SKY GARDEN
index information text niji link









First Time (6000hit) tukasa × tukushi ***




口元から零れる声を押し殺していると囁かれる。





「声出せよ。
 おまえんちじゃねーから、平気だ」





いつから彼はこんなに大胆になったのだろう。
けれど、そんなセリフにさえあたしは熱くなる。






パシリ、パシリと
微かに耳に響く懐かしい音に気をとられて、視線を窓の外に向けた。


あたしの視線がほかに向いたことを、咎めるように司は動きを早めた。
あたしは再び司の中に引き戻される。






けれども絶対に忘れることのない、音。






ゆっくりと記憶を遡らせる。



そして、初めて司と肌を合わせた夜のことを思い出した─────


















「見て、司。なんか雪降りそう」


低いグレーの空に、あたしは朝のニュースでみた天気予報を思い出した。
『夕方から、雪になりそうです───』

たしか、そんなことを言っていた。
現に今、雪が降ってもおかしくない気温で、空気も鋭さを増している。



アパートの窓を全開にすると、冷たい空気が鋭さを保ちながら通り抜ける。
そんな空気に司は、目を細めて抗議する。



「寒いっつーの!窓閉めろよ。今風邪ひくと、クリスマスも仕事詰まって会えねーからなっ」
腕を抱え、肩をすくめ、いかにも・・・な格好で睨まれた。






むむっ。なかなかなことを言うようになったじゃない。
せっかくのクリスマスデート。おまけにその後にはあたしの誕生日も控えてるし・・・
クリスマスはともかく、誕生日は一緒に過ごしたい・・・、と人並みに思ってみたり。
あたしはしぶしぶ窓を閉めた。






こーゆうどんよりしてて、曇った日は大好きだ。
空気に色がついている気がするから。
空に手が届きそうな気がするから。
名残惜しそうに窓を一枚隔て、暖かなこちら側から空を見上げてたあたし。
司が苦笑しながら見てたことなんて全然気づかなかった。






久しぶりの丸一日デート。
午前中は、タマさんに会いに行って。
久しぶりのおしゃべりを楽しんだ。
午後になって、することもなくて(苦笑)うちに来た。



だって、どうしてもあんなデカイ家落ち着かないんだもん。









大き目のマグカップにたっぷりとコーヒーを入れて、おいしいと評判のシフォンケーキをつつく。
もちろん司は甘いものを食べないのでコーヒーのみ、シフォンケーキを頬ばっているのはあたし一人なのだけど。
そんなあたしを、うんざりした顔で見ていた司は、レンタル店で借りてきた
って、司も随分庶民的になったでしょ?
借りた方が如何に経済的で、如何に場所をとらないかを説明し続けたあたしの努力が報われた?


ま、まぁいいか。
借りてきた昔の洋画のビデオをデッキにセットした。


ストーリーが半分ほど進んだ頃、パシリ、パシリ、と何かが窓に当たる音がする。





そこにはさっきよりもうっすらと紺色を増した窓からの景色に、白いものが舞っていた。





あ、雪・・・・・・





「見て!見て!司!雪だよー!」

子供の頃から雪が大好きだった。
わくわくする自分を抑えきれずに、窓を開け司を振り返る。
もちろん、感嘆の声を上げる司を想像していた。


けど、そこには少し寂しそうに微笑む司。




「・・・そか」




ベットから立ち上がると、ジャケットを手にする。



(あ、あれ?)



