SKY GARDEN
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COLOR (12345hit)    rui × tukushi ***




牧野が、司とNYへ行かないと決めた時。
心の隅で、ほっとした俺もいた。


『NYのマンション貸すよ』とは言ったけど
それは、あの時みたいに何も知らない土地で牧野が困るのがいやだったから。


・・・司と牧野が上手くいって欲しいと、心から思う。



けれど 牧野と会えなくなるのは、いやだったんだ。













「花沢類!」


いつもの非常階段でまどろんでいると、牧野のうるさすぎる声と共に扉の開く音がする。
寝たふりをしようかと思ったけど、やっぱりやめた。


きっと、寝たふりなんかしてたら
今度は耳元で叫ばれるに違いない。



返事をしないで振り返ると、腕を組んで立っている牧野。



・・・なんか、怖いんですけど。



ちらりと視線を逸らすと、呆れた口調で咎められた。


「・・・花沢類授業は?」
「・・・自主休講」
「ハァ・・・」


わざとらしいため息に、少しムッとしながら仰向けに寝転がる。


「・・・ちゃんと単位とれるの?ここんとこ毎日ここにいない?」
「だいじょぶ」

その辺は抜かりなくやってるつもりだ。
それにココにくるのは、あんたに会いたいから、なんて言ったら牧野困るだろう?


毎日、1時間・・・いや数十分でもあんたに会いたいんだよ。
そのためにココに来る俺、健気だと思わない?


ちらりと盗み見る牧野の横顔は、だいぶ低くなった空を見上げて
俺のことなどちっとも考えてなさそうで



少し笑えた。



「あ、なに笑ってるのよ」
「・・・司のこと考えてるでしょ」

”司”という言葉に反応してか
途端に、あたふたとしだす牧野がかわいくてもっといじめたくなる。

「何やってんのかねー・・・今頃・・・金髪碧眼の女と・・・」
司に限ってそんなことありえないのだけど、牧野の全てを独占してるから・・・・・・
少しくらい悪口でも言わせてよ。
けれど、そんな俺の言葉も耳に入らないらしい。

「・・・昨日、電話あったよ・・・」
司との電話を思い出したのか、消え入りそうな小さな声で真っ赤に頬を染める牧野。


「・・・がんばってるって!」


そう言って微笑む牧野の顔はまぶしくて、真っ直ぐに見ることができなかった。



















牧野が、NYへ行く、と聞いたのは司がNYへ行ってからちょうど1年後のことだった。
牧野も英徳を卒業したことだし、ちょうどいい時期だったんだろうと思う。
牧野はもっと前から決めてたみたいだけど。



牧野を見送る空港で
俺からの、餞別ってことでNYのマンションの鍵を牧野に渡した。


あぁ、これで
牧野がそばからいなくなるんだ。


鍵が俺の手から、牧野の手に落ちる瞬間
そう思った。


少しだけ触れ合った手の温もりが、そのまま牧野の心の温度をあらわしてるみたいで切なかった。

ふんわりと伝わる暖かさで、司を思ってるんだ・・・。
あんたの心ん中で俺はどれくらいの大きさを占めてる?
司より大きいとは思ってないよ。

けど
少しでも、ほんの少しでもいい。
俺のことも置いておいて。







(これで、いいんだろうか)


牧野の背中が小さくなってゆくのをただ、見つめていた。
ズボンのポケットに引っ掛けた親指がやけに重く感じる。
右手に固いものが当たる感触。

あぁ、携帯だ・・・・・・

この携帯も、ほとんど鳴ることもなくなるだろう。




何度も何度も考えた。
今ならまだ間に合うかもしれない。


今ならまだ間に合う?
何に?




