SKY GARDEN
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niji
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Scene7
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「金持ちの趣味は、わからないから」、と小さな正方形のチョコレートを渡された。
デスクの上に、山積みにされてる高そうなチョコレート。
どれも知ってるブランドばかりだったけども
それよりも俺は、掌の中にすっかりと収まってしまう小さな四角を指でつまんでみる。
たった一つだけど。
世界で一番大事な、チョコレート。
「なーにチロルチョコにそんなに見入ってんだよ」
亜門が不思議そうに、指で摘んでる正方形の向こうから覗き込む。
「これ、チロルチョコって言うの?絢サンからもらったの。庶民の味だ!って」
絢サンの言い方を想像したのか、亜門が楽しそうに笑った。
「たしかに。庶民の味だわ」
庶民ねぇ。
絢サンと出かけるようになってから、だいぶ慣れたつもりなんだけど。
コレは、知らなかった。
デスクの上に、立たせてみる。
小さいけど、こんなにも存在感があるVDのチョコレートなんて生まれて初めてだ。
人差し指でつつくと、簡単にコテリと倒れた。
それはまるで、彼女を思い出させて。
不覚にも胸の奥が、締め付けられてしまった。
強がってるくせに、よわよわで。
気が強いくせに、泣き虫で。
彼女が、倒れてしまわないように。
一人でがんばり過ぎないように。
お返しは、もうひとつ増やして…
チロルチョコを2つ、返そうと思った。
彼女を支えてあげるために、二つ並べて。
おしまい
2006.2.8 momota