ジャケットを取る、ということは
帰るの?
あれ?今日は遅くまで平気だって・・・



司の行動が理解できずに、あたしはキョロキョロと窓の外と司を見比べていた。



「んな顔すんなよ」
苦笑しながら近づく司を見つめる。
あたしの頬に手を添えた司は柔らかく微笑むと、そっと唇を近づけた。

「ほっぺ、冷えてんぞ」

あたしにコーヒーの苦味が残るキスをした後、何事もなかったかのようにジャケットに袖を通す司を、ゆっくりと視線で追っていた。


「帰る・・・の?」


「・・・あぁ、雪積もって帰れなくなると・・・やべーからな。明日、大事な契約会議があるからよ。俺も出席しろって言われてる」


ちらり、と窓の下に視線を送る。
そこには彼専用の車。運転手が心配そうに空を見上げていた。




あぁ、そうか。
雪が積もって車が動かなくなると、帰れないもんね・・・・・・。
自分に言い聞かすように何度も心の中で呟いてみる。




「・・・・・・わかった。じゃ、気をつけて」


無理やり笑顔を作ってみる。
大丈夫、笑える。



久しぶりに会えたのに。
仕事だから仕方ない。
今度会えるのはクリスマス?
雪は好きだけどなんでこんな日に降るの?
帰っちゃうの?



イロイロなものが混ざり合って
マーブルを作っている心の中で一つだけハッキリしているのは今にも零れそうな何かがあることだ。





(・・・もう少し、傍にいて欲しい)





あたしは、ゴクリと息を呑むと、急いでそれに蓋をする。




口にしてしまわないように。
言葉にしてしまわないように。




玄関に向かって歩く、司の背中。
この背に背負っているものは

大きいんだね。







「じゃね」

微笑んだ。
うまく微笑んだつもりだったのに───





「・・・んで、そんな顔で笑うんだよ」
「え?」
「・・・泣きそうな顔で笑うな」
「な、泣きそうなんかじゃないよ、全然」

あはは、と笑うあたしの声を遮るように司の声が被さる。

「もっと我侭言えばいいじゃねぇかよ」
「わ・・・が・・・まま?」
「お前は人のことばかり考えすぎるんだっ」
「つ、司・・・」
「お前にそんな顔させるために一緒にいるんじゃねぇっ」

最後は怒鳴られてるかと思うほどの大きさ。







司はジャケットのポケットから携帯を取り出すと、メモリーを呼び出し誰かと話し始めた。



「・・・俺だ。帰っていいぞ。明日の朝、7時に迎えに来い」
『・・・・・・・・・』
「いいな、7時だ。何があっても来いよ」

パチン、と携帯電話を閉じると、ソレを床に投げ付けた。
あたしは彼の行動の意味が分からなくて、見守るしかできない。

司はジャケットを脱ぐと今まで座っていた、ベットに投げ付けた。






「これで、朝までお前のもんだ」






切なげに微笑む司の言葉に、溢れ出した何かを止めることができなかった。







こんな表現おかしいのかもしれない。
けど言葉にするなら、こんな言葉しか当てはまらない。




司がほしい。




もつれ合うようにベットに倒れこむ。
相変わらず、パシリパシリ、とした音は止むことがない。




かみ合わさっている口唇からは呼吸の音しか聞こえない。
息を吸うのも惜しいくらいにお互いを求めてる───










何も身に纏ってない体を、優しく滑るように彷徨う司の手。
それが体の中心に触れたとき、少しだけ戸惑った。



「・・・こ、こわいか・・・も」
司の肩に置いた手が震えているのが自分でもわかる。

「・・・俺も、こえー…、お前を壊しちまいそうで・・・・・・」

司の瞳に映る自分。
司の目にはどんな風に映ってる?