・・・牧野を司から奪うことに、だ。




けれど、俺は知ってる。
そうはできないこと。




牧野を困らせることはしたくない。
ただでさえ、今は自分自身のことでいっぱいいっぱいな牧野を混乱させたくもない。




だから、俺は笑ってこう言うんだ。




「司と仲良くね。NYに俺はいないんだから、ケンカしても慰めてあげれないよ」




子供の頃から、大して欲しくないものでもすんなりと手に入れてきた。
けれど、本当に欲しいと思うものは手に入らないなんて・・・皮肉なもんだ。






牧野が出国ゲートに飲み込まれるのを見送ると
目の前がぼやけ、頬を暖かいものが伝う。




あれ?
なんだよこれ。


ゴシゴシと手の甲で目元をこすると、濡れる感触。



俺、泣いてんの?!



感情とそれに見合わない現象に戸惑いを隠せない。



泣きたい気分でもない。



ただ切ないだけだ。
牧野の小さな後姿が愛しいだけだ。






切な過ぎても
愛しすぎても
涙って流れるんだ・・・。



初めて知ったよ。牧野。










別に牧野の彼氏なんて立場を望んじゃいない。
ただ隣で、同じ世界をみたり感じたりしたいだけなんだ。



それは、あの場所でみる桜だとか。
寒い夕暮れに、一緒に入ったカフェの暖かさだとか。



同じ事を見て、いろんなことを思って。
それを共有したいだけなんだ。



でも、今はもう・・・共有している牧野との記憶は、モノトーンの世界に溶けていきそうだ。




牧野・・・・・・


























牧野を見送った日から、3ヶ月。


1度ぐらい、電話でもかけてくればいいのに・・・


やはり、ほとんど鳴ることもなくなった携帯。
それをいつも持ち歩くのは、牧野からの電話を期待してるから。


『・・・花沢類?』
度惑いがちに発せられる俺のフルネーム。あんたが口にするのが、すごく好きだった。

もう・・・・・・あんたの声忘れそうだよ。

けど、今あんたの声聞いたら俺はどうなってしまうんだろう、とも思うんだ。



鳴ることを期待しながら
鳴らないことも期待している・・・・・・






「なんかさ、滋から聞いたんだけどよ・・・司と牧野あんまり上手く行ってないらしいぜ」

大学内のカフェで何をするでもなく、コーヒーのスプーンをくるくるかき回していると総二郎が口を開いた。
俺を伺いながら、呟く総二郎にきつめの視線を投げると、総二郎は慌てて付け足す。

「だ、だから聞いただけだぜ?司も牧野もちっとも連絡よこさねーしよ」






電話がないのは上手くいってる証拠だと自分に言い聞かせてきた・・・・・・





・・・・・・あんだけ一緒にいて、牧野の性格を忘れたのか、俺は。




自分自身を殴りつけたい心境で席を立つ。




つらい時ほど、自分自身で押さえ込もうとするやつだったじゃないか?牧野は!






携帯。
鳴って欲しかったのか
鳴って欲しくなかったのか








───鳴って欲しかったんだ俺は。


司と上手くいけばいいな、と思う反面

『花沢類、迎えに来て』

そう言われること望んでいたんだ。












テーブルの上に置いていた携帯をポケットに押し込むとまだ熱いコーヒーもそのままに出口へと向かう。
後ろで総二郎がなんか言ってるけど、聞いてる暇なんかないよ。


ほんとは走り出したいくらいだけど、周りの目もあってどうにか早足で収まってる。
さっき勢いよく立ち上がったせいか、チラチラとこちらを見るやつらがいる。
ただでさえ、いろんな噂が入り乱れてる世界。
急く心とは反対に、行動は落ち着かせなければ。
深く呼吸をしながら自分自身に言い聞かせる。


綺麗に磨かれた、出入り口のドアを押し開けるとあきらが目を丸くして立っていた。

「なに?類?どしたの。血相変えてめずらし」
「・・・ちょっと」


俺はそこまで言うとたまらずに走り出した。








・・・きっと、泣いてる。
あん時みたいに・・・一人で泣いてる。









「なー、類どうしたの?なんかすげー慌ててなかった?」
類の飛び出していった方を物珍しげに見つめるあきらは、ゆっくりと総二郎の座るテーブルに腰を下ろした。
「あー・・・、NYに行くんじゃね?」
「あぁ、牧野か・・・」



