SKY GARDEN
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even if …     akira ***







好きな女のことを考えると
まず何が浮かんでくる?





いつだったか、総二郎とそんなことを話した覚えがある。





総二郎は確か・・・・・・
体だ、と言い切った。
まったくもってあいつらしい。



お前は?と逆に聞かれて。



俺は・・・・・・



声。





と答えた。
























「あれ?美作さん?」




指先をポケットに入れたままでもかじかんでくる2月もそろそろ終わりの寒空。
少し痺れたままの指先をそのままに、握り締める。



「・・・・・・おう。牧野。なんだバイトか?」



団子屋の店先で、ほうきを片手に動きを止めた牧野。
相変わらずコイツは働いてばかりなんだな。
上から下まで眺めてみるけど・・・・・・



どうしてコイツが司の彼女なのかねぇ。
いくら考えても分からない。



「美作さんは?」
「俺?彼女送ってきたとこ」
「あ、そうなんだ」
「お前、もうバイト終わりか?」
「ん。もう上がりだよ」


少しの間の後、勇気をだしての一言。


「んじゃちょっと付き合えよ」


「えぇ?!」





思い切り見開いた目で俺を凝視する牧野。


なんだよ。
俺が誘っちゃおかしいかよ。




「俺、今日誕生日なんだよ。けどよ、土日はデート時間限られててさ。全然飲みたんねーんだよ」


「・・・・・・土日でも時間気にしなくていい彼女見つけなよ」


ため息混じりに吐かれた言葉に、思わず固まった。


「うるせー。ほっとけ」





なんだかんだ言いながら、結局牧野はそのまま付き合ってくれる気らしく
ちょっと待ってて、と団子屋の奥に消えた。


















「す、すごいねぇ」


キョロキョロと辺りを見回しながら、こそっと耳打ちされる。


「さすが美作さんって感じの場所だよね。伊達に人妻ばっかり相手にしてないよね」





なんだそりゃ。





今日はやけに綺麗に見える夜景に張り付いてる牧野は、俺に促されるまま
椅子に腰をおろす。





わりーけど、ここは誰も連れてきたことないぜ。

いつか
お前を連れてきてやろうと思ってたんだからな。



「・・・・・・たまたま見つけたんだ」



俺もカウンターに座りながら、ウエイターに声を掛けた。



「バーボン・・・・・・と、カシスソーダ」



牧野の方を見ながら、瞳で確認。



「ん。いいよ、まかせる」

牧野は、ゆっくり頷くとそっと右の薬指に触れた。





そこには暗がりでも、少しの光で光を発するものが付けられていて。
胸の奥が少し痛む。





「・・・それ・・・司にもらったんか?」



顎で牧野の触れてるソレを指した。
俺の視線をたどって自分の指に行き着いた牧野。



「あ、うん」



瞬間に頬を染める牧野に、さらに胸の奥が痛む。



コトリ、とそれぞれの前に置かれたバーボンとカシスソーダ。
グラスを少し揺らしてから、そっと口をつける。


俺の様子を見てから牧野も、背の高いグラスに注がれたカシスソーダをゆっくりと口に含んだ。





「12月の誕生日の時に・・・・・・もらった」



えへへ、とはにかんだ顔。
司を想っての笑顔に、なんだか触れたくなった。



そして、グチャグチャにしてやりたくなる。
手に入らないものなら、いっそ壊れてしまえばいいんだ。



ゆっくりと牧野の頬に伸ばした指。



首をかしげた牧野が、不思議そうに瞳で問いかける。



ほんの少しのアルコールで赤く色づいてきてる頬まで、数cm。
牧野はどう思うだろう?
司は・・・どんな顔するだろう・・・・・・



「美作さん?どしたの?」



その言葉に、あと数cmだった指先をきゅっと、握って
そっと下ろした。





おかしいな、まだそんなに飲んでるつもりはない。
酔っ払うわけがない。
何を考えてたんだ?俺は。





「なんか付いてたかと思ったんだけど、気のせいだった」





何回か瞬きを繰り返したあと、ゆっくりと微笑む彼女の顔はまったく知らない誰かのようで。



ゆっくりと視線をグラスに落とし
そっと頬に写る睫の影が、やたらと大人びて見える。





今、何考えてる?
司のことか?





隣にいる俺のことは





考える隙間なんてない、か?













牧野が好きだ。
けれど
司を想うこいつを好きになったんだ。
勘違いするなよ、俺。



俺が好きな牧野は司を好きな牧野なんだ。


好きなものに突っ走っていく、コイツだ。


俺のことを好きな牧野・・・・・・そんなの違うよな?





けど、どこかでそれをこっそりと望んでる自分。
いいよな、今日くらい。


いいよな、今だけは。





このバーボンとカシスソーダがなくなるまでは



俺との時間だよな?






