と牧野と繋がっている場所を引かれる。
俺はよろけるふりをしながら、牧野の頭に顎を乗せてみた。



「べつに、変なことじゃないよ」
頭の上で、もごもごと口ごもると
「じゃぁ何で笑ったのか、教えて」
思い切り背伸びをした牧野の頭が、見事に顎にヒット。




イテ。




むむむ、手ごわい。
ジンジンと痛む顎を気にしながら言い訳を考える。
本当のことなんか言ったりしたら、牧野のことだ
大人しく抱きしめさせてくれるまで5年は待たなきゃならなくなる。



5年は勘弁して欲しい、なんて考えてると
不意に、ドアノブが回る高い音。



びくり、と牧野が固まる。
俺も、ほんの少しだけ警戒しながらドアから出てくる人物を待った。





「に、西門さん?!どうしたの、めずらしい」



ドアから出てきた意外な人物に牧野が駆け寄った。
俺も、それに倣う様に総二郎の傍に向かう。



「よっ!」と右手を上げた総二郎。
牧野は久しぶりの再会に嬉しそうに俺の顔を見上げてから、視線を再び総二郎へと戻した。



「類がここにいるって聞いてよ」



おいしょ、と総二郎が手すりとは反対側のコンクリートの壁に背中をつけるとゆっくりと腰を下ろした。



「なんか用だったの?」
「なんだよ、つめてーな」


俺も手すり側に背中を預けると、あまりにも関心なさげな態度が気に入らなかったのか総二郎が口を尖らした。



でも、口で言うほど総二郎も気にしてないみたい。
そもそも、邪魔をされたのはこっちの方だ。
せっかくの牧野との時間。



思うように時間の取れない最近は、牧野との時間もめっきり減っていて。
それがどんなに大事だったかを知る。



いつもいつも、そうだ。
大事なことは、なくしてから気づく。



牧野の大切さを知ったのも、司と付き合い始めたと聞いたときだった。





「類っ!聞いてんのかよ!」
「聞いてるよ」
「ったく、ほんとかよ」



ほんとは聞いてなかったけど、つい反射的に返してしまった。
目の前にある膝に顎を乗せながら「総二郎のやつ、早く行かないかなぁ」なんてことをぼんやりと思う。
楽しそうに総二郎の横に同じように座り込み、会話を交わす牧野は、なんだか自分と話しているよりも嬉しそうで。



胸の奥がモヤモヤしてくる。



今までは別に会話に加わらないことくらいなんてことなかった。
もともと、自分から話しかけるほうでも、話題の中心にいるほうでもない。話を振られるまで黙っていればよかった。
他人との会話なんてほんと興味なかったから。



けど、牧野に関しては別だ。



牧野のことは、全て知っていたいと思う。
誰よりも。

そう、牧野自身よりも。



楽しげなリズムのように途切れることなく続けられてる会話は、俺に取っちゃ腹が立つほど苛立たしい。
その苛立たしさを、足のつま先で表現してみるんだけど。
2人はまったく気づいてないようで。



ゆっくりと戻す視線。
その先には、まるで当たり前のように存在する2人。



牧野の横に、俺じゃない男の影・・・・・・





「でよ、あきらも言ってたんだぜ。牧野も呼ぼうぜって。なぁ、類?」
「ねぇ、総二郎、なんか用事あってきたんじゃないの?」



会話を遮られた2人は、きょとんとした顔で俺を見つめる。
あ、なんか刺々しかったかも。
なんてことも、ちょっぴり思ったけど・・・別にいいや。
実際「早く帰れ」って思ってることは事実だし。
不貞腐れたように視線を送ると、総二郎は「ははん」とからかい気味の笑みを零す。



「なんだよ、俺がいちゃ邪魔?」



知らん振りしていると、総二郎は、俺じゃなく牧野をからかいの標的にしたらしい。
牧野に向かって「帰ったほうがイイ?」なんて聞いてる。
まったくもって、からかわれていることに気づいてない牧野は真っ赤になりながら両手を顔の前で広げて
そんなことない、と大げさに振る。





あーー、ほんっとむかつくなぁ。
何で牧野がそんなに頬を赤らめる必要があるわけ?!
総二郎もくっつきすぎだ。



そもそも、なんで牧野・・・・・・総二郎側に座ってるわけ?!