「あの3人はいつになったら落ち着くのかねぇ・・・」

まだ柔らかな湯気が出ている、類の呑みかけのコーヒーを見つめながら2人は呟いた。




















ため息交じりの、2人の声が聞こえた気がした。
俺だって、落ち着きたいよ。



牧野がNYへ発ってから、落ち着いて寝れた日なんか1日もない。



何度も、様子を見に行く口実で牧野に会いに行こうと思ったんだ。
けど、会ってしまったら。


牧野とあったら、俺がダメになりそうで。
牧野を壊してしまいそうな気がして。



でも、もう限界だよ。
きっと、あいつは一人で泣いてるんだ。
誰もいない部屋で。

そんなこと考えたら、司と牧野がどーとかじゃなく
・・・いや、司と牧野が上手くいってたっていいんだ。


牧野が泣いているのがヤなんだ。




ただの自己満足の想いなんだ。
牧野は、笑ってて。
あの非常階段でくだらない話をしていた時のように

────笑ってて。


















NYの空港に着くと、そのままの足でタクシーに乗り込む。
そして、牧野がいるはずのマンションへ向かった。

ポケットの中の合鍵を持つ手が震える。
3ヶ月ぶりの対面。

いままでこんなに離れていたことなんてなかった。



数年前までは、牧野の存在すら知らなかったというのに。
今では、牧野に会えないことで俺は気が狂いそうなんだ。



ドアの前で逸る気持ちをどうにか押し込んで、息を整える。



ドアに触れると、それはいとも簡単に開いた。
まるで、俺がくることがわかっていたかのように。
俺を迎え入れてくれるかのように。



「・・・ま・・・きの?」



自分の家なのに、恐る恐る声を出してる自分に気づいて苦笑する。



「・・・牧野?いる?」



いくつかの部屋を覗いてみたけど、牧野がいない。
けれど、ここで生活していることに間違いはないらしい。



見慣れたカバンに見慣れた服。



キッチンに至っては、料理をしてる形跡すらあった。



はは、牧野らしいや。



なべの蓋を取ってみて再び笑みがこぼれる。
・・・キンピラごぼう・・・だっけ?この料理。

NYでごぼうね・・・
どこで見つけてきたんだか・・・





最後に、寝室を覗くと・・・
そこには、3ヶ月前よりもだいぶ痩せて細くなった肩を惜しげもなく出して眠る



愛しすぎる牧野がいた。








ゆっくりと近づくと、牧野を起こさないようにベットの端に腰を下ろした。
スプリングの軋む音。
シーツの擦れる音さえも、よく聞こえる。

何の音もしない空間。
窓の外は、もう蒼く染まりだしている。



赤みのない頬にそっと手を触れると、牧野の瞳がゆっくりと開く。



数秒間見詰め合ってみたけど、牧野は表情を変えることなく再び瞼を下ろす。



「・・・牧野。寝ぼけてるの?」



ぱちり、と今度は勢いよく開いた瞳。



「寝るんなら、鍵かけないと・・・。危ないよ・・・。司でも来る予定あった?」



みるみるうちに牧野の瞳に涙がたまる。


え?


瞬間、牧野の腕が俺に伸びてきて首にまとわりついた。
あまりの不意打ちに、そのまま後ろに倒れてしまう。


「類!!花沢類!花沢類!!!」


何度も俺の名前を呟きながら泣き続ける牧野に、俺はどうすることもできなくて
夢にまで見た牧野の感触をこっそりと味わっていた。


しばらく泣き続けて、落ち着きだした牧野が真っ赤な瞳を隠すことなく顔を上げ、体を起こした。
それでも体勢はそのままで俺は押し倒されたままなのだけど・・・。





「夢・・・かと思ったの。いつもいつも。花沢類の夢見てたから」
「司とは・・・上手くいってないの?」
「・・・・・・」
「・・・そう聞いて飛んできたんだ」

牧野の肩が細かく震えだす。

「・・・だめ・・・なの。あたし・・・花沢類がいないと・・・だめなの」

俯きながら搾り出すように言葉を吐く牧野。
彼女の言葉の意味を、俺はどう取ればいいんだろう。


「・・・司がいなくても、あたし1年間過ごしてこれた。
 けど・・・司がそばにいても・・・違うの。・・・違うのっ。」


そういって再びハラハラと涙を零す牧野。
牧野の涙が、俺の頬や口唇に落ちる。
そして、俺の頬からそのままシーツに染み込み小さな染みを作る。



これは
自惚れてもいいんだろうか?




