SKY GARDEN
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Scene17
*****





あまりにもイメージ通りだった――――、から。
視線のおき場所に困り、じわじわと熱を反射している足元の砂ばかり見ていた。



「なに?」



まぶしさと、恥ずかしさで瞳が泳ぐ。
チラチラと視線を送っていたあたしに気づいたのか、彼はゆっくりとあたしの顔を覗き込む。
逆光で、彼の表情は読めないのだけど
あいも変わらず、優しく微笑んでいるのだろう。
こんな顔を見れるのも、あたしの特権だ。



「真っ白い肌に、太陽が痛そう…だよ?」



照れ隠しに、白い薄手のパーカーを投げるように渡した。



「あ!ひどいな。気にしてるのに」



自分の肩を見ようと、視線を後ろへと送る彼の髪がさらりと揺れる。
こんなにも熱と潮でこもった空気なのに。
彼の周りは、いつだって周りよりも数℃は冷めているのだろうか。



「それはこっちの台詞よ。女のあたしより白いってどーゆーことよ?」



あたしだって、けして黒いほうじゃないと思うけど。
彼の隣にいくには、かなりの勇気がいるのだ。



大人しく羽織る、パーカー。
そのままストン、とあたしの横へ腰を下ろす。



途端に上がる、熱。



彼のいる側の腕が、緊張の所為かちりちりとした刺激を感じる。



よくよく考えると、こんな下着同然の格好で並んで座ってるなんて。
ずいぶん、大胆じゃない!?あたしってば!!



実際もう、付き合ってるような関係だけども
あたしは、まだまだキスだけで精一杯で。



ほかの人と何度もした行為だけども。いままでのものは、『キスのようなもの』であって。
本当のキスじゃなかったんだ、と…ケイとキスをするようになって初めて気づいた。



だって。



ケイとのキスは、世界の終わりかと思うほど心臓が踊る。
胸の奥が、軋んでいるんじゃないかと思うほど痛みが走る。
ケイが、自分にとって大切な人なんだ――――、と実感する。



ちらりと、何度も自分のそれと触れ合った場所に視線を送る。
柔らかな感触が口唇によみがえり、慌てて足元の砂なんぞを払ってみる。



あぁ、いつもそうだ。
ケイ以外の男の人は、平気なのに。
こんなにも、ベタな反応を示しているあたしは……中学生かっつーの!



彼に気づかれないよう、ペットボトルの飲み物を取るふりをしてそっと間を取った。



キス一つで、頭がパンクしそうになるのに。
その先に進むとなると、いったいどうなってしまうのか。



冷えたミネラルウォーターが、喉元を過ぎる。
それが、ゆっくり体を冷やしてくれる気がするのだけど
結局は胃に落ちる頃には、体温と溶け合ってしまう。



そう。キスの先。
体温を、伝え合う行為。
彼の体温と、あたしの体温が溶け合う……感覚。



あらぬ想像をして、あたふたと顔を振る。
こんな健全な真昼間のデートで、なに考えてるんだあたしは。



必死にやましい考えを追い出したあたしなのに。
あたしの瞳に映るのは、やっぱりケイの意外にもたくましい胸元で。
白いパーカーの襟元と、綺麗な線を描く鎖骨のバランスがこれまた絶妙で……って!!



バカ!!
また頭に熱もたせてどうすんだっつの!



ふと、隣をみると
相変わらず涼しそうな顔で、座っているケイ。
けど。
おや?さっきと距離が変わってない。あたし、少しずれたはずなのに。
しかも…微妙だけど……逆に近づいてきてない?



再度、こっそりと腰を浮かせて彼との幅を広げた瞬間、ぱしりと腕をつかまれた。



「ちょっと!なんで離れてくの!絢さん、日焼けしちゃうよ!」



ケイの視線が、頭上のパラソルを仰ぐ。



あたしの左肩半分くらい、ちりちりしているところを見ると
当分、ノースリーブは着れないな…なんて考える。



「もっと、こっち入りなよ」



グイ、と彼の綺麗な腕が伸びたかと思うとあたしの左肩に触れた。
そしてそのまま優しく引かれる、体。



ちょちょちょちょちょっとーーーー!!!



密着しすぎの体。
そして間近にある顔に、くらくらしてきた。



なにが彼の周りは数℃涼しい、だ。
なにをあたしは勘違いしていたんだろう。
涼しいどころか、熱を発してるじゃないか!!!
ん?熱を発しているのはあたしなの?
何が何だか分からなくなってきて、思わず頭を振った。



そんなあたしのあまりにも動揺している姿を不思議に思ったケイは、よりいっそう顔を近づける。



「どしたの?具合…悪い?顔、赤いけど」


「いや、…その。特には……」


もごもごと、口ごもっているあたしをひとにらみ。

ハイ。すみません。誤魔化そうとするのは、あたしの悪い癖ですね。
何度も何度もこれで、年下のケイに怒られてる。



「……いつも涼しそうな顔してるから……キミの周りは、空気が冷えてるんじゃないかと思ったんだけど。 ちがかった。……逆に、熱が上がる……」



くらくらとする頭を冷やそうと、両手でパタパタ顔を仰ぎつつ正直に告白。
そんなことをしたって、熱が冷めるわけじゃないのだけど。
だって、この熱は内側から来てる気がする。



「ったく。俺だって、赤い血が通った人間です!人をなんだと思ってるの。俺だって汗くらいかくよ」



ぷい、と視線をそらされた。



「……絢さんと一緒だしっ」



「え?」



一緒、の意味が分からず、相変わらずそっぽを向いたままの彼の言葉を待った。



「こうゆう格好の絢さん…俺だって初めて見るのにさ。ほかのヤツにも見られてると思うと、悔しくて。なんだか、減りそうでイヤだ」



へ、減りそうって……。
ど、どこがですか?とは聞けなかったけど。



そんなヤキモチ、なんだかくすぐったくて。



「下着と一緒だもんね」なんて、ついつい口に出してみたけど

ふと、言葉の意味に気付く。

より一層、熱を持つのが分かる顔。
今日の最高温度だ。
あたふたと言葉を撤回しようにも、余計気まずくなる気がして口をつぐんだ。



それなのに……



「……じゃ、裸の絢さんは俺だけのってことで、楽しみにしておく。水着の跡が楽しみだね」



なんて告げられて、真顔のまま固まったあたし見て彼はおかしそうに笑った。





おしまい。


2011.12.1           momota




一体今は、何月なんだよ。
私は一体いつからこの話を書き始めたんだよ!(苦笑)
と、思いました。

見たくても見れないお話(/∀\*)

世の中には見たくても見れないもの、たくさんありますね。

先日は、落ち武者のような髪型の青年を見ました(まじで)
見たいのに見れない!
一緒にいた友人に「落ち武者がいる」と知らせて、噴き出されました。

では、また次のお話で!(わー!さらりと〆た!)

お話読んでくださって、どうもありがとう!



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