子供のようだとは思うのだけど
もうこうなってくると、全てのことが気に食わない。



不機嫌さを隠しもしないでいると、俺に向かって送られる総二郎の挑戦的な視線。
にや、と妖しく口元が歪むと牧野に向かってわざとらしい声を上げた。



「お!牧野!おまえ肩に、虫が止まってるぞ!」
「え?!うそ!やだ、西門さんとってよっ」



牧野が半泣きで総二郎の袖口をギュ、っと握った。



ついさっきまでは俺の手を握っていた牧野の白い指。
微かに震えてる指先は、今は総二郎の腕を頼りにしていて。



「ちょっと待ってろよ」なんてもっともらしい事を告げてるけど、実際虫なんかはいないわけで。



総二郎の指が牧野の首筋に触れる瞬間、俺は無意識に立ち上がり、牧野の腕を引き上げてた。






「これ、俺のなんだけど」






俺に腕を持ち上げられながら呆然と見上げる牧野と、笑いを噛み殺してる総二郎。
そのうち、非常階段に総二郎の爆笑する声が響き渡った。






────しまった。
からかわれてたのは、俺のほうだったんだ。





















「なに?」



急に聞こえてきた牧野の忍び笑いに、横にいる牧野の顔を覗き込んだ。
下では総二郎がしつこく、手なんぞ振っている。



ったく、早く帰れ。



「んー。なんで花沢類が怒ってるのかちっとも分からなかったから、びっくりしたー」



総二郎に手を振り返しながら牧野が笑う。



「俺だってヤキモチくらい妬きますけど」
「あはは、だからそんなキャラに見えないんだってば」





まったく、いい気なもんだ。





「そんなキャラに見えないから・・・・・・すごいうれしかった・・・・・・」



ふっ、と左の腕に牧野の重さが移る。



牧野とは、ずっと付き合ってゆきたい関係を望んでた。
別れなんてこない、友人関係。
だから、親友の彼女、という存在で自分を納得させることが出来たし、俺もそれを望んでるつもりだったんだ。




けど、実際に望んでいたのはそんな関係ではなく。




愛しい存在を、抱きしめれる関係。
愛しい存在に、触れることのできる関係。
愛しい存在と、これからを望める関係。




それは、恋人同士にしか許されない特権。




俺は、それを望んでしまった。







左腕に伝わる温もり。
ほんの少しずれると、後ろから牧野を抱きしめた。
俺の胸元にそっと預けられる牧野の重み。



それが、とても大事なもののような気がして。
なくしちゃいけないもののような気がして。
ぎゅ、っと抱きしめた。







そして、抱きしめても抵抗を示さない牧野に
「たまにはヤキモチも妬いてみるもんだ」なんて、こっそり考えた。





おしまい





■■■■■アトガキ■■■■■

あい、これは161640キリリクですっ。
んもー、いろんなことにフラ〜、フラ〜と気を取られすぎてすごく時間がかかってしまいましたっ。
ゲッターさん、ごめんね。

でね、今回のリクは「ヤキモチ」でした。
ルイルイにヤキモチ妬かせることは決まってたんだけど、誰に間に入ってもらうかで悩みまして(笑)
・和也パターン ・見知らぬ男パターン ・司パターン
考えまして。結局、突然出てきた総二郎に、間に入ってもらうことになりました。あはは。←計画性がないとこうなります。

しかも、最後、なんだかタイタニック状態だし。
非常階段の手すりでタイタニックかよ(吐血)
しかも、花沢類がっっ!!←ここ重要


・・・・・・いいのいいの、うちのルイルイなんでもやるから。
そのうち、両手に牛とカエルくっつけてたりして。←パペマペ?!
はたまた、でっかい耳もってたりして。←審司?マギー審司なの?!


はい。キリのいいとこで←!
あとがきもこの辺にします。
このまま続けてるとでっかい石、飛んできそうなんでね。えへ。


それでは、随分お待たせしてしまってごめんなさいなのですが、たっぷりと愛がこもっております。
仔仔への愛並みにこもっております(笑)
媛乃しゃん、キリバン踏んでくれてどうもありがとう。
これからもF4話お付き合いくださるとうれしいです。


2004,10,10   momota





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