「花沢類が・・・いないの・・・」



そう呟いた牧野。



「・・・自惚れていいんだよな?」



それだけ言うと、牧野の頭に右手を添えて思い切り引き寄せ、そのまま口唇を掠め取った。



返事なんかいらない。
もう、充分だ。



あまりの勢いで、歯がぶつかる。



けれどそんなことに構いもせず、俺の舌は牧野の舌を求めて口内を彷徨う。



そのまま牧野と体を入れ替えると、牧野の白いキャミソールの肩紐を落とす。



首筋から肩へと移動をし始めた俺の口唇を咎める様子もなく
むしろ、次を促しているかのように背中にまわる牧野の細い腕に、俺は自分自身をもうとめることができなかった。





牧野の白い胸元にいくつもの赤い痣を散らす。

そしてソレが増えるたびに、牧野の体温が上がってゆく気がする。
綺麗な赤。そっと指で触れると、牧野の体がビクンと震えた。

そんな牧野の行動は、俺をおかしくさせるんだ。

脚にもいくつもの痣を散らしたあと、ゆっくりと俺は牧野の中に入る。


牧野の口元から零れる吐息。
それはベットの軋む音に比例した。


牧野の前髪をかき上げて額をだす。
うっすらと汗を浮かべているそれに俺の額をくっつけた。


「あんたと、こうしたかった」
「・・・花沢類?」
「あんたの髪と、俺の髪が混じりあうのが見たかった・・・」
「んっ・・・」



髪だけじゃない。
腕や、脚、体中の全て
あんたと一緒に溶け合いたかった。

そうしたら、少しは俺の気持ちも治まるかも、なんて考えてたんだ。
あれ以上牧野のこと思ってたら、俺きっとおかしくなってたから。

再び腰を深く沈めだした俺の動きに牧野が声を上げる。

「あっ・・・。類・・・類・・・」

背中に回る指に力が入る。
牧野のそんな様子に耐え切れなくて、俺はそのまま彼女の中に想いを零した。












「・・・まだこっちにきて3ヶ月なのに・・・司と何度も何度もケンカしたの」
「・・・原因は?」

枕をクッション代わりにしてベットの上で体を起こした。
牧野は胸元までシーツを引き寄せて、横になったまま。
さっきつけたいくつもの赤い痣が青白い牧野の肌に唯一の赤みとして映えていた。


「・・・泣いてばかりいたから」
「なんで?」
「・・・花沢類に会いたかったの」


牧野は少しだけ顔を上げると、くすりと恥ずかしげに微笑んだ。


「会いたくて・・・会いたくて・・・。そしたら司も気づいたみたい」
「司が?」
「うん・・・。お前は日本に帰れ、って。お前は気づいてないだけだ、って言うの」
「・・・・・・」
「あたし、そんなことないって思ってさ。あたしが好きなのは司なんだから、って」


牧野の言葉に少し、胸の奥がチクリとする。
そして、やっぱり自惚れだったと、自嘲気味に笑みを零す。


「けど・・・・・・」
「・・・・・・けど?」

いくら待っても次の言葉が出てこないので続きを促すと、牧野の手が俺の腕に触れた。


「・・・花沢類の夢ばかり見るの。花沢類がいないことがすごく辛いの」


それだけ言うと、再び牧野の瞳からは涙が落ちて
今度は、俺を経由しないでシーツに染みを作る。




一人で、泣くな。

あんた、3ヶ月もこの殺風景な部屋で泣いてたの?