鍵を掛けて。
時間を止めて。
このまま閉じ込めてしまえたら、どんなにいいだろう。






こいつとの間に「もし」なんてないのぐらい分かってる。

分かってるのに。



つい手を伸ばしてみたくなるんだ。
こいつは、そーゆー女なんだよ。



「もしかしたら」触れることができるかもしれない。
「もしかしたら」抱きしめることができるかもしれない。
「もしかしたら」



俺を受け止めてくれるかも、しれない。









「どしたの?随分大人しくない?」


めずらしーと、ケタケタ笑う牧野。





・・・・・・あんだけのアルコールで、酔ったのか?


酔ったんなら、そのまま俺に流されちゃえよ。




神経質だけど、気配りだけはあいつらに鍛えられてるから自慢できるぜ?
ケンカの仲裁も得意だ。


おまけに結構一途だぜ?




どうだ?牧野。
俺にしとかないか?





笑いが止まらないらしい牧野。
そうとう酔ってるのか?


グラスの半分しか減ってないカシスソーダ。


本当によえーなコイツ。




けれど牧野の笑い声は、俺の頭ん中を笑い飛ばしてくれてるようで
少しだけ、気が楽になる。



そうだよなー。
俺と牧野・・・・・・



司と牧野以上に、ギャグだわな。




相変わらず漏れる、牧野の笑い声。
視線が合うだけで、笑いを堪えられないらしい。




それでも、右手の薬指に光るリングを回す。
少しサイズが大きいのか、くるくる回るそれ。




無意識だろ?それ。


かなりきついっすね。




俺と一緒にいても、おまえの頭ん中は司で隙間なく埋まってるわけね。




大きなため息と、一緒に首を振る。




さて、牧野。帰ろうか。
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「送ってくって。電話したら、迎えの車すぐ来るぜ?」
「終電まだあるから、平気だよ」
「お前を一人で帰してなんかあったら、俺が司にぶん殴られるぜ」
「あはは。んじゃ、なんかあったらぶん殴られてね」
「このヤロー・・・ヒトゴトだと思いやがって」



なかなか首を縦に振らない牧野に、こっちが根負け。



「はぁー、気いつけて帰れよ」
「うん、またね」
「お前、ほんとに酔い覚めてんだろうな?」
「あはは、あんなちょっとで酔うわけないじゃん!!」




さっきのあの大量の意味のない笑いはなんだったんだよ・・・・・・。
知らない(酔い)って、こえー・・・・・・




だいぶしっかりした足取りを確認すると、右手をあげた。



「じゃ、な」



牧野の駅に向かう後姿を少しだけ見送ってから、俺も反対に歩き出す。
あと数週間もすりゃ桜も咲く季節だけどまだまだ冷え込む。


よっぽど迎えの車を呼ぼうかと思ったけど、やめた。
今日の俺は、ちょっとおかしかった。



こんなときは、一人がいい。



一人・・・・・・





こっそりと、後ろを振り返ると
やっぱり牧野は、歩道の真ん中をもくもくと歩いていて。





振り返ってなんか、くんねーよなぁ・・・・・・





「もし」、ここで
ほんとは、デートの帰りなんかじゃなく
お前を待ってたんだ、なんて言ったら牧野はどうする?


「もし」、お前のことが好きだ、なんて言ったら・・・・・・どうする?




あーあー。
諦めわりーな、俺も。



自嘲気味にそっと笑った後、ポケットに手を無理やり詰め込み
そのまま、帰り道に向き直る。





ギュっと一歩を踏み出した瞬間後ろから呼ばれる、名前。
それは、聞きなれたあいつの声で。
大きな、ちっとも酔っ払ってなんかない声で。





ゆっくりと振り返ると月の光をいっぱいに受けた笑顔。



「忘れてた!!」



「なに?」



「お誕生日、おめでとう。美作さん」



「・・・・・・おう。さんきゅーな」



「じゃぁね」






そっと足早に去っていく後姿をいつまでも、いつまでも見送りながら






愛しい人の声を

何度も、何度も繰り返していた。





俺だけの為に発せられた声を
けして忘れないように。





おしまい










■■■■■アトガキ■■■■■

結局書いちゃいました〜(><)
書けたら、書こうかなぁ〜・・・くらいに思ってた、あきらバースデーストーリー。
家にこもってる時間がけっこうあって(笑)したら、出来上がっちゃった。
でも、やっぱり恥ずかしいので「隠し」&「期間限定」
よろしくですー。

で、内容ですが・・・
ハイ。気付いた方もいると思いますが「平井堅さんのeven if」の歌詞にちょっと関連付けてます。
流星花園(F4)つながりで、最近彼のアルバムを借りましてね。改めて、「even if」聞いたんですよ。
いやー、歌詞みたらやられちゃった(爆)
おまけにあの声で歌われちゃ〜、もうメロメロさ〜。
男の子の片想いって、なんか切ないよねぇ。

で、総二郎に続きあきらも「君もかッ!!」ってな感じなんですけど(苦笑)
一応ね、この話と総二郎の話は別次元の話と考えてください。
あきらがつくしを好きな世界では、総二郎はそうではないです。
反対に、総二郎がつくしを好きな世界では、あきらはそうじゃない、と(あぁ、ややこしい)
ではでは、探して頂いてどうもありがとう〜!

あ!!あたし忘れてた(爆)
あきら、お誕生日オメデトー!!

2004.2.21 momota




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