「・・・でも、もうやめらんねーからな・・・・・・」

こくん、と頷いたのを見届けるとあたしの中に、押し入れられるなにかを感じる。
あまりの痛さに、腰を引いた。
けれど引いた分、司は自分の腰を進める。


「力、抜けよ・・・・・・」


自分でそうしなきゃいけないことは分かってるのに、痛みと恐怖のため体が言うことを聞かない。
どうしても、腰を引いてしまうあたしに司は呟いた。


「・・・ごめん」



え?何のごめん?
痛みと恥ずかしさで占める頭の中で言葉の意味を考えようとした瞬間、鋭い痛みが全身を走った。



「や!!痛い!!痛い、司っ!!」



あたしの腰を両手で押さえつけた司は、無理やり力いっぱい押し込んだ。



「やだ!!待って!動かないでっ!!痛いっ!」
自然と溢れてくる涙で頬が濡れるのが分かる。



「お前・・・こ・・・え・・・デカ・・・イ」



司の口唇で塞がれても、声にならない叫びが漏れる。




すべてが収まった痛みの中で感じるのは、司自身と自分の熱さ。








抱き合うだけじゃ物足りなくなってたあたし。
予測していた行為。








痛みの代わりに何を得るのだろう─────















痛いのに。
すごく痛いのに、後から後から湧き出るように生まれる感情は
「愛しさ」だったり「せつなさ」だったり
司を想う気持ちだけ。







少し落ち着いてきたあたしに瞳で問いかける司。
返事の代わりにゆっくりと微笑んだ。


少しずつ、司の動きが早まるのを感じると、痛みの中で瞼を閉じてみる。
まだ、瞳からは涙が零れ落ちているけど、先ほどまでの痛みはない。




瞼を閉じていても、司を感じることのできる幸せ。
頬を流れる涙の意味が変わる瞬間─────






視線が合うと司は切なげに微笑んで、ゆっくりと柔らかいキスをくれた。
しっとりと汗を浮かべている額がやけに目に付いて。


パシリ、パシリ、と窓をたたく音と共にあたしの心に刻まれた────




















「なに、思い出し笑いしてんだよ」



ハァ、とため息のような吐息を零しながら司が睨む。
やはり今のあたしの上にいる司も、額にしっとりと汗を浮かべている。



「なんでもない」



キスをせがむと、納得がいかない表情で・・・だけど少しだけ嬉しそうに顔を近づける。




バルコニーのあたりまで雪が舞い込んで来るのが見える。
けれど、ここではあの音がよく聞こえなくて。残念だ。





「・・・音、聞こえない」
「あぁ?」
「雪の音・・・・・・」


司の胸に抱かれながら、窓の外に視線を送ったあたしの耳元で、司はあたしをとろけさせる言葉を口にした。






「おまえの声さえ聞けりゃ、いい」











あの日、痛みの代わりに得たものは
・・・・・・安心や小さな幸せ、だったりする。



司の腕の中での安心感。


世界で一番愛しい人に守ってもらえるという幸せ。
世界で一番愛しい人を守れるという幸せ。
世界で一番愛しい人に触れることのできる幸せ。
世界で一番愛しい人が自分を想ってくれる幸せ。








そして
痛みの代わりに得た安心や幸せの中で・・・・・・
あたしは彼の望み通り甘い声を零し始めるのだ。







司があたしを想っていてくれる限り
あたしが司を想っている限り
永遠に。









おしまい



■■■■■アトガキ■■■■■

このお話は、4000のキリリクプレゼントです。
初めてのキリリク表庭UPでございますっ(≧▽≦)
っつーか、コレ表庭ギリギリOKよね?(汗)

ゲッターさま(azuしゃ)のリクは、ズバリ司×つくしの初めて、でした。
けっこう難産でしてね、このお話(笑)もし、難しかったら違うのでもいいよ、と言っていただいてたんですけどね
がんばってみました。ハイ。
やけに、リアルな描写がありますがあまり深く考えないで下さい。

はじめは司視点で書こうかな、とも思ったのですが、こんなんでも一応ワタクシ女でしてね。
男性のことはよくわかりません(爆)
おまけに、初めての時・・・?
azuしゃんに、初めてんときってどんなだったっけ?忘れちゃった〜!と聞いた大変失礼なやつはワタクシです(ごめん〜><)
ドタバタしましたが、無事仕上がりました。
楽しんでくれると、幸いです。
ゲッターさまへ、要らないかもだけどたっぷりと愛を込めて♡
キリリクUP、快諾ありがと。

2003,9,27 momota




→text   →nijitop