一人で?







「・・・類!!」

俺の顔をみた牧野が、固まっている。


「なんで・・・類が泣くの?」




おかしい。
どうもおかしい。涙腺がおかしくなってるんだ。



自分だって泣いてるくせに、俺の涙を拭う牧野。



その手を掴むと、口元に引き寄せた。







「・・・あんたのこと、すごく好きみたい。俺」



たとえ、牧野が司を思っていても
俺が牧野を好きなことに変わりはない。

今までもそうだったのだから。






「・・・あたしも、花沢類のことがすごく好きみたい」



俺の口元で握られていた手をゆっくりと開くと、そのまま頬に伸ばされる白い指。



「・・・明後日、日本に帰国する予定だったの」

そういって頬に涙のあとを残しながら微笑む牧野。




あまりの告白に、なかなか自体を飲み込めないでいると牧野が、あの頃よく見せてくれた笑顔で囁いた。


「・・・久しぶりに笑った気がする」


懐かしい笑顔を抱きしめながら、俺も囁く。


「・・・久しぶりに牧野に会った気がする」






そのあと、当たり前じゃない。3ヶ月ぶりだもん、なんて憎たらしいこと言われるんだけど
今日は、あんたの笑顔に免じて許してやろう。




思い出を共有できる幸せ。
モノトーンの世界が再び色とりどりに染まる─────






それはまず、俺の髪とあんたの髪が混ざり合ったあの色から─────









おしまい





■■■■■アトガキ■■■■■

このお話は、12345のキリリクですー。
最初、分けてUPしようと思ってたのですが結局1つにまとめてしまいました。
ゲッターさんのリク内容はですね、類×つくし「一度別れて、再会。やはり好きだと確認」←すごく簡単に言うとね(爆)
・・・なぜかこんなに長くなりました(笑)
類視点のお話ですが、つくし視点の話にしてもかわいかったかな?と、今思います(遅っ)
類視点だと、ちょっと暗い?ほら、ルイルイなかなか行動に出ないから・・・(爆)
あと、つくしの髪とルイルイの髪が交じり合った色はいったいなに色だ?!とのご質問は受け付けません(笑)
・・・う、うす茶?(汗)←いまいち自信がもてない

えーと、いろいろ並べましたが今回ももちろんたっぷりと愛を込めて書きましたよ♡
キリ番踏んでくれた、ゲッターさんに、ありがとうと愛を込めて♡


2003、10、19   momota








【ここからアンケートお礼、続編です】





朝起きて、まず最初にしたことは
目の前にある、自分と違う色の髪に指を絡ませることだった。











眩しくて眩しくて
こんな日差しで目が覚めた朝は久しぶりだった。



あぁ、そうかこんなに眩しいのは
昨日カーテンを閉め忘れたんだな?なんて
眩しさに目を細めながらのんきに考えていた。






いつもと違うのは明るさだけじゃないらしい。



見慣れない、天井。
自分以外の、寝息。
微かに伝わる、熱。






ごろりと、こちらに向かってくる柔らかいもので半端だった答えが繋がる。






真っ白な、肌。
細い首や、白い胸元に散る赤いしるし。






あぁ、そうだ。俺・・・・・・






昨夜、目に写った彼女の肌はやけに青白かったのに。
今は、明るすぎる日差しを受けて輝いて見えた。
ゆっくりと、牧野の髪に指を絡める。
そのままさらりと落ちる髪に口唇を近づけてみた。






そっと重なる、俺の髪と牧野の髪。






ずっと、見たかった色。






こんな色なんだ・・・・・・



俺の髪と牧野の髪を合わせて陽に透かしてみる。
俺の髪はほとんど金で・・・・・・
牧野の髪は、オレンジで・・・・・・



ゆっくりと指を離すと、はらはらと元の持ち主の場所へと納まる。



何度も、何度もそんなことを繰り返してると
牧野の呆れたような声が聞こえた。





「・・・・・・何してるの?」
「起きてたの?」



ふぁぁと、欠伸をかみ殺しながら何度か頷く牧野。



そして小さな悲鳴。
慌ててシーツを引き寄せる動作に、思わず笑みが零れた。



「なにそんなに慌ててるの?」



からかい気味の口調が気に障ったらしい。
真っ赤になったまま、口を聞いてくれない。





「は、花沢類っ。ちょっと、あ、あっち向いててよ」



やっとのことで口を開いたかと思ったら、それかよ。



「なんで?」
「な、なんでって!!!」



これ以上怒らせたら、やばいかも。
分かってるけど。
分かってるけど、もっと声が聞きたいんだよ。



3ヶ月ぶりだよ?



あんたの泣き顔も
あんたの笑顔も
怒った顔も、照れた顔も



なにもかも、3ヶ月ぶりだ。





「あ、あたしっ、なんにも着てない・・・から・・・」



最後の方は聞き取れないくらいの小さな声で。
涙目で訴える彼女が愛しくて。



「いいよ、なんにも着てなくて。俺だってなんも着てない」



ほら。と、自分のシーツをめくって見せると牧野の叫び声が部屋中に響く。



あ、やべ。
やりすぎたかな?



さっきよりも一層真っ赤になった牧野に笑いかけたら
頭に、激痛が走った。















「まったく。今度あんなことやったら、もっとひどいことになるからねっ」
「あい」





ダイニングテーブルに大人しく座っていると
って、ほとんどは牧野に怒られてたんだけど。



Tシャツと、デニムにしっかりと着替え終わった牧野が、コーヒーを淹れてくれる。



ほんわかとした湯気に、目を細めると牧野がうれしそうに微笑んだのが分かった。
コーヒーもそうだけど・・・・・・

Tシャツとデニム。
何にも変わってない牧野も、うれしかったんだ。

日本を発った頃より、少し細くなった気がするけど。




「あたし、明日帰国予定なんだけど・・・・・・類・・・は・・・?」


一緒に淹れた自分の分のコーヒーを両手で包み込むと
少し不安げな
見上げるように視線をよこす牧野。



なんて顔してるんだよ。



牧野がこっちに発つときに
空港で感じた、愛しさだとか・・・切なさだとかがまた込みあがってきて。
思わず、言葉が詰まる。



あんたを迎えに来たんだ。
一人で帰らせなんてしないよ。



「もちろん・・・・・・俺も一緒に帰るよ。あわよくば、あんたを連れて帰ろうと思ってたんだ」
「・・・・・・類」



何度か言葉に詰まりながらも、フッと口元を緩めると
ホッとした表情の中に見せる、迷い?の感情。



昨夜から気になってた。
あんたを抱いてる時から、気になってたんだ。



・・・・・・時折見せる、困ったような顔。



─────司のことを思い出してるんだろ?



けど、牧野。
これから俺たちが一緒に過ごしてく中でこのことは、絶対に知らないふりをできない想いだ。
なかったことになんてしちゃいけない、想いだ。



何も、一人で抱え込め。なんて言わないよ。

俺も半分受け取るから。

一緒に、考えよう。
これからどうすればいいのか。
これからどうするべきなのか。



牧野が寂しそうに微笑むから
俺は言葉にしようとしてたものを、ゆっくりと飲み込んだ。





あんたも、分かってるんだ。




ゆっくりと牧野の座っている反対側まで行くと そっと牧野の頭を、包み込んでみた。



朝とはまた違う色を発している髪に
そっと俺の頭をくっつけた。














その日の夜、俺は牧野が寝てるのを確認してからベッドを抜け出し
司に電話をした。



『・・・hello?』

「司?・・・・・・俺」

『類か・・・・・・いつ来たんだ?こっちに』

「・・・・・・昨日」

『そか・・・・・・』

「司。牧野・・・・・・もらってくよ」

『・・・・・・おう。頼んだ』

「・・・・・・なんだよ、気が抜けるな。もっとごねるかと思ったのに」

『はん!俺様は、大人になったんだ。世界を動かすこの俺が、女一人にかまってられるかよ』

「・・・・・・女一人、の前に重要な形容詞がつくだろ?」

『あ?・・・・・・そう・・・だな』




微かに司の声が震えてる気がする。



『大事な、俺たちの、一番、愛した、女だ・・・・・・な』

「・・・・・・司。俺、たいしたこと言えないけど・・・・・・牧野のこと絶対に泣かせないから」

『あぁ。・・・・・・類?』

「なに?」

『・・・・・・ごめんな』






電話は、そこで一方的に切られた。



幼い頃からの親友に、こんな声まで出させて。
そんな想いまでさせて。
ほんとに俺は、よかったのか?



目の前に転がる受話器からは、無機質な電子音が響いている。



『ごめんな』



こっちのほうこそ、「ごめん」だよ、司。
俺も牧野がいないなんて、考えられないんだよ。



司のごめん。
おそらく
「おまえを想ってた牧野を、無理やり自分に向けた」
「こっちにきてほんとは、気づいてた牧野の気持ち。気づかないふりをしてて、ここまで過ごさせてしまった」
だろ?



司の気持ちが
いろんな想いが、そのままダイレクトに俺の中に流れ込んでくる気がして。



俺がもっと、早く行動に出てれば。
誰もがここまで傷つくことがなかったんじゃないだろうか。



────ごめん。



「司・・・・・・ごめん」



言葉に出すとなんだか、こちらも泣きそうになった。

ほら、やっぱり、涙腺がイカれてるんだ。












俺は、静かすぎる廊下を通って牧野の眠るベッドへ向かう。
昨日を思い出す風景だ。



ゆっくり、ベッドにもぐりこむとそっと牧野の髪に触れた。
朝起きた時と同じように。



眠る時も、牧野がいて。
起きた時も、牧野がいる。
それが無性にうれしくて。
頬を伝う涙を、Tシャツの袖口で拭うと
寝ている牧野の顔に、そっと自分の顔を近づける。





あんたは、もう泣かないでいいから。





そっと牧野の頬にキスをしてみた。











────その頃のあたしは、というと
そんな電話がなされてるとは、露とも知らず深い深い眠りの底にいて。


寝ているはずなのに。
しっかりと寝ているはずなのに。




これからは目が覚めても
ついさっきまでの夢の中の、幸せだった自分を想って泣き出すこともないんだ。

なんて、考えていた。



そして、やっぱり
3ヶ月見続けた、類の夢を




見なかった。




おしまい






■■■■■アトガキ■■■■■

こちらは、アンケートのお礼です。ハイ。
キリリク12345の続編?番外編?どっちでもいいか。
にあたるお話です。
私にもっと、センスや力量があればこの話だけでも意味の通じる話になるんでしょうけど。
無理でした(笑)←笑ってる時点で、ダメダメ。
なので、キリリク12345(本編)のほうから読んでくださいね!
って、ここ読んでるってことはもう読み終わってるよね。え、えへ。ごめんね。

えー、すごいどっち視点で書くか悩んだんですけど。
司とのことも、少し書かないと・・・と思ってたんでルイルイ視点にさせていただきました。
きっと、帰国までの間に『男同士の話』がなされてるはずだよなぁ、と(笑)
「俺は泣かねーぞ!!」と司くんの抗議の声が聞こえてきそうですが、ほら、司くん。
ルイルイ、もー前回と今回でオイオイ泣いてるから。へーきへーき。
そんなに目立たないって!
・・・・・・。
な、なんか背中に鋭い視線を・・・か、感じるので・・・この話は、この辺でやめておきましょう。
はははは・・・・・・

・・・最初は明るく行くつもりだったのに。
なぜかラストに向かうにつれ暗いです。
どんより、です。ごめんなさいー(><)
でもね、ほら!ハッピーエンドだからっ。きっと。←!


たいしたものではないですが、アンケートのお礼です。
貴重なお時間を割いて、回答していただきほんとにどうもありがとうでした!!

2004,2,16